スキャーリィ編 33話 特異能力6
「嘘でしょ……」
「まさか霧咲……お前が噂に聴く二つ持ちだったとはな……」
「センセイッ! つまり、モミジの許容出来た特異能力は二つまでって事か……⁉︎」
相変わらず視界がボヤけて、何も見えない。というか、感覚器官が全て薄れて言っているような……
「いや……分からない……それだったら、何かしら身体の構造の方に変化が出る筈だ……! だが実際は何も変化していないんだろ?」
「あぁ……そうだ」
「だから、コイツはたった今、身体の機能が不全になっただけの可能性もある……ッ! 紅葉ッ! 聞こえているかッ⁉︎ もし聞こえたなら、筒美流奥義……それも終ノ項を使ってでも感覚を研ぎ澄ませッ!」
……筒美流奥義対人術ーー終ノ項『鳥語花香』ッッ!!
だがしかし、その瞬間全身に電流を流されたような痛みが突き抜ける。
「ガァァァアアアアアアアッッッ!」
身体全身が跳ねたような衝撃と枯れそうな程叫ぼうとする喉。そして、ジタバタと暴れる身体。
「紅葉ッ! 踏陰一佐ッ! 拘束してくださいッ! これじゃ、血流の操作に支障が……!」
「あぁ……! 『陰影舞踏』ーー拘束しろッ!」
手や脚を捕まえるひんやりとした手。そして、身体がより暴れようとするがそれ以上の力で、私は抑えつけられる。
「ウゥゥゥ……」
「センセイッ! 今、モミジが暴れ出したのは筒美流奥義が原因かッ⁉︎」
「……あぁ、恐らくはだがな。それで、一連の症状はおそらく、紅葉の身体の許容を超えて出てきた蕗衿華の特異能力の暴走……筒美流奥義の発動によって全神経が細胞と連結し、蕗衿華の細胞の支配下に入った瞬間それが表立って『痛み』として出てきた……」
その言葉通り、今でも私の身体全身が痛みに包まれ、気を抜けば意識が持っていかれそうな感覚と全身が凍えるように寒くなってくる。
「おそらく、まだ俺たちの声は紅葉に聞こえている筈……! 紅葉ッ! その症状を起こしていそうな大元をどこでも良いから身体に馴染ませろッ! お前ならそれが出来る筈だッ!」
激痛の中、全神経を集中させる。
「バラ、キイ……二人とも大丈夫か⁉︎」
「えぇ……これくらい筒美さんに比べればちょちょいのちょいですわよ……!」
「同意見ね! だけど、紅葉の体温がちょっとずつ低下してきた……!」
すると、一瞬で温かいお風呂に入ったような安心感が私を包んだ。
「『環境操作』……! そういう事は私に任せなさい。青磁先生? 紅葉ちゃんは助かる可能性はあるのね?」
「あぁ……そうだ天照大将補さんよ……だがそれもコイツ次第だ。流石に五体満足かどうかは保証はできないがなッ!」
全身に駆け巡っていた痛みがだんだん頭部へ収束していく。
集まった……これが衿華ちゃんの特異能力の……
大丈夫。私なら出来る。
『おいで……衿華ちゃん……』
私はすぐさま、それを受け入れる。
そしてすぐに馴染んでいく、微粒子達。
「収まったのか……?」
「呼吸……問題なさそうですわよ!」
「血もちゃんと正常の流れに戻ってるッ!」
「その傷、とりあえず血を固めておきましょうか」
手首だけひんやりとした感覚になり、そこだけ血が固まったのだろう。
だがしかし、意識だけがどんどん落ちていく。
「……どうやら急場は凌げたようだな……ちゃんとDRAGが定着したみたいだ」
「はぁ〜……全く、こんな焦ったの久々だよ……」
「紅葉……眠るみたいよ」
「たく、反省書ものだな、モミジには色々と聞かなきゃいけないこともあるからな」
何か文章書かされるのか……ははっ嫌だなぁ……
まぁでも……死ぬよりはマシか……
そして、暗闇の底の底へと自意識が沈んでいった。