92 ギィの対戦相手は自分!?
予定していた模擬戦が予想外に早く終了したので、余った時間をどうするか考えていなかった。
ギィはダメージもほとんど受けていないので、・・・麻痺させられただけなので・・・、この後の戦闘も問題はなかったが、アリスは弱体化後の訓練期間ということもあり、予想以上にダメージの影響が大きかった。
模擬戦に準備していた1日だったが、たったの2戦で終了してしまったので、空いた時間をどうするかギィとアリスに聞いてみることにした。
「ギィ!アリス!今日は1日模擬戦をする予定だったが、予想以上に早く終了したので、自分としては反省会をしたらいいのではないかと思うんだが・・・。他に何かしたいことはあるか?」
「模擬戦をしたことだけでも、色々と分かったことがありますの。それを踏まえて考えや気が付いたことを話し合うのはとても良いことだと思いますわ。私は師匠に賛成ですわ!」
アリスは反省会の有効性を即座に理解していたみたいで、すぐに納得してくれた。
しかし、ギィは何かもじもじしてはっきりと決められない様子だった。
「どうした?ギィ!お前はどうしたいんだ?」
「え~っと!あのぉ~!そのぉ~!私は・・・ししょ・・・たいっ・・・す」
ギィは何か言いたいことがあるようだけど、何かに気を使っているせいかはっきりと答えられないでいた。
「ギィ!はっきり言わないんならば、反省会で決定にするぞ!」
「はいっす!お願いがあるっす!師匠!ギィは師匠と模擬戦がしたいっす!」
ギィは予想の斜め上をゆく提案をしてきた。
自分も模擬戦はギィとアリスがするもので、自分は確認するだけだと思い込んでいた。
それに、ギィがそんな事を言い出すなんて全く考えられなかった。
確かに、現在の自分とギィの強さの比較をするのは面白いと思ったが、ギィやアリスと戦うのはどうしても気が引けていた。
それは、高校生の自分が小学生の女子と戦うような気持になるからだった。
まあ、実際は高校生でもなければ、小学生でもないのだが、どうしてもイメージしてしまうのだ。
自分はしばらく考え込んでいたが、ギィの問に対して返事を出さないといけないので、一つの提案をしてみた。
「ギィも知っていると思うが、自分の攻撃スタイルは、遠距離魔法で攻撃・牽制そして、近づくことが出来たら、ウルトラソニックで素早さをダウンさせる。その状態で、牙、巻き付き、パラライズニードルで麻痺させて倒してきた」
ギィはちゃんとわかっていたので、素直にうなずいていた。
「そうすると、自分が魔法をすべて使う条件にすると、ウルトラソニックで素早さを下げて、パラライズニードルで麻痺させて、あとはアリスと一緒だ!わかるな!」
ギィは自分にも何か対応できる方法があるはずだと考えているようだったが、何も浮かばなかったようだ。
「わかるっす!でも・・・。それでも・・・師匠と戦ってみたいっす」
「わかった!それなら、自分は魔法を使わない!物理攻撃のみでギィと対峙する。それでどうだ?」
「魔法無しの師匠と戦うっすか?・・・・・それでもいいっす!でも、もしも自分がそんな師匠に勝ったなら、魔法アリの師匠と勝負するっすよ!」
ギィは負ける気は全くないといった目線を向けてきた。
アリスにすら、何度も負けているというのに・・・。
何処から、その自信が来るのだろう・・・。
「わかった!わかった!ギィが自分に勝ったなら、その時はハンデなしで勝負な!なら、アリス!開始の合図をお願いしてもいいか?」
「開始の合図は任せてもらってよろしいですわ。ですが、師匠!ギィちゃんはスピードだけは師匠よりも 早いと思いますの。だから、魔法無しでも本当に大丈夫ですの?」
ギィとアリスの最後の模擬戦を見ていたから、ギィのスピードの速さを実感していた。
だから、素早さだけで言えば、自分よりも早いのは分かっていた。
しかし、戦闘経験で言えば、中学生だったころにやり込んだMMORPGでの経験を生かすことができると自分の中で何となく自信のようなものとして残っていた。
「戦いには素早さやスピードが重要なのは分かっている。しかし、それだけでは決まらないということも十分知っているからな!任せておけ!!」
「わかりましたわ!師匠!ギィちゃんは本当に早いですから、お気をつけて!」
アリスはギィのスピードについて何度も念を押してきた。
対戦して、ギィのスピードの脅威を直接肌で感じていたからかもしれなかった。
「師匠!それにギィちゃん!準備はいいですの?」
「いいぞ!」
「準備万端だよ!」
「・・・・・始め!」
沈黙した住処の洞窟の中にアリスの声がひときわ高く響いた。
ギィにとって自分はどう映っているのだろう。
逆に、自分に対してギィが敵対したときはどう感じるんだろう
この模擬戦でそのことがわかるかもしれないと思った。
先手はギィにさせようと思っていたら、ギィもそのつもりだったようで、いきなり高速移動を始めるのではなく、一度、自分の目を見て頭を下げた。




