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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act four <第四幕> Dandelion──花言葉は別離
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プロローグ お茶会6

「それで止水しすい先輩の特異能力エゴについてなんですが……」


 泉沢いずみさわさんはコーヒーを作りながら僕達に話しかける。


「あれは……そうですね。正確には少し違い、体験した人によって解釈は異なってくると思うのですが、僕の経験談で表現するとしたらやはり『未来予知』と『時間停止』が一番分かりやすいものになると思います」

「『未来予知』と『時間停止』……?」


『未来予知』とは未来に起こる事を特定し、相手の取る行動を先回りする特異能力エゴで、『時間停止』とはつまり己以外の時の流れを止めその間は自由に動くことの出来るという特異能力エゴという事だろう。


 確かに、この二つの特性を持った特異能力エゴが有れば最強と言われても過言ではないレベルではある。


 ちなみに、関係はないが紫苑しおん姉さんは『未来予知』に近い特異能力エゴを持っている。だい兄さんと同じような特異能力エゴで惹かれ合う所でもあったのだろうか。


「ええ、しかし通常考えうる『未来予知』や『時間停止』とは少し異なるものとなります。おそらく皆さんは『未来予知』や『時間停止』と考えると、未来を"確定"させたり、相手の動きや思考を止めその間に攻撃したりする事の出来るものと考えると思います」

「はい」

「そうですわね」


 普通というか、それ以外あるのだろうか。


「それでまず止水先輩の特異能力エゴーー『光風霽月アタラクシア』の『未来予知』能力は『時間停止』の上で成り立っている『未来"予知"』であると僕は思います」

「……?」

「つまりどういう事ですの?」


 遠回しな説明に頭に疑問が浮かぶがそのまま彼の解説を聞く。


「この説明では少し難しいですよね。ではこういうのはいかがでしょうか。もし先輩に『時間停止』の能力がありその最中に筒美つつみ流奥義対人術である『未来を"予測"』する技を使っているとしたらどうでしょうか?」


 泉沢さんはあえて『予知』と『予測』という言葉を使い分けているのだろうか。


『予知』はある時間軸上で知る事の出来るはずない未来に起こる出来事を予め知る事である。これは特異能力エゴでも無い限り通常の人間が出来る事では無い。


 逆に『予測』はある時間軸上に存在する情報から計測することによって予め何が起こるのか想定するものである。これは筒美流奥義の『花心はなごころ』を始めとした対人術によるものなので特異能力エゴを持たない普通の人間でも取得可能なのである。


 この二つの違いを考えると特異能力エゴであるか、そうで無いかの大きなものとなる。


「……つまり先生がおっしゃりたいことは『時間停止』に寄って"予測"の正確さが上がるという事ですわよね?」


 薔薇ばらさんが言った言葉によって彼の言っている意味がよく理解できた。つまりは、『時間停止』の際物体は全て止まっているから、通常に使う筒美流奥義よりもかなり使いやすく正確に"予測"が可能になる為、もはやそれが"予知"の領域までたどり着くのだろう。


「はい、そうですね。瑠璃くんもなんとなく理解してもらえたでしょうか?」


 いや、この説には一つ納得のいかない点がある。


「……一つ質問良いですか?」

「どうぞ」

「そもそも『時間停止』が出来るので有ればその最中に攻撃なりなんなりして相手を倒せば『未来予知』なんかいらないんじゃ無いですか?」

「そうですね。だから、『時間停止』の方も少し違うと言ったのですよ」


 ……なるほど、そういう事か。


「『時間停止』の特異能力エゴに制限がかかっていたらどうでしょうか? それこそ物体に干渉できないだとか、自分の身体すら動かすことのできないだとか……挙げたらキリが無いと思います」


 恐らく、そうなると題兄さんの『光風霽月アタラクシア』は黄依きいが先ほどの模擬戦で見せた『思考の加速』に似たような特異能力エゴなのだろう。


 つまり、時を止める事によって現実に起きている事象を観測し、その情報を基にすることで未来に起きる事を予測する。あとは彼の持つ筒美流奥義での身体能力の異常なレベルでの強化。それが実質的に『未来予知』と『時間停止』を可能にしているのだろう。


「確かに相手の動きを事前に知る事ができる限り『最強』の特異能力エゴではありますよね」

「これも推測では有るので確実という訳では無いのですが、僕の特異能力エゴが通用しない時点で既に光速に等しい速さで動く事ができるか、時間という概念を止めているかのどちらかなのは確定していますからね」


 なるほど、だから僕でも題兄さんの特異能力エゴの正体について掴む事ができなかったのか。


「止水先輩についてはこれで終わりです」

「ありがとうございました」

「為になりましたわ、先生」


 彼はコーヒーを作り終え僕達と同じ机に座る。


「そういえばお二人はこんな所で何をしているんですか?」

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