表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act four <第四幕> Dandelion──花言葉は別離
206/370

蒲公英病編 21話 不治の病の処方箋1

 護衛軍本部に戻った私──筒美つつみ紅葉もみじは、黄依きいちゃんや薔薇ばらちゃんに『蒲公英病』の精密検査を促し、勿論薔薇ちゃんに寄生した虫を取り除いたのを確認したその後、寮に戻り買ってきて置いた食材を使い料理をする。そして、作った料理を保温の効く容器に入れた後、色絵しきえ青磁せいじのいる研究室へと向かった。


「よっす、先生。どうせ碌な生活送ってないと思ってご飯持ってきたよ」


 部屋の中を覗くとお湯で温めたタオルを顔にかけ、リラックスして眠っている青磁先生の姿が見えた。


「ってめちゃくちゃ休憩してるし」


 性格に似合わず、昔とは違いかなり清潔な部屋に毎度驚かされるが、誰が掃除でもしているのだろうか。そんな事を考えていると奥の方から足音が聞こえた。


「ん?」

「あれ、紅葉ねーさん」


 箒とちりとりを持ち和風メイド服を着た少女、すいちゃんが現れたのだった。


「あっ兄さんのご飯持ってきてくれたんだー。ありがとー」

「いやいや、どういたしまして」


 彼女は持っている物を置くとくるりと回り、お弁当を受け取った。


「あれ、今日いつもとお洋服違うね」


 私は翠ちゃんの服がいつもの特異兵仗(アイデン)のそれと違うことに気付く。いつも着ているのは、ゴシックアンドロリータ系を連想させるフレンチメイドタイプの服であったが、今彼女が着ているものは袴にエプロンをつけたような服であった。例えるとするなら、大正ロマンに出てくるウェイトレスのような格好だった。


「んー? あーこれ? 可愛いでしょ?」

「うん」

「いつものは戦闘用で私と朝柊あさひで勝手に加えてデザインしたやつ。あれも、現代風で可愛いけど、普段使いはこっちなんだー」


 彼女はもう一度くるりと周り、360度服をじっくりと見せてくれる。


「凄い凝ったデザインだね。自分で作ったの?」

「いや違うよー。元々、家にあったんだー」

「元々?」

「色絵家って昔は良妻賢母、腕利きの家政婦や執事を超がつくほどの上流階級の家に嫁がせたり派遣する為の人材が多かった家だったらしいんだよ。漆我しつが家や水仙すいせん家には当時からそういう理由で交流があったみたいでー」


 初耳な話だ。おそらく、現在では色絵家が使用人の家系としてではなく、特異能力者エゴイストの家系として役割を持ってしまったから廃れてしまった歴史なのだろう。


「んじゃあそれって、とっても昔の服なの?」

「割と家宝級の代物だよー。一家代々、わざわざ長持ちさせるために繊維を強化したりして、丁寧に扱ってきたとっても大事な服らしいんだよねー」

「ほむ」

「まぁ、可愛いから着てるんだけど」

「すっごい似合ってるよ」


 彼女はエヘヘと笑う。棚引く黒くサラサラな長い髪がふわりと浮かぶ。


「あーでも、紫苑しおん姉さんや瑠璃るりくんが着てる着物もその手の服だから、大量に昔の服とかあるんだ。みんな服大好きだし結構ウチって服に拘り持ってる一族なのかもしれないね」

「はえー」


 瑠璃くんの着ている着物も大分気合の入ってる物だとは思っていたが、そういう理由があったのか。色々な服があるんだったら瑠璃くんのそういう格好みてみたいな。


「それなら、暇な時さ翠ちゃんの実家でみんなで着せ替えっこしようよ」

「おー! いいねそれー。瑠璃くん、中々メイド服着てくれないけど、紅葉ねーさんの頼みなら着てくれるかも……あーでも紫苑姉さんが許してくれるかどうか分からないな」


 瑠璃くんを監禁していたという例のお姉さんの話。瑠璃くんが半ば強引に護衛軍に入ったから、少し関係がギクシャクしているのだろうか。そういう事、瑠璃くん本人からは一切言って貰えないから分からないが、実際問題瑠璃くんが自分自身の手で解決したいと言っていたし、手を出すのもいけない気がする。


「あー例のお姉さんね。まー無理なら大丈夫だよ?」

「今度瑠璃くんと相談してみるね。多分大丈夫だよ。私もファッションショーやりたいし」


 そんな話をしていると、青磁先生の顔にかけられていたタオルが床に落っこちた。


「あっ」


 その瞬間、タオルが翠ちゃんの手の上に転移し、そのまま彼女がキャッチした。


「おっナイスキャッチ」

「ナイスキャッチじゃねーよ」


 いつの間にか青磁先生が立ち上がり、私の頭にチョップを入れた。


「あう」

「人が疲れて寝てたのにわーきゃーわーきゃー喋ってんじゃねえよ」

「女の子に暴力振るうなんて酷いよー兄さん」

「お前らなら避けようと思えば避けれるだろこんくらい。つうか、こいつ頭硬すぎて俺様の手のバッキバキなんだけど」


 彼が手をぷらぷらとさせる。反応で防御術を使ってしまったから、なのかよくわからないが、それはあまりにもやわすぎると思う。


「えーなんでそうなるの」

「やっぱ兄さん雑魚だね。ざーこ♡」


 翠ちゃんは手が隠れるほどの袖で口元を隠しながらくすくすと笑う。すると、青磁先生は口を歪ませ私達を罵る。


「てめえらの構造がおかしいだけだろ、脳筋ゴリラども」

「あ?」

「は? 風穴開けるよ?」


 昔、黄依きいちゃんからも同じように言われたことあるけど、流石に青磁先生から言われると怒りが湧いてくる気がする。翠ちゃんなんて既に特異能力エゴで銃を出して構えてるし……


「ステイステイ。マイリトルシスターズ。頼むから銃は下ろしてくれ。死んじまう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ