表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act two 第二幕 恐怖と喪失。そして、憧れ。
109/370

スキャーリィ編 42話 婢僕3

 特異能力エゴを再び発動させ、父さんを鞄にしまい、母さんを鞄から出す。


「『死体人形マリオネットコープス』ーー何度も起こして悪い……母さん、あの餓鬼の元へ頼む」


 すると、母さんの口元が少しだけ緩み、言葉を発した。


「『絶対追跡アンコンディショナルチェイス』ーー」


 そして浮く体と共に、踏陰ふみかげ蘇芳すおうの元へ瞬時に連れて行かれる。


「ありがとう母さん、またすぐに呼ぶからな」


 母さんが鞄の中に入ると同時に、先程作戦を伝え終えた踏陰が此方に話しかけてくる。


「どうした、白夜はくや

「奴から出た婢僕サーバントの正体がわかった」

「……? さっき、カナメが切り取った触手から出た奴の話か? あれなら力も普通の人間以下だし処理は後にしておいても良いとは思うが……?」


 首を傾げながら此方の意図を測ろうと顔を見てくる。


「まさか、エリカが婢僕サーバント化していたのか……?」


 これだけしか伝えていないのに、察する能力が高いのかすぐに近い所まで答えを導き出す。


「いや、違う。俺も最初は最悪のパターンとしてそれを考えていた。だが……婢僕サーバントは喰われた人間の成れの果てだけじゃなかった」

「……どういう事だ?」

婢僕サーバントは喰われた人間を強制的に孕ませて、出来た不完全な感情生命体エスターだ」


 それを言った瞬間、彼女は特異能力エゴを発動させる。


「つまり、ハクヤがさっき殺していたのはエリカと『恐怖スキャーリィ』との間に出来た子供とでも言いたいんだなッ⁉︎ そして、そいつらはエリカの特異能力エゴを受け継いでいる……そういう事だろッ⁉︎」

「あぁ……胸糞悪いなんてレベルの話じゃない……下衆もここまで来ると怒りすら湧いてくる。どうする……? 俺は直ぐにでも奴等を皆殺しにしようと思うのだが」


 ふきの身に起こった事を考えると、怒りが治らない。あんな生物の存在を許したくないほどに、怒りという感情が湧いてくる。


「当たり前だ……! だが、落ち着けよ……ハクヤ。そんな婢僕サーバントの存在が有るということは、可能性として、エリカが生きているかもしれないッ!」


 酷い話だが、陵辱され、犯され、それでも尚『恐怖スキャーリィ』の腹の中で、只『婢僕サーバント』を産むためだけに生かされているという可能性もあるのか……


「……! そうか……だが、あいつ自身はもう、DRAG(ドラッグ)を使ったんだろ? 俺たちが見つけたとしてももう、感情生命体エスター化は……」

「免れていないんだろうな……」


 手を悔しそうに握り込みながら彼女は続ける。


「誰にも言うなよ……この件は私とハクヤで片付ける……そうしなきゃ、モミジやキイがどうなるか……」

「分かってるに決まってんだろッ⁉︎ これ以上あいつらに背負わせて何になるッ⁉︎」

「そうだな……いくぞ、ハクヤ」


 踏陰と分かれて、目に付いた婢僕サーバントを一人残さず、殺していく。


 殺していく度に、蕗と同じ『痛覚支配ペインハッカー』によって痛みに浸されていく身体。中には殺しても痛みも生じない婢僕サーバントも居たが、それもまた別の喰われた人間の成れの果てか、子供なのだろう。


 触手から出てきた8体の婢僕サーバントを殺し終え、水仙すいせんの元へ行く。


「白夜さんっ! 何かありましたの?」

「何も無かった……只暇潰しに、婢僕サーバントを殺しに回っていただけだ……」

「……そうですのね」


 黙って彼女は俯いた。


「そろそろ、お前の特異能力エゴが必要になってくる時間じゃ無いのか?」

「えぇ……先程、天照てんしょう大将補とところかなめ一佐と霧咲きりさきさんによって『恐怖スキャーリィ』が空へと投げられましたわ」


 空を見上げると、ギリギリ視界に入るくらいの大きさで、『恐怖スキャーリィ』の肉塊らしき物体が降ってくるのが分かる。


「そうか……じゃあ、お前もあそこに行くぞ」

「えぇ……お疲れの所悪いですが、お願いしますわ」

「『死体人形マリオネットコープス』ーー母さん、奴を死喰い(タナトス)の樹に吊るすぞ」


 そのまま、俺たちは上空へと飛んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ