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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act four <第四幕> Dandelion──花言葉は別離
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蒲公英病編 11話 発生源追跡任務11

 花々の様子を見ると完全に認識されたらしい。私はあれを目視したのは初めてだが、想像をしていた通りの姿を見てだった。あれは紛れもなく『蒲公英ダンデライオン』の婢僕サーバントだろう。


 であるならば、この周辺が当たりの可能性が高い。


「『速度累加アクセラレーション』ッ!」


 動きを止めず花々へ突っ込む前に今度は私が空へ跳び、薔薇を回収しながら、『死喰い樹(タナトス)の腕』達を避ける。地面は一体に花々が増殖する。間一髪と言ったところだっただろうか。


「薔薇ッ! 索敵!」

「はい! わかっていますわ!」


 彼女は私の言った通り、『蒲公英ダンデライオン』本体の位置を索敵する。私達の任務は本体に発信機を付けるだけ。婢僕サーバントを直接相手をするだけ体力と時間の無駄だ。


「前方から十時の方向500メートルに婢僕サーバントより強い熱源を確認しましたわ」

「勝負は一瞬よ。発信機の準備をしておきなさい」


 舞空術、序ノ項『風花ふうか』による滞空からノーモーションで距離を詰める。私の特異能力エゴと筒美流奥義『花間かかん』の速度重視の合わせ技。


「──行くわよ、『落花流水らっかりゅうすい』」


 今まで出していた速さの10倍の速度。瞬間速度にして最高で3400m毎秒。日本列島の長さを3000kmとするなら16分足らずで辿り着ける程の速さだ。これだけでまず、周りのものは吹き飛ばされるし、爆音がする。勿論、これは直線的な動きしかできないが、当たっただけで並大抵の感情生命体エスターならそれだけで殺す事はできる。そして、特異能力エゴの性質上、空気抵抗による摩擦などの不都合が一切生じない。


 だが、慢心はいけない。私達は発信機を付けるだけで良い。それだけを考えればいいのだ。


 刹那に『蒲公英ダンデライオン』本体の姿が見える。赤黒い巨大な蒲公英の花。夥しいほど花弁が赤黒い綿毛に激しく入れ替わり、高速で種子を周囲に飛ばす。あの種子が『蒲公英ダンデライオン』の『衝動パトス』。そして、根本にはやはりこれも夥しく太い根が沢山地面から生えており、それがくねりと蠢くと土が盛り上がり花茎と花弁が動き出す。速度はそれほどでもないが、あれで地中に潜る事も可能なのだろう。


 私は『思考加速フロー』によるより詳細な観察を始める。『思考加速フロー』を発動させたのはもし薔薇がしくじったら『過負加速オーバーフロー』を即発動させ、代わりに発信機を取り付けるためである。


「……ッ⁉︎」


 異変に気がついたのは『思考加速フロー』を発動させた直後であった。


 何百も存在する花弁の中に異様な圧を放つものが三つ程あった。そして、そのうちの二つが私達が本体に接触する前に花開く。


 現れたのは15歳位の似た顔の少年と少女。昔ながらの日本の伝統的な服を来ている二人。そして、私たちにかけられていた圧が封藤ふうとう氏と似たものである事が直感的に分かった。


 少し遅れてそれに薔薇が反応し、危機感で顔をギョッとさせる。同時にくすくすと笑い声が聞こえる。音速を超えた速さで動いているというのに、声が聞こえたのだ。


「逃げッ……ガハッ⁉︎」

「グッ⁉︎」


 瞬間、私達は地面に叩きつけられる。上を即座に見ると先程の二人がさっきまで私達がいた場所に滞空していた。周りからは小さい蒲公英の花々が私たちを囲むように増殖し始める。そして、『蒲公英ダンデライオン』本体が私達の顔を覗き込む。


「あらあらあらぁ〜? 向日葵ひまわりちゃんの所の子かしらぁ〜? 奇遇ねぇ〜これも『あの人』が定めた運命なのかしらねぇ……200年ぶりに会う生きてる人間が向日葵ちゃんの子孫なんて。もう一人は全く知らないけど。まぁいいよね。おーい! 二人とも戻っておいでぇ〜」


 唯一開いていなかった花弁の中から若い女性の声が聞こえる。その声に反応すると私達をはたき落とした二人はすぐにそこまで降りてきた。


 防御が間に合わなかったからなのか、地面に叩きつけられた衝撃で痛みが麻痺して呼吸ができない。薔薇も同じように地面に蹲った状態だった。


 そして、その花弁が開くと女性の顔が現れる。だが、現れた顔が現状況からは最もかけ離れたものだった為、驚きのあまり考えていた事が口から漏れてしまった。


「えっ……」

「まさか……貴女……死んだんじゃ……」


 何が起きている……何故、ここに彼女がいる……?


「……衿華えりか?」


 ハーフアップに結われた髪、華奢な身体、私達の目の前に現れた女性はあのふき衿華に瓜二つだった。

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