お節介 二
とうとう来てしまった。決着の日が………。
「よし。お前らが楽しみしていたテストを返すぞ」
油木先生はケラケラっと笑って言ってるが、クラス内はどよ~~~んっとした空気で埋めつくされている。
次々にテストを貰って行き、絶望する者や、まぁまぁっと言った感じになる者や、点数が上がって喜ぶ者が続出してる。
その中に絶望の顔をしてる充に、渋い顔をしてる美海、浩司と俺はまだ来ていないので、結果が楽しみだ。
「冴川綾人」
俺が呼ばれ、先生のもとにテストを取りに行く。
「綾人。お前は文句が言えないのが残念だ」
そう言って渡されたテスト用紙は、
数学百点。
国語百点。
英語百点。
社会九十八点。
理科百点。
社会は一つ間違えて九十八点だが、それ以外は満点だ。
俺は今は心中でガッツポーズを取って大喜びした。
「たっく。お前に文句言えると思ったが。社会以外満点を取る奴に文句を言ったら俺がどやされるじゃねーか!」
先生は悔しそうな顔で逆ギレをしてくる。
おい、先生がそれで良いのか。
俺は苦笑いをして席に戻り、戻ると充が前のめりになって俺のテストを覗いて「おぉ! 勝ち確じゃん!」っと喜びを見せた。
「おい、充? お前はどうなんだ?」
そして充が見せてきたテスト結果は、
数学七十四点。
国語九十五点。
英語六十点。
社会八十五点。
理科四十点。
「おい! 一つ赤点ギリギリがあるじゃねーか! 何で理科だけこんなに低いんだ!」
っと、ツッコミを入れたら、「理科は放棄した!」っと決め顔で言ってきたので一発殴った。
☆
物作り部の部室にて、緊張が走る瞬間が訪れていた。
(ここまで、二勝二敗………勝てる!)
(ここまで、二勝二勝………ヤバいかな………)
今は綾人対ミールで、一斉にテスト結果を出した。
「えっと、ミールは数学九十五点、国語九十二点。英語百点。社会八十七点。理科四十点」
「綾人は!? おいおい、社会以外百点かよ」
それを聞いたミールは地面に力無く座り込んでしまい。
綾人はチームメンバーと手を合わせて「いえーい!」っと喜んでいた。
「嘘、今回は自信あったのに、綾人の化け物」
「人を化け物呼ばわりとは酷いな。で、負けたお前らは命令を一つ聞くんだっけか?」
綾人は悪魔の様な笑顔で負けた女子を見て。
それに怯える様に体を竦める女子達。
この命令権は勝った俺達一人一人にある。
まぁ、一人が負けた一人に命令するとそいうは除外されるので彼女彼氏の関係が命令を下すと思う。
「まぁ、俺は特に命令すること無いから、今回はパスしてやる」
「え? 良いの? 好き放題出来るんだよ? しないの?」
こいつ、何を言ってんだ。友達の彼女に手を出し何が楽しいんだ。俺はそれより友情を大切にするわ。
「はぁ」
綾人は溜め息をついて、チラッとミールを見てまた溜め息をついた。
「な!? 綾人! 今の何! 何で見て溜め息をつくの!」
「さぁな。後お前らもう勝負終わったんだから出てけ」
激怒してるミールを放って置き、さっきから部室で寛いでる浩司達に向かって言った。
「俺はここの部員だが?」
「俺も!」
「そして俺もだ!」
くっ、確かにこいつらは部員だからここに居る意味はあるが、殆ど幽霊部員の癖に………………。
「はぁ。作業するから出てってくれないか?」
まだ、菖蒲先生用のウェディングドレスを作ってる途中だから一人で静かにやりたい。
「今度はどんなの作ってんだ?」
「あー。それは終業式でのお楽しみだ」
その場の全員は首を傾げて自信満々にしてる綾人を不思議そうに見ていた。
☆
「油木先生。話があるんですけど」
「ん? なんだ?」
外で煙草を吸っていた油木先生の横浜に座り。
「先生。菖蒲先生は好きなんですよね?」
「なんだ、いきなり………………………。まぁ、良い人は良い人だよな」
「先生。一つ話聞いてくれますか?」
綾人がそう聞くと油木はチラッと綾人を見て「おう」っと答えた。
「最低な奴が居たんです。そいつは見返したい意地とその場の勢いで女子にコクる最低な野郎でしてね。学校内では変なあだ名がつけられたり、周りには彼女を持つ友達ばかり、ただ見返したかった為に女子に告白をする糞最低な奴なんですよ」
綾人はその時に一切、自分だとは言わず自分がやってきた最低な事を洗いざらい油木に話し。
それを聞いた油木は………。
「まぁ、本当に最低で嫌な奴だな! とんだチャラ男に浮気性の奴だな!」
ケラケラ笑いながら言う油木。
綾人は何も言わない。本当の事だし、言い返したらそれは反省してないことになる。
やっぱり誰でもそう思うよな。分かってた。
分かってた………分かってたけど、やっぱり少し悔しい。
言い返せないのが少し悔しい………だけど、本当の事で俺が悪いから何も言えない。
油木はケラケラ笑い終わるとチラッと綾人を見る。
綾人は強く手を握っており、少し涙目になっていた。
「………………まぁ、そいつは反省してるんだろ?」
「さぁ、分かりません。今は辞めて自分の夢を追い掛けていますが、それで反省になるのはどうなのかなってそいつは言ってましたけどね」
「反省だろ。それをちゃんと悔みに悔やんで、後悔しまくった証があるならそれは反省だ」
「先生………何カッコつけてるんですか?」
「お前なぁ! 俺がせっかく慰めてやったのにこいつが!」
頭をくしゃくしゃっと強く荒く髪をもみくちゃにされ。
「ふっ、ははははははははは!」
「ぷっ! あははははははは!」
そして、二人で意味も無く笑い合い。
それが暫く続くと二人は冷静になったのか先程まで大きな声で笑っていたのは辞め、静かになった。
「はぁ。先生、終業式に思い切って菖蒲先生に答えを返してあげたらどうですか?」
(答えか………。確かに未だに待たせてるのは悪いし、何で終業式なのかは判らないが、多分それぐらいの頃の方が良いと俺も思うし………生徒に押されて告白するとか教師としては駄目だな)
「よし。終業式の日に答えを菖蒲先生に返すわ。ありがとうな、綾人」
「いえ。こちらこそありがとうございました」
二人は立ち上り、お互いに顔を合わせるとまたクスクスっと笑い、教室に帰って行った。
☆
教室に戻ると綾人は肘を机に付けて手で顔を支えるポーズをとっていた。
あの話を通して先生に言いたかったことは、
そいつみたいに悔やんで後悔しない様にっと上から目線な言い方だが、俺はどうしても伝えたかった。
だけど、俺が先生に教わってしまったんだけどな。
俺は確かにバカなことをした。最低で他人にどう言われ様が言い返せないことをした。
俺は反省をして後悔もしてる………………。いや、してない。
していたらたまに充達を見ていて「俺もああなれたらな」っと羨ましく思ってしまう。
反省をしてるなら恋人をまた作りたいなんて思わないはず。
俺は未だに反省はして無かった。
罪滅ぼしとはいかないけど、俺はとあることをすると決めた。
人の恋を応援する。
もちろん、これは自己満足で俺が勝手にすることだ。
目の前でイチャつかれるのはごめんだが、それが多分出来る俺自身を許せる唯一の事だと思う。
自分はしない。だけど、人の恋は応援する。
これしかないな。
「よし。部室に行こっと」
俺は早速、菖蒲先生のウェディングドレスを作ろうと席を立ち上がったら充に声をかけられた。
「綾人。何処に行くんだ? もう授業始まるぞ?」
充にそう言われ、壁に掛けてある時計を見たら後数秒で始まるところだったので俺は席に座り直した。
これを呼んでくださってる方がいらっしゃるなら自分の投稿作品「甘え上手な間宮君」も読んでくださると嬉しいです。
下にURLがあります。