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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act two 第二幕 恐怖と喪失。そして、憧れ。
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スキャーリィ編 39話 第二戦4

「……分かってるよ。少なくとも私にはここで死ねない理由が沢山あるから」

「そうか……それならいい。あと、もう一つ」


 蘇芳すおうちゃんは髪の毛を弄りながら、私の方を見て言う。


「すまなかった……あの時……モミジがエリカのDRAG(ドラッグ)を見せた時、お前の気持ちも考えずにテルテルさんと一緒にお前を責め立てた事」

「いいよ、別にそんな事。私が二人の立場だったら、有無も言わさず殴ってる。それをしなかっただけ、二人は凄いよ」


 私は無表情で言う。そう、私はもうこの顔しかできないのだ。だから、どれだけこの言葉に私の気持ちが詰まっていようとも、それは無に帰すのだ。


「もう、お前に『笑え』なんて誰も言えないな……すまない忘れてくれ。あぁ……それと最後に一つ先輩からアドバイスするとすれば『気張れよ』」


 私は見た目がおよそ12歳程の少女にそれを言われてしまったのだった。


「そうだね」


 彼女はその言葉を吐き終えた後、現在後衛にいる、薔薇ばらちゃん、中衛にいる白夜はくやくんやそこから遠距離攻撃を繰り出している黄依きいちゃんと天照てんしょうさんに作戦の開始を告げに行った。


 その、瞬間だった。先程、所要がもぎ取った8つの触手の模様が動き脈動を始め、凹んでいた顔の部分が押し出されるようにズポッという音を出しながら出てきたのに気付いた。


婢僕サーバント……」


 そう、感情生命体エスターはある程度、上位の種類になると、喰らった人間を自分色の感情生命体エスターに変えしもべとして操る能力をも持つ。そうして、被害者となった人間は婢僕サーバントと呼ばれ、あのように召喚される。


 だがしかし、婢僕サーバントを使役させる力を使うのにも、感情生命体エスターの『人の感情を吸収して生命活動を維持している』という生態を考えると、いくつかのリスクが生じる。


 人間でも同じだが、数が増えれば増えるほどらいわゆる一人あたりの『食料』という物は少なからず減っていく。その為、婢僕サーバントの使役はある意味で言うとリスクの高い行動である。


 だから、基本的に感情生命体エスター婢僕サーバントを使役させる場合には大きく分けるの二つ程の物がある。


 一つ目は、最初から婢僕サーバントを使役している場合。これは、婢僕サーバントが戦闘力で感情生命体エスターに匹敵する程の力を持っていたり、それ以上の戦闘力を持っている時。つまりは、感情生命体エスターの基本戦力として考えられている場合に限る話。


 逆に二つ目は、危機に瀕した際に急に婢僕サーバントを出してくる場合。これは単純で、命の危機を感じ少しでも抗おうとした結果、戦力にもならないような婢僕サーバントを時間稼ぎとして出してくる時。つまりは、ただの壁として出す場合に限る。


 今回の場合、『恐怖スキャーリィ』は最初から、婢僕サーバントを出していなかった為、後者の場合だろう。ならば、この場はここに居る人で充分だ。


「筒美流舞空術序ノ項ーー『風花ふうか』」


 私は青磁先生の作戦を実行する為に、その婢僕サーバントが出てきている光景を尻目に上へと飛んだ。


 ーー『恐怖スキャーリィ』から這い出たその婢僕サーバントの正体を一生知ることないままで……


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