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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act four <第四幕> Dandelion──花言葉は別離
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プロローグ 入軍試験4

「それもそうだね」


 僕はすいちゃんに同意すると足を早く運び本部へいち早く行こうとする。


「早く本部に行こ! 人に話しかけられてめんどくさい事になる前に」

「あっ待って! 瑠璃るりくん」


 翠ちゃんは慌てて駆け出し僕を追いかける。


 そう時間が経たないうちに護衛軍本部へと僕等は到着し、事務所にいた霧咲きりさき黄依きいさんと水仙すいせん薔薇ばらさん、そしてみさお白夜はくやさんに連れられて地下空間に広がった大きい模擬戦闘室に連れられて行かれた。


 見渡す限り上にある護衛軍と病院の土地よりも広く感じるがおそらく縦横どちら3〜5キロメートル程空間が広がっているのだろう。一面特殊な液晶画面のような素材で出来ていた。


「へぇーここの模擬戦闘室は機関のと違ってかなり広めなんですね。機関の方もまぁまぁ広いけどこんな広く無いんだよね。瑠璃くん、こんな大きな部屋初めてでしょ?」

「うん。ここって体育館みたいな感じなのかな、僕初めてだから少しワクワクしてるよ」


 翠ちゃんが通っていた機関にも同じような部屋があるのか、と思いつつ僕は黄依さん達に今一度今から何をするのかを確認する。


「こんな広い所で僕達これから試験の為に闘うんですか?」

「えぇ、一応ね。でも、部屋全体は使わないからそれだけは誤解しないでね。普段なら一面に仮想の空間の映像を流して捕まえた感情生命体エスターとここの受験者を戦わせるんだけどね」


 黄依さんはそう答えると白夜さんにアイコンタクトを取り、彼はそのまま手に持っていたリモコンのような機械を操作した。


「対人用戦闘モードに移行します。模擬戦闘を行う者は直ちに指定の床の上へ移動してください」


 部屋にその機械的なアナウンス音が聞こえると、おおよそ500メートル四方の近くの床が薄く光った。


「おぉ、光った」

「それじゃあ、試験対象者の成績を付ける為に一人ずつ試験していくから先にやりたい方を決めなさい」

「なら私で良いかな! 瑠璃くん」


 翠ちゃんは少し興奮気味に僕に迫り、先鋒を譲る事をねだった。先程から、楽しみにしていたみたいだし、ここは翠ちゃんに譲ってあげよう。


「うん、いいよ」

「分かったわ、じゃあ私の出番ね」


 僕がそれに了承すると、黄依さんが声を上げ光っている床の位置へと歩き出す。翠ちゃんも彼女について行きその床へ足を踏み入れた。


 それと同時に僕達のいる外野側にホログラムでできた観客席が現れる。


「色絵瑠璃くん、君は俺たちとこっちで二人の闘いを見ていてくれ」

「あっはい」

「これは ERG(エルグ)でできた実体ですから安心して座って下さいまし」


 白夜さんは観客席に座るように声をかけ、薔薇さんはお嬢様のような言葉遣いで僕の不思議に思っていた所を解説する。そしてちゃんと座れるかを確認する為に恐る恐るそこに腰を下ろした。


「意外と座り心地いいかも」

ERG(エルグ)はどんな温度でも、どんな圧力でも固体、液体、気体の状態になる事ができて材質のコントロールも自由自在にできるからこれくらい当然ですわ」

「なるほど、護衛軍にはそんな技術もあるんだ」

「一応、これ最新鋭のやつだけどな」


 彼女達は僕の好奇心に応えるように解説をしてくれる。


「まぁ、色々気になる事もあるかもしれないが、そろそろ試験が始まるから黙って見学でもしようか」

「うん、分かりました」


 僕は翠ちゃんの方を見ると、先程光っていた床の部分の周りが透明な壁に囲まれていた。どうやらこちら側からは見えるが、内側からは見えないようになっているようだ。音も聴こえてはくるが此方の音は聴こえないようになっているのだろう。


「既に試験内容はメールで送っていますから既に確認済みだと思いますが、もう一度確認しますわよ」


 始まる前に薔薇さんがもう一度ルールを説明してくれるようだ。


「今回の入軍試験は不定期開催になるので、お二人には通常とは違う試験を受けて貰いますわ。普通なら、筆記試験、対感情生命体(エスター)試験、受験者同士の模擬戦闘、というような順番で試験を受けてもらっているのですが、今回は感情生命体エスターの数が足りないので、代用に護衛軍の特異能力者エゴイストと闘って貰いますわ」


 薔薇が前提を話していると白夜さんが僕に質問をしてきた。


「そういえば、瑠璃くんは筆記試験の中でも人体構造学が過去の受験者と比べて最高点数だったな。俺も一応自由記述を読ませてもらったけど、凄かったよ。どんな風に暮らしてればあんな発想が生まれるんだ?」


 筆記試験で記述したのは、青磁せいじにぃが作った特異能力エゴの暴走を抑える薬についての事だ。


「青磁にぃの入れ知恵です。僕は少し研究を手伝ってただけで……」

「青磁にぃ……なるほど、色絵青磁か。そういえばあの人の弟だったな。でもまだ君15歳なんだろ? あの人についていけるだけ凄いよ」

「そう言って貰えると嬉しいです」


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