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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act four <第四幕> Dandelion──花言葉は別離
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プロローグ 入軍試験10

 もう一度上を見上げ、私の拳によって抉られた壁を観察する。思った以上に小さい被害で済んだが、それを直接受けてしまったすいは全身から血を吹き出して気絶し横たわっていた。


 だが、彼女も元々鍛えてはいる為この程度ではそこまで重症化はしないだろう。流石に衿華えりかに当ててしまった時よりは重症ではあるが、死喰い樹(タナトス)の腕の気配も感じられない為不慮に死ぬ事もないだろう。


「良かった……ほんと……危なかったわね」


 自身の能力の危険性を知っていたからこそ、全くこの特異能力エゴを使う気なんて無かったが、翠の気迫に押されてしまったのだろうか。


 幸い『僻遠斬撃リモートインパクト』の加減が徐々に出来つつあったためそのコントロールも効いたのだろう。だが、それも偶然が重なって出来ただけの話である。そのため今後はやはり人に向けて使うべき能力ではないだろう。


「ごめんなさい、特異能力エゴを使わざるを得なかったの。今すぐ翠を上の病院に連れてくわ」


 私は地面に吸い付くように疲れてしまった身体を無理矢理起こしながら、翠の方へと歩みをすすめる。


 すると瑠璃るりが笑いながら此方へ話かけてきた。


「大丈夫だよ、黄依きい。僕が治すから」


 彼は翠に触れられる距離まで近づき手を翳す。


「『物質操作サブスタンスコントロール』ーー『肉体治療ボディセラピー』」


 すると、翠の身体にあった流血や怪我が撫でられただけで汚れを取るようにして消え去っていく。


「へぇ……」

「瑠璃さんの特異能力エゴは怪我を治療する能力ですの?」


 それを見て驚いたのか白夜はくやくんと薔薇ばらの二人は感嘆の声を漏らす。

 そしてすぐさま、翠が目を覚まし身体を起こそうとする。


「イタタッ……まさか転移先を読まれていたなんて……一発くらい当てれると思ったんだけどな」

「翠ちゃん、大人しくしてて。怪我を治したと言っても表面だけ綺麗に整えただけだから」


 翠は瑠璃に身体を押さえつけられ二人地面に座らされる。


「ところで黄依ねーさん。私一発も攻撃当てられなかったんだけど、まさかこの試験落ちるとかないよね……?」


 翠は恐る恐る私に質問をしてきた。


「……うーん」

「えっまさか本当に落ちたのッ⁉︎」

「いや、合格だよ」

「何故回答を渋ったし!」

「あぁ……特異能力エゴの副作用で全然頭働かないから……うん、おめでとう」

「はぁ……よかった。勝ちにこだわりすぎて落ちたかと思ったじゃん」


 目頭を押さえながら私は椅子に座る。少し頭がスッキリしたので、引き続き翠の話しかけに応じる。


「合格の要因は黄依先輩に本気を出させたこと?」

「そうね。最初から『僻遠斬撃リモートインパクト』を使わざるおえない状況になったら合格にしようとしていたわ。不意に転移させてきた手榴弾グレネードとかほんと驚かされたわよ」


 先程の模擬戦について振り返りを始めた。


「あぁ! あれは特異兵仗アイデンの制約を破ってまでやったから、ねーさんのギョッとした顔見られてよかったなぁ」

「煽られるとすぐやり返す癖良くないわよ。あんたがもっと体力を温存しておけば最後の局面で確定であの位置に『僻遠斬撃リモートインパクト』は打ち込めなかったもの」

「そうかなぁ……ねーさんならそれでも攻撃してそうだけど……」

「それは否定しないわ。手榴弾グレネードで不意を突くなんてしなくても、アンタになら『僻遠斬撃リモートインパクト』を使う気でいたから。でも今回の試合私もかなり危なかったわ。読み間違えていたら私が負けいてる可能性だって十分高かった。次あんたと闘ったら勝てる自信ないかも」


 私がそれをいうと彼女は顎に手を置き、瑠璃くんの方を見る。


「ふむふむ。まだまだ強くならないと瑠璃くんは守れそうにないかな」


 確かに、彼の能力は攻撃に転ずる事も可能ではあるが、戦闘ともなると少し難しいだろう。


「ところで瑠璃さんの試験どういたしましょうか? 能力が怪我の治癒ともなると、模擬戦闘じゃ試験にならないような気もするのですが」

「……あぁ、だがあれだけの回復力の速さ、十分サポート役でも使える戦力だと思う。わざわざ試験なんてしなくてもいいんじゃないか?」


 薔薇と白夜くんの二人は私に試験をするかどうかの判断ど問おうとする。


「私は瑠璃次第だけど、そこん所どうなの?」


 私は瑠璃が何を考えいるか知る事にしてみた。

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