表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act four <第四幕> Dandelion──花言葉は別離
169/370

プロローグ 入軍試験7

 目の前のメイド服を着た少女、すいからは到底人間と思えない程のプレッシャーと歓喜を感じる。


黄依きいねーさん……殺す気で来てよ……!」


 相対して、私、霧咲きりさき黄依は彼女の気持ちとは反対に冷たく言葉を返す。


「これは試験よ。遊びじゃない。私が本気を出すに値したら出してあげる」

「相変わらず……釣れない先輩だ」


 瞬間、翠の手には突撃銃アサルトライフルが握られる。特異能力エゴ……『物質転移サブスタンスコシャッフル』で手元に転移させたのだろう。


 一瞬のうちに彼女は引き金を引き弾を放つ。だが、一切の音は未だ私に辿りつかない、刹那に行われた動作であった。


 この音だけでは感知出来ない一連の動作を捉えるには視界を捉える為の周囲の光を特異能力エゴにより加速し、反射神経と視界の強化を行わなければ、未来予知でも出来ない限りは不可能な速さであるだろう。


 さらに音速を超えた銃弾が私の体に向かってくる。


 だが、私はその弾を受け入れるように目の前に立ち続け、目の前に来た瞬間、中指で弾くように衝撃を与えながら進行方向をねじ曲げ『速度累加アクセラレーション』による加速を行う。


「……」

「音速を対応できるねーさんに弾速が音速以下の銃は使えないからね、とっておきを使わせて貰うよ」


 その言葉が聞こえた頃には既に空気が破裂したような音と焼け焦げた匂いがした後だ。


「あれ、反応された。それに弾も"自由"に転移できない」


 勿論、彼女へ向けて飛ばした弾は彼女の身体に当たった瞬間、その場から物質そのものが消え去った。


「随分甘く見られたものね。これなら、『僻遠斬撃リモートインパクト』を使わなくても勝てそうね」

「そうか……『物質転移サブスタンスシャッフル』の支配が奪われたのか。『速度累加アクセラレーション』で弾の支配を書き換えたのかな? なるほど……だから、弾が転移できない」


 彼女は驚き、悦びながら続ける。


「全く分からなかったよ。今飛んできたこの弾も丁寧にデコピンか何かして返されたのかな? 特異能力エゴの使い方が益々器用になってきたね、黄依ねーさん」


 消した弾が再び翠の掌の上に現れる。


「負け惜しみはいいから、本気で来なさい。時間の無駄よ」

「挑発的……! 素敵! そういうねーさん、嫌いじゃないよ!」


 彼女が突撃銃アサルトライフルを構え、スコープを覗いた瞬間、私は彼女の裏手に回る。


「速っ! でも!」

「チッ反応されたっ!」


 だが、裏手に回る前に翠は身体ごと転移させ、別の場所に移動する。


「私の間合いはちゃんと理解してるみたいね」

「間合いなんて『僻遠斬撃リモートインパクト』を使えば無いような物じゃないですか」

「だから言ってるでしょ、見たければ私に本気を出させなさい」

「ふふっ!」


 彼女が笑いながらもう一度転移し、私から距離をもっと離す。


 悪寒……?

 何か大きな攻撃を仕掛けてくるのか……?


 彼女が私を囲むように銃弾を素早く複数打った瞬間、私のいる場所に何かが転移される。


手榴弾グレネード……ッ⁉︎」


 安全ピンが抜かれ今にも爆発しそうな爆弾。直撃はいくら防御しても最悪、四肢の損失は免れない。


 何故、このタイミングで本来なら有り得ない筈の場所と物質が転移してきた……? いやそんな事よりもまずはこの手榴弾グレネードから逃れなくては。


 だが、左右に逃げようとしても予め打った弾が私の退路を邪魔して、それに対応しようとした瞬間、手榴弾グレネードが危険域で爆発する。弾も放っておけば次々と転移され続け、次第に数が増えていき対処が困難になっていく。


「なるほど、私に本気を出させる為だけの一手か。認めるわ……『僻遠斬撃リモートインパクト』ッ!」


 私を囲む銃弾と手榴弾グレネードを触れずに私の体から遠くへ加速させながら吹き飛ばす。吹き飛ばされたそれらは周囲を包んでいる壁に思い切り当たった後、爆発したり砕け散ったりする。


「やるじゃない。でも次は通じないわよ」


僻遠斬撃リモートインパクト』の使用は弱め、なるべく体力消費を抑えるようにする。これを強くすればここから直接彼女に対して攻撃を与える事はできたが、危険性を鑑みて辞めておいた。


「はぁはぁ……特異兵仗アイデンの制約を一回破っただけでこれか……かなり、きついね」


 翠はかなり息を吐きながらこちらへもう一度銃を突きつける。


 先程の手榴弾グレネード特異兵仗アイデンを使わずに、本来の特異能力エゴだけの力で起こしたのだろう。だから、あのサイズの大きさを別の物体を中継せずに転移させられたという訳か。


「さて、勝負はここからね……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ