98 草のある洞窟
ラージバットの住処はサイズだけを見ると、住処の洞窟の側にある水辺と同じくらいの広さになっていた。
水辺と違うのは、水辺は右側に先が見えないくらい奥まで続いているが、ラージバットの住処はどちらかというと四角になっていると言えた。
野球のグラウンドと似たような感じだ。
暗闇の洞窟から、中央を斜めに進むと正面にギィの卵が置いてあった場所にたどり着く。
ギィの卵が置いてあった場所は少しくぼんで中央からは少し見えにくくなっていた。
そして、自分達は、今、そのギィの卵のおいてあった場所にいた。
「師匠!この場所の正面に別の洞窟の入り口が見えるっすよ!」
ギィが新しい洞窟の入り口を発見したとでもいうように、嬉しそうに口に出していた。
初めてギィの卵を見つけた時に感じたことだが、新しい洞窟の入り口はラージバットのいる場所からは少し見えにくいようになっていた。
しかし、卵の場所から反対を向いて戻ろうとすると、正面に入り口が見えるようになっていた。
正面にある入り口は、少し暗くなっていてラージバットのいる場所からは見落としてしまう構造になっていたのだ。
「ギィにアリス!きっとここから先に進むとラクーン洞窟地下2階行けるはずだ。これまでに見たことのないモンスターがいる可能性がある。ただし、スノウラビットなど寒冷地系統のモンスターがいることは分かっている。」
「回収部隊のテト隊長たちが話していたモンスターっすね!」
ギィが回収部隊のテト隊長が運んでいたモンスターの事を思い出していた。
「そうだ!そのスノウラビットだ!運ばれている状態を見ただけだから、動いている状態はわからないし、どんな魔法を使ってくるかもわからない。ただ、見た目からスピードがありそうなのでその点は注意が必要だと思う。まあ、こちらにはギィもアリスもいるからスピード系統のモンスターの対処は頼むぞ。」
まあ、自分のウルトラソニックに、ギィの高速移動、それにアリスの麻痺弾と動体視力があれば、小型モンスターであれば、スピードがあっても対処は可能だろう。
ただ、かならず大型モンスターの存在があるはずだから、その点には気を配る必要があるな。
「私の足は頼りになるっすよ!師匠!」
「師匠のウルトラソニックと私の麻痺弾を併用すれば何とか対処できると思いますわね!」
ギィの明るさは、どんな時でも気持ちを軽くしてくれる。
裏を返せば、緊張感に欠ける部分もあるが、アリスが真面目なので、ギィとアリスが一緒にいると丁度いいな。
「先頭は防御力の高い自分が進む、だから、後ろから注意してきてくれ!」
自分とギィとアリスはゆっくりと進み、卵の場所からまっすぐに次の洞窟の入り口に入って行った。
入り口を越えると、右側にまっすぐ進む洞窟と左側に幾分薄暗くなり少し小さな(といっても、どちらも住処の洞窟から水辺に向かう道と同じくらいのサイズではあったのだが)洞窟の入り口があった。
どちらに進むか迷ったが、まっすぐ続いている右側の洞窟を進むことに決めた。
「右側と左側でどちらが正解の洞窟かはわからない。だから、横にそれる左側よりまっすぐに進んでいる右側の洞窟にしようと思う。それでいいか?」
ギィもアリスも緊張しているのが伝わってきていた。
それゆえ、頭をコクリと下げてうなずいただけだった。
ギィとアリスの意思を確認できたので、そのまま、ゆっくりと右側の洞窟を進んだ。
しばらく進むと、予想に反して、少し温かく、わずかであるがじめっとした感覚になっていった。
自分だけかと思い、ギィとアリスにも聞いてみた。
「なあ、なんだか温かくなっていると思わないか?」
「そうですわ、ラクーン洞窟地下2階は寒冷地と聞いていたから寒いと思っていましたの、ですが違いましたわね」
「ちょっとだけっすね!少しべたべたした感じが体にまとわりつくような気がするっすね!」
ギィもアリスもやはり同じように感じていた。
想定と違うということは、予想外の状況になりやすいので油断しないように周りを確認してみた。
ラージバットの住処は地面が岩場になっていて、ごつごつした印象だった。
しかし、ここには粘土質っぽい土壌になっていた。
そして、壁際にはわずかではあるが草が生えていた。
水辺にイエローサンライズのような大きな花があるから、草が生えていることに問題はないはずだが、温度と湿度が今までの場所にない事に、新しいモンスターの存在を想定した。
いずれにしても、自分の気配察知に反応がない以上サーチをかけても意味がないので、しばらくそのまま進む事にした。
先に進めば進むほど、温度と湿度は上昇していった。
そして、草の高さも上がり70㎝~80㎝位になっていた。
「草むらが茂ってきたな。少し移動しにくくないか?」
自分は蛇なので、草むらであっても特に問題なく移動できたが、歩いて移動する必要があるギィやアリスは歩きにくいのではないかと思った。
「これくらいの高さだったとしても、歩くだけならまだ問題はないっす、でも、このべたべたした感じが嫌っすね。それと、何か臭くないっすか?」
「私にとっては少し歩きにくいですの、ですが、今のスピードであれば大丈夫ですわ」
みんな歩きにくさを感じていたようだったが、ギィの臭いという発言に、そういわれると何か臭いような気がした。
少し、嫌な雰囲気になってきている。
注意して進もうと思った瞬間、自分の気配察知に反応があった。




