表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act three 第三幕 死にたい少女の死ねない理由
138/370

樹教襲撃編 1話 沙羅の狙い1

 ーーそして、時は現在に戻る。


 私ーー筒美つつみ紅葉もみじは、死んだ筈の葉書はがきお姉ちゃんと共に現在の贄の漆我しつが沙羅しゃら様を守るべく、『焔』の本拠地に身を置いていた。


 そして、私が元贄である漆我しつがくれないだった頃の概要を葉書お姉ちゃんやに教えた所だった。


「私の過去に起こった出来事をまとめると、まず『贄になり樹の大本である人間に接触し、この世から樹を消し去ろうとしたがそれが失敗し、逆に感情生命体エスターに乗っ取られた』」

「それが私と会う前に会ったことよね」


 お姉ちゃんがうんうんと頷きながら答える。


「この時、私はお父様ーー『漆我しつが今様こんよう』だけでなく様々な人間を殺してしまった。そして、周りから疎まれる存在になるであろう私を祖父ししょうは名前を捨てさせ、母方であった筒美の家を本籍にしてそれから『筒美つつみ紅葉もみじ』の名前を名乗るようになった」


 今度は沙羅様や止水しすいさんに向けて話す。すると、止水さんが付け加えるように説明をする。


「だから、紅葉もみじさんは護衛軍に入るまでは筒美先生の監視下にいた。よって一年前僕を殺したと宣言した『樹教の教祖である漆我紅』は貴女では無いという事ですね」


 私の意図を読み取って彼は説明を付け加えてくれたのだった。正直、この誤解を解く為に一からこの長い話をしたのである。


「そう、樹教の教祖は私の名前を騙った偽物……そんな事ができるのはあの時命を逃れた自死欲タナトス感情生命体エスターだけだと思うのだけど……」

「つまり、紅ちゃん……いや紅葉さんの今までの行動は樹教と直接戦う力をつける為に行ったものなのですね?」


 沙羅様はおそらく私がDRAG(ドラッグ)により特異能力者エゴイストに戻った事を言っているのだろう。


「はい、そうなります。幸い祖父そふ青磁せいじ先生も協力してくれました。ですが……様々な思惑が飛び交っている為、衿華えりかちゃん……私の友達を巻き込んでしまいその果てに表情まで失ってしまった次第です」


 先日の『恐怖スキャーリィ』との闘い、アレも樹教が仕組んだものであると青磁先生は言っていた。


「詳しく教えて頂きありがとうございました。紅葉さん、お辛かったでしょう……この十年間」


 止水さんは先程私を『紅』の方の名前で読んだのを気にしているのか頭を下げた。


「頭をあげてください……それは姉や瑠璃るりくん、黄依きいちゃん衿華ちゃん達が必死に私を支えてくれたお陰です」

「……そういえば紅葉さんと瑠璃はすでに知り合いでしたね」


 彼はふと瑠璃くんについて尋ねてくる。


「紅葉さん……瑠璃の今の様子はどうですか?」

「貴方が何故瑠璃くんを……?」


 そういえば、そうだった。『止水題』の名前をあちこちで聞き過ぎて誰と誰が知り合いなのか分からない状態だった。


「あぁ……瑠璃は僕の妻の弟ですよ」

「妻というと……瑠璃くんの双子の姉のすいちゃんですか?」

「いえいえ、色絵家には青磁の上にもう一人紫苑しおんという姉がいるのですよ。彼女が私の妻です」


 思い出した。旦那が死んでヒステリックを起こした結果瑠璃くんを家の中に閉じ込めているという例の姉か。


「なるほど、そういう繋がりがあったのですね。瑠璃くんなら今は護衛軍に入る為の試験を受けているんじゃないですかね?」

「そうですか……良かった……きっと彼も紅葉さんに会って変わったのでしょう。もし瑠璃が貴女の部下になったら可愛がってあげて下さい」

「はい、勿論です」


 私は頷いて答える。


「それで、紅葉ちゃんの過去に何があったのかは詳しくは分かったのだけど何で沙羅様は私や止水さんを生き返らせて、紅葉ちゃんをここに呼んだんですか?」


 葉書お姉ちゃんが沙羅様に首を傾げながら伝えた。最初は彼女の代わりに贄をもう一度やって欲しいと頼まれると思ったのだけどどうやらそうではないらしい。


「……皆さまはもう紅蓮ぐれん兄様にはお会いしたんですよね?」


 唐突に出てきた彼の名前。


「はい、確かよく分からない特異能力エゴを持って……」

「そうです、今は兄様も特異能力者エゴイストとして覚醒をしたのです。ですから、彼は漆我家の権力とその力を使ってこの『焔』という組織を立ち上げました」


 建前上『焔』が社会的弱者への平等を掲げながら、護衛軍に反対し贄の制度に反論しているのは確実に紅蓮の思惑なのだろう。


「そう、彼は私が贄を辞めれるようにするためだけにこの組織を作ったのです。とても厄介です。でも、彼の特異能力エゴは私が見たところ漆我家の『物質の消滅』の特異能力エゴの最上位系だと思われます」


 なるほど、だからあの炎は感情生命体エスターを燃やすように消滅させ灰すら残さなかったのか。


「ですから、私は来るべき樹教との決戦の日迄に紅蓮兄様を護衛軍の味方にし、まともに闘えるように訓練させて欲しいのです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ