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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act three 第三幕 死にたい少女の死ねない理由
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樹教襲撃編 2話 沙羅の狙い2

 なるほど……沙羅しゃら様は最初から紅蓮ぐれんを味方につける為だけに、こうして『焔』に誘拐紛いな事をされたのか。


「しかし、彼がまともに闘えるようになるというのはどういう事ですか?」


 そこが引っかかり私は沙羅様に質問を返した。


「……それは紅蓮兄様には筒美つつみ流奥義が一切使えません。幾ら特異能力エゴが強くても、それじゃあ樹教との闘いでは一切役に立ちません」

「なるほど……」


 しかし、私が筒美流奥義の熟練度が高いのは日々努力してきた葉書はがきお姉ちゃんの体のお陰が理由の大半だったりする。あとは、どれだけ経験を積むのかという事。


 だから、私は彼に技術面で教えれることは少ないだろう。


「それなら、私よりそこにいる止水しすいさんや葉書お姉ちゃんに頼んだ方がよろしいのでは?」


 すると、止水さんは横に首を振り、お姉ちゃんの方を見ると嫌そうな顔をしていた。


 おそらく、止水さんも筒美流奥義をマスターはしているが、普段使うのは特異能力エゴの方を基軸とした闘いだから、紅蓮に教えるのは難しいと言ったところだろう。


 対してお姉ちゃんは特異能力者エゴイストでは無いから、彼に闘い方を教えるのが可能である。しかし、凄く嫌な顔をしている。


「……いいえ、大丈夫ですよ。筒美流奥義においてもっと素晴らしい人材を紅葉さんは知っている筈ですよ」


 沙羅様はそんな嫌そうなお姉ちゃんの顔を見たあと少し微笑んで言った。


「そうか……祖父ししょうだ……!」

「そうです、紅葉さんには筒美つつみ封藤ふうとう氏へお話を繋げて欲しいのです」

「ふむふむなるほど……」

「彼は今は神出鬼没で、護衛軍本部にも時々しか顔を出さない……そうですよね?」


 確か祖父ししょうはいま日本では無く朝鮮の方にいる筈。


「はい」


 私はそう言われるとすぐに携帯電話を出した。


「よっぽどのことが無ければ、これで繋がると思いますよ。時間がある時に私から伝えておきますね」

「お願いします」


 そして、沙羅様は続けて私の方を見てお願いしてくる。


「この一件で確実に私に対する樹教の接触があるでしょう……迷惑を承知で聞きますが、協力してくれますね」

「勿論、あっちには私という存在がいる事、まだ知られていない筈……教祖が来る事は無いにしろ、樹教と事を構えるなら ERG(エルグ)を浄化できるこの特異能力エゴ確実に必要になるでしょう」


 当たり前だ。今沙羅様が樹教に暗殺でもされたものなら全てが終わってしまう。


「ありがとうございます。では、それまでのあいだここで暮して頂きます。紅葉さんが紅ちゃんである事他の人には絶対に言ってはいけませんよ。特に兄様は『漆我紅』に対してかなりの偏見を持っていますから」

「分かりました」


 私は彼の性格をよく思い出しながら頷いた。


「でも、ただここで暮らすってのも暇だしね……どうする紅葉もみじちゃん」

「体育館の中、『蒲公英たんぽぽ』病に罹ってた人達がいたでしょ? 彼等を『痛覚支配ペインハッカー』で治療してみようと思うの」

「確か、その特異能力エゴふき羽衣はごろも先生の特異能力エゴと同じもの……それなら、彼等を治す事は出来なくても症状の進みを遅くする事は可能ですね」


 止水さんは少し喜んだ顔を見せる。


「僕も手伝います。これでも護衛軍にいた頃は医者も兼ねていたんですよ。勿論本業は戦闘でしたけど」

「それは凄い……! では早速向かいましょうか! お姉ちゃんも私を後ろから助けてくれるよね」

「もちろん。治療とは少し分野は違うけど、筒美流奥義で少しくらいは人体の構造の勉強は齧らなきゃだからね、その辺の人達よりかは詳しいよ」


 護衛軍の特性上、戦闘員の中にも医療従事を可能とするものも多々存在する。それは護衛軍の大半が使っている筒美流奥義の習得の為に人体の構造の理解が手取り早いからである。


 止水さんはまさにその具体例で彼は一人であり、お姉ちゃんも元々は護衛軍志望で祖父ししょうの下で修行をしてきた。


「それでは、頼みましたよ。紅葉さん。葉書さん。止水さん」

「はい」

「分かりました」

「もちろんです。御用の際はいつでもお呼び下さい」


 私達三人はその足で体育館へと足を運んだ。


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