表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act three 第三幕 死にたい少女の死ねない理由
144/370

樹教襲撃編 7話 襲撃2

「人を捨てなきゃ貴女には勝てないから」

「そんな事言ってる癖に理性エゴを捨てきれてないじゃない!」


 汚染濃度の濃い『衝動パトス』が周囲一帯を包もうとする。


「『痛覚支配ペインハッカー』ーー精神浄化メンタルプリティケイション


 翼の能力によって強化された『痛覚支配ペインハッカー』が『衝動パトス』によって汚染された ERG(エルグ)を浄化する。


「やっぱり! それくらい対策するわよね!」


 後ろに下がろうとする彼女を追わず私は遠距離から『僻遠斬撃リモート』や『速度累加アクセラレーション』を使いつつ攻撃する。


「筒美流奥義急ノ項『百花』!」


 拳や翼により起こる風圧を駆使した見えない遠距離攻撃。それが彼女に突き刺さるかに思えた。


「効かないわねッ!」


 がしかし彼女に触れる頃には衝撃波は何も攻撃力を持たない風になっていた。


ERG(エルグ)の操作……? まさか……!」

「そう私に対する ERG(エルグ)による攻撃は全て無意味。特異能力エゴによる攻撃も貴女の祖父の編み出した遠距離攻撃も私に触れた時点で無に帰すのよ」


 特異能力エゴが効かない……⁉︎ じゃあ私が今までやってきた事は……


 何年もかけて血の滲むような努力をして得た技術。

 最愛の姉を犠牲にしてまで生き残って得た応用力。

 最大の友達に隠し事をし見殺しにしてまで得た特異能力エゴ


 様々な後悔の果てに得た今の私は……


「ふざけるなよ……そんなの……そんなの」


 何度も何度も彼女に向かって暴力を振るう。その全てが尽く打ち消されてしまう。


「それ全部私を殺す為に手に入れたんだ。強くなったね。たくましくなったね。頑張ったんだねーー」


 そして、彼女は仮面を外し私に『あの人』の顔で醜く笑いかける。その瞬間、今まで認識していた彼女の見た目、声、匂い全ての認識が書き換えられる。


「ーーでも全て無駄な人生! アッハッハ! 『生まれてきてごめんなさい』くらい言ったらどうかしら?」


『その人』は……駄目だ、絶対に有り得ない。その人の顔でそんな事言われてしまったら私は壊れてしまう。


 有り得てはいけないだってその人は私と離れ離れになってからずっとどこかの病院に……


「お母様……?」


 紛れもなくその顔は私の実の母ーー筒美つつみ宛名あてなであった。


「あーあ、貴女なんて産んでしまったからこんな事になってしまったのに。さっさと自分で死になさいよ」


 その声でそんな事言わないで……一番『死にたい』って思っていたのは私なんだよ?


 思わず全ての徒労と起きている事の不可解さで全身から力が抜け身体が崩れ落ちてしまう。


「駄目です! 紅葉さん、自死欲タナトスの衝動に飲み込まれちゃいけない! それに、あれは貴女の母親じゃない!」


 必死の形相で沙羅しゃら様が此方へ駆けつけてきた。


「違う……あれはどう見てもお母様だよ」

「騙されてはいけません、宛名さんはちゃんと護衛軍直営の病院に居ます!」

「タナトスが乗っ取ったんだ……あいつは私を乗っ取ったんだ! お母様を乗っ取れない筈が無い! ずっと私に会わせなかったのがいい証拠じゃない⁉︎ なんで黙ってたの⁉︎」


 そうだ……もし監視下に居たなら一度くらい会わせてくれたって良かったじゃないか。きっと失踪を隠蔽する為にこうして私をお母様に会わせなかったんだ。


「違います! そんな意図全くないです!」

「そんな無駄口叩いてていいのかしら? 私は貴女をいつでも殺せるのよ?」


 タナトスは此方へゆっくりと歩きながら近づいてくる。そして射程位置ついたのか翼を広げそこから光熱波を出そうと ERG(エルグ)を集中させている。


「二人とも一気に片付けられるからそれも楽かもしれないわね」


 タナトスがそう呟き光熱波が発射された。

 もうこれで私は終わりなのだろうか。


 そう思った瞬間、私の目の前に白く神々しい羽が現れる。


「『贄の翼サクリファイスウィングス』ーー! 紅葉さんお願いです立ち上がって下さい。私も闘います……! ですからご一緒にコイツを撃退しましょう」

「沙羅……様?」


 彼女の背中からは天使のような綺麗なその羽が大きく生えていたようだった。


「へぇ……其方も羽の能力を使えるのね」

「ええ。私だってずっとあの樹の中で引きこもってた訳じゃないのですよ」


 沙羅様は此方を見て手を出した。私は反射的にその手を取り立ち上がる。


「ごめんなさい。心配かけました」

「大丈夫ですよ。紅葉さん、私気付いた事があります。先程タナトスは止水しすいさんの攻撃を打ち消さず受けていました」


 先程止水さんは特異能力エゴによる攻撃ではなく直接タナトスに触れて攻撃していた。


「そうか……」


 奴には ERG(エルグ)による遠距離攻撃が効かないだけで直接物理的な攻撃を与えるだけでダメージは通る。


「ありがとうございます」

「さぁ行きますよ紅葉さん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ