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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act three 第三幕 死にたい少女の死ねない理由
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樹教襲撃編 19話 鎌柄鶏7

 止水しすいさんが鎌柄かまつかげい達と戦っている地上を会館の上側から様子見する。止水さんは彼らに囲まれていても尚彼らを圧倒していた。鎌柄鶏も特段弱いわけではない。無意識ながら筒美流奥義のようなものを使いつつ身体強化等をしていた。護衛軍でも中間層くらいの実力は一人一人にあるのだろう。


 が、鎌柄鶏が攻撃を仕掛けるたびに彼にカウンターを取られ一気に攻めたものなら一瞬にして意識を飛ばされるほどの範囲攻撃をまとめて全員に与えられるか遠くまで吹き飛ばされるかの二択であった。


 もちろん鎌柄鶏には『肉体再生』や『身体分離』のアドバンテージが存在する。そのため止水さんも相手の戦力を削るためにはその場で気絶させるか、遠くに吹き飛ばすほかなかったのだ。


 一方、人数的に余裕のある鎌柄鶏達は逃げた私たちを追うために数人単位で会館へ人に侵入してきていることが分かった。止水さんとの合流の前にまずそちらをかたつけねばならない。


「『加速衝撃インビジブルインパクト』ーー!」


 二つの特異能力エゴにより編み出された衝撃波が迅速に彼らへ突き刺さる。何人か気づかずにノーガードで吹き飛び、気づいた奴はガードが間に合わなく気絶する。


「感度調節ぴったし……これならいけるっ!」


 特異能力エゴの練習の甲斐もありちょうど良い具合の威力でダメージを与えられた。これなら、ここからでも止水さんの援護ができるだろう。


 今度は狙いを彼らのいる方向へと向けようとする。すると、その方向に三人見知った気配を感知する。一人はそのまま残ったが、残りの二人は会館の沙羅しゃら様のいる部屋へと瞬間移動した。


 ……置き去りにされた盲目の男性と瞬間移動の特異能力エゴ、そして同時に移動したこの感情生命体エスターのような気配には私は心当たりがあった。


 泉沢いずみさわ大将補とすいちゃん……それに瑠璃るりくんだ!


「本部から援軍が来た……!」


 特異兵仗アイデン持ちが二人に、すべての物体を操作する能力……


 これなら私がここにいなくても良い。


 すぐさま止水さんのいる場所へ跳んでいく。


「まさか護衛軍からきた助けが拓翔たくとくんや義妹達とはね。頼もしい後輩だよ」

「お久しぶりです、沙羅様に蘇らせてもらったんですね止水先輩。あなたに褒められると紫苑さんに嫉妬されて殺されてしまうのでやめてください」


 間違いない、長い髪を後ろで結び指揮棒を持ったスーツ姿の彼は護衛軍大将補佐、泉沢拓翔であった。相変わらず目が見えないのにこの多人数の中私をすぐさま見つけ声をかけてくる。


「おやおや、こんなところに貴方までいるなんて。お久しぶりです筒美さん。ふきさんのお葬式以来ですね」

「その節はお世話になりました」


 すると彼は指揮棒で鎌柄鶏達を指しながら止水さんと私に質問をしてきた。


「さて、おそらくですがこの大量にいる男を切らず殺さず懲らしめてやれば良いんですかね」

「そうです」

「では皆さん“視界“に頼ってはダメですよ」


 その言葉を聞き、咄嗟に私と止水さんは目を瞑り視覚以外の四感を筒美流奥義によって強化する。


「『波形干渉ウェイブインターフィアランス』ーー第一楽章序曲『灯り』」


 瞬間光が歪み視界が使い物にならなくなった為鎌柄鶏達は立つ事すら困難になる。


「えっ⁉︎ なによこれ!」

「目が回るわッ!」

「きっとさっきの優男の仕業よッ!」

「それなら早く彼を食べてあげないとッ!」


 それに合わせて止水さんと私はなるべく少ない動きで彼等を次々と気絶させていく。


「おお、怖い怖い。僕のことを食べようとしてくるんですけど」

「喰われないで下さいね。彼、人を喰う度にその特異能力エゴを獲得するんで」

「ほっといたらまずい案件じゃないですかソレ⁉︎ だから先輩がいるんでしょうけど」

「まぁ成行でね」

「とりあえずこの辺一体は完全に気絶させました。しばらくは起きない筈です。どうしますかお二人とも?」


 すると泉沢大将補が特異能力エゴを解除する。


「流石、手早いですねお二人とも」

「そういえば拓翔くん、瑠璃も連れてきたんだよね」

「はい」

「あの子に気絶させたのを分解させれば再生しないのでは?」


 止水さんが瑠璃くんなら問題ないと提案する。実際私も似たような案を思っていたのだった。


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