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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act three 第三幕 死にたい少女の死ねない理由
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番外編 一話 シキエルリ

 僕の名前は色絵しきえ瑠璃るり


 産まれながらにして感情生命体エスターとして誕生した僕はその特異能力エゴを扱えず、安定な形を持った身体を持つ事なく15年以上の間家の中の牢で暮らしてきた。


 それは自分の危険性について理解していたからで、自分から望んで軟禁される事を望んだのだ。


 また、そう行動した理由は僕は胎児の時点で記憶があり、感情があり、理性があったことに繋がる。そして産まれた瞬間に自分が普通の人間ではないという異常性に気付いた。


 そんな風にして産まれた理由はわからない。ただ一つ分かったのは僕の身体は翠ちゃんの身体を元にして作られたのだという事。本来たった一人であった筈の胎児がある日急に二人になっていたという現象が母の体内で起こったという記録が僕の考えを裏付けていた。


 さらにエコーで覗いた際片方の胎児はずっと女の子だったが、日によってはもう片方の胎児の性別が変わっているのであった。


 出産前から様々な現象を起こした僕は出産当日も厳重な注意の中腹から取り出された。具体的に言えば助産師は翠ちゃんを取り出し、2日後に安定した僕を取り出したのだ。だが僕が産まれた瞬間、助産師は違和感に気づいたのだった。


 通常産まれたばかりの新生児は肺呼吸が出来ない状態である。その為、第一啼泣即ち助産師が無理やりにでも泣かせる事で肺に空気を送り込む事で肺呼吸を始める。


 だが、僕は泣く事は無く幾ら叩いても泣く事は無かった。その時点で特異能力エゴを使う事で肺呼吸を可能にさせていた。


 そしていつまでも叩いてくる助産師に嫌気がさし声を出そうとしたがまともな声が出なかった。『ウゥ』と唸った声のせいで逆に僕が苦しんでいるように見えたのか助産師が必死の表情で僕の事を叩いてきた。


 この時点で僕は既に母親の身体の中で言語を習得しそれが何であるのかを理解していたが声帯が言語を話すまでに成長していなかったのだ。


 だから声を作り出すために特異能力エゴによって声帯を作り変えようと思いそれを自らの肉体に使った瞬間だった。


 肉体が溶け本来の形を保て無くなり液体に近い状態へと変わってしまったのだ。その変化をまた特異能力エゴにより止めようと思ったのだが事態は悪化し止められなくなっていった。


 幸い、産まれたばかりだった為特異能力(エゴ)の暴走は疲れという形でものの1分で終わりすぐに正常な新生児の体へと戻った。


 ちなみにこの時焦って男性になってしまったから、僕は男性として扱われる事になった。その為、厳密に言えば僕はどちらでも有る。


 加えて一人称が僕なのは格式の有る家に産まれ、戸籍や立場の事を考えるとそちらの方が都合が良かったから。


 そしてある程度成長してからも自分の特異能力エゴが安定しない日もかなりの数であり人間の形が保てていなかった。さらにはその特異能力エゴによって周りの人たちを傷つけてしまうのが嫌であった為僕は自ら地下室の牢へと引き籠り暮らす事を決意した。


 何故牢がこの家にあったのかは知らないが、色絵家は200年前に存在した王、『雁来紅がんらいこう』と直接血の繋がる一族らしい。おそらくそれに関係する何かなのだろう。


 その名前には不思議と懐かしさと悲しさを感じてしまうのだが僕にはその理由が理解出来なかった。


 僕はそうして極力最初の12年間は家族以外の人間との接触を避け地下牢に篭り、ただずっと本を読んだりして暮らして来た。


 その間、漆我しつがくれないにより両親を殺されたり、青磁せいじ兄さんが行方不明になっていた、『漆我紅事件』が発生していた。


 そのせいで翠ちゃんは酷く悲しみ、僕に積極的に関わるようになって来ていた。一時期、紫苑しおん姉さんに注意され僕に会うことが禁止された程であった。この禁止のせいで翠ちゃんの特異能力エゴが僕の側にすぐ来れるように瞬間移動の効果になったのだろう。そのせいで紫苑姉さんは翠ちゃんを止める事を諦め、今では大分落ち着いたが機関に行っている時以外は僕にべったりであった。


 一方紫苑姉さんは事件後、止水しすいだいーー題兄さんとお付き合いを初めた。そんな幸せな生活を送りながら姉さんは僕の事を気にかけてくれて、多少の教養や闘い方等を教えてくれた。姉さんもまた紅葉もみじの祖父筒美(つつみ)封藤ふうとうの教え子であった為、翠ちゃんと共に多少なり筒美流奥義を教えてもらっていたのである。


 今の僕があるのは紛れもなく紫苑姉さんのお陰だろう。だから僕は姉さんへ憧れ真似するように着物を着るようになった。


 そして数年経った後、青磁兄さんが帰って来てからは僕の容体も安定した為、題兄さんと結婚をした。止水さんは当時の護衛軍旅団長の仕事の関係もあって度々、朝鮮の方へ行っていたがそれでも紫苑姉さんは心配する事なく彼を支えていた。

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