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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act three 第三幕 死にたい少女の死ねない理由
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樹教襲撃編 9話 絶望2

「硬イワ! ちゃんと攻撃を受けろヨ!」

「それはできない相談ね」


 怒った顔を宙に浮かべている真理亜まりあ


 そして、視界には分離されている切断面のようなものが映る。本当にそのまま綺麗に刀か何かで斬られているかのように血管や骨、筋肉がくっきりと目に見えた。


『血液とか一体どうなってるんだ』という疑問は湧いてくるが彼女の半分は感情生命体エスターという言葉を思い出すとすぐに好奇心は冷める。


「コノママじゃ、くれないサマに迷惑かけちゃウ……」


 彼女がなんの感情生命体エスターなのかわからないけど怒ったり心配したり……まるで人間みたいだ……


 私もあまり見かけたことは無いが『衝動パトス』を使う相手なら紅葉もみじちゃんの手助けが必要にはなる。


「ワタシ迷惑かけタラ捨てられるのカナ……?」


 彼女は悲しげな声を出すと攻撃が弱まった。捨てられた子犬を思わせるくらいの表情をしていた。


「……?」

「ソウなったらワタシハまた見世物小屋に売られるノ?」


 真理亜の雰囲気が変わった。そして彼女の言った言葉……『見世物小屋』も気になるところではあるが。


「縛ラレテ、切断サレテ、見せ物にサレテ、笑ワレテ、気味悪がラレテ、貶サレテーー」


 悪寒レベルの寒気と血の気の引くような後味の悪い感覚が体全体を襲う。


「ーーダカラお前モ『絶望』シロ」


 数少ない体験談の中でも一番強い『衝動パトス』がこの一帯のERG(エルグ)を犯し尽くす。


 咄嗟にそれを察知した私は発動させている奥義を全て解除しERG(エルグ)の代謝を止め、彼女が汚染させたERG(エルグ)のある空間から全力で走って抜け出す。


「……この感情は『絶望』……マリーゴールドの花言葉って訳ね」


 一度態勢を立て直しながら彼女からどんどん距離をとる。


 今の言動から推測するにおそらく彼女はもともと特異能力者エゴイストでそこから感情生命体エスターへと変化したのだろう。人間から感情生命体エスターになるということはよくある事例ということは私の中の認識にもあった。しかし、特異能力者エゴイスト感情生命体エスターになるという事例を見たことがない私は内心かなり焦る。


 紅葉もみじちゃん達が束になっても討伐に手間取った相手並の強さを私一人で足止めするのか……


「この子を近づけると危ないから紅葉ちゃん達の元へは行かない方がいいのかな?」


鳥語花香ちょうごかこう』の探知範囲を紅葉ちゃんや沙羅しゃら様のいる会館へと広げ現状況を確認する。


「……ッ⁉︎」


 私が感知した中には紅葉ちゃんや沙羅様はもちろんのこと止水しすいさんの気配までもが感じられた。しかしそこにあった気配は全てで5つ。一つは止水さんと戦っている特異能力者エゴイスト感情生命体エスターの気配。こっちはかなり強いが止水さんと拮抗して押さえ込んでいることから問題はあまりないはず。


 しかし問題なのは残り一つの反応。それは私が死喰い(タナトス)の樹に呪縛されていた時と同質な気配を感じる。自死欲タナトス……死にたいという感情の源のようなものが感じられた。おそらくそいつが樹教の教祖なのだろう。


「まずいわね」

「余所見ハダメだよお姉サン!」


 もちろん感知をしていたため攻撃は避けるが真理亜が近づいてくるたびにERG(エルグ)の汚染区域が広がっていき徐々に戦いづらくなっていく。


 紅蓮ぐれんのサポートをするためにこっちにきたのにこれじゃあ本末転倒だ。


「マタ避けらレタ! イイ加減鬱陶シイ!」


 だが『衝動パトス』を発動させてからは特異能力エゴによるあの攻撃が若干ではあるが多様性を失いつつあった。体そのもの位置の把握をしたりコントロールするのに脳のリソースは避けないのだろう。


特異能力エゴト『衝動パトス』どちらヲ優先サセルべきなんだろうカ?」


 正直あのように体をバラバラにされるんじゃ物理的な攻撃が効いているのかもよくわからない。相手をするだけ無駄で紅蓮の手助けに行った方がいいのではないか……?


 ……よし


「次は避けることも防御も一切しないから全力でその特異能力エゴ私にぶつけてきてよ」


 手で仕草をし彼女を挑発する。


「ソウカ! 喰わレル覚悟はできたノカ!」


 私は『鳥語花香』と『狂花きょうか』を全力で発動させ反撃態勢をとる。


「アハハ!ソレじゃあワタシも全力でイコウ……! 『身体解剖ボディアナトミア』」


 彼女の体から強烈なエネルギーが放出された。


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