90 模擬戦2日目
「模擬戦2日目・・・始め!」
朝の特訓がどう反映されるか見ものだな。
最初に攻撃をするのはどっちからだろう。
予想はギィが最初に動き出すだろうと思うが、アリスが初戦を狙って速攻で麻痺弾を打つ可能性も否めない。
そう思ってみていると、始めの合図を出したにも拘わらず、ギィもアリスも動く気配がなかった。
アリスはギィが最初に動くと踏んでいたようだ!
そのため、ギィが動かないから戸惑っているようだ。
それにしても、ギィはなんで動かないんだ!
何を狙っているんだろうか。
ギィは大きく深呼吸をしているようだった。
速攻で攻めるために呼吸を整えているのだろうか?
スタート開始からいきなり膠着状態に入っていた。
ギィが何を考えているのかわからないので、少し近づいてみることにした。
アリスは左右にゆっくりと移動して、ギィのスピードにいつでも対応できるように警戒していた。
そんなアリスを横目に、ギィの方に近づいてギィの様子を確認した。
「こら!ギィ!寝るんじゃないっ!」
ギィは呼吸を整えているのではなく、寝息を立てていたのだ。
自分の声に、ギィもアリスも驚いでビクンッと体を震わせていた。
しかし、警戒していたアリスの動きが速く、ギィに対して麻痺弾を連射した。
パシュゥッ!
パシュゥッ!
パシュゥッ!
「あっ!うっ!」
ギィは視点が会わない状態で完全麻痺状態になっていた。
アリスはあきれた顔で、ギィの近くまでゆき、昨日と同じように抱えて、壁に向かってポイッをして、いきなり初戦はアリスの勝利で始まった。
「ギィちゃん!何をしているんですの?勝負は始まっていますわよ!」
「アリスちゃ~ん!ごめんなさ~ぃ!今朝早く起きすぎて、もう眠くて眠くて、始まれば目が覚めるかと思ったけど、そのまま寝ちゃってた。えへっ!!」
ギィは麻痺状態の為、動けずひっくり返ったまま、申し訳なさそうにアリスに謝っていた。
「ギィちゃん!とにかく本日の1勝目は私のものですわ」
アリスはどうでもいいようにサラッとギィに伝えていた。
「ギィちゃん!次は本気を出してほしいですわ」
「はいぃ!すみません!頑張ります!!」
そのまま、麻痺が回復されるのを待って、模擬戦2日目の2回戦が始まろうとしていた。
ギィの麻痺が回復して、準備が出来てたので、ギィもアリスも開始位置まで並びなおした。
準備が整っているようだったので、さっさと始めることにした。
「ギィ!次は寝るなよっ!」
ギィに気合を入れるために、軽く挑発してみた。
「すんませんっした。師匠!」
ギィはこちらを向いて、大きく頭を下げていた。
ギィが元の位置について、アリスに視線を合わせるのを待ってから開始の合図を入れた。
「・・・・・・始めっ!」
今度は、ギィが速攻で前進した。
かなりのスピードで前進しているようだったので、高速移動をしているのかと思えるくらいだったが、予備動作が見えなかったので、普通に前進をしたのだろう。
もともと、進化した後のギィは通常のスピードですらかなり速く進むことが出来るようになっていた。
ギィの特訓は移動中に、アリスの麻痺弾を避けることにあるので、高速移動をする必要がなかったのだろう。
それが、かえってスタートのスピードを速いものとしていた。
アリスもそのスピードに反応して麻痺弾をとばしていたが、ギィは射線を確認して、サイドジャンプで麻痺弾をかわしていた。
ギィは麻痺弾をサイドジャンプでかわした後、前進しようとアリスの方へ顔を上げて、足を前に出そうとすると、すでにアリスから麻痺弾が発射されようとしていた為、前進をあきらめ、もう一度サイドステップで麻痺弾をかわすことにした。
アリスの麻痺弾は一見すると、ギィの前進をはばむように発射されているように見えたが、よく見ると常に右よりに狙っているような気がした。
さすがにそこまで細かく狙うのは難しいだろうと思うことにした。
ギィのスピードが速く、サイドジャンプの後に少しずつ前進しているようだった。
ギィもサイドジャンプ自体、斜め前に飛ぶことで、そこでも前進しているようだった。
アリスの麻痺弾が5発目をかぞえる時になると、ギィは壁にギリギリの位置に追いやられていた。
やはり、アリスは麻痺弾を右よりに発射することで、ギィのジャンプ方向を誘導していたようだった。
さすがアリスだな!最初から狙っていたのかもしれないなぁ。
ギィはすでに壁ギリギリの為、次のアリスの麻痺弾をサイドジャンプでよけるのは厳しいだろうと思われた。
そして、アリスの麻痺弾が同様にギィの右寄りを狙って放たれた。
ギィにサイドジャンプでよけるスペースはなかった。
このまま1発位麻痺弾を受けるのは仕方ないだろう。
麻痺弾を受けて、何か攻撃する策があるのかもしれない。
そして、ギィは・・・飛んだっ!!!
そっちは・・・壁が・・・。
壁にあたると負けになるのを忘れたのか、ギィ!!
ギィは壁に向かって体が近づいていった。
そして、体が壁にあたる、ほぼ自爆に近い形でアリスの勝利が決まるのか。
アリスを見ると、アリスも同じように思ったのか、攻撃態勢ではあったが、麻痺弾の追加での発射はされていなかった。
アリスも今回はギィの自爆で勝利だろうと予測しているのかもしれなかった。
そして、自分も休憩の後に3戦目になるなと気を抜いていた。
しかし、ギィの動きが予想とは違ったのだ。
ギィは壁にあたる直前に体を90度回転して、ひねることで、壁に足から突入した。
絶妙のタイミングで壁に足をつき、体全体と尻尾の回転を利用して、壁にぶつかる衝撃を流していた。
そうしないと、勢いのついた状態で足をついたとしても、そのまま、体が流されて、壁に激突してしまうのだ。
そして、流した慣性エネルギーを足に貯めて、ギィはたまった慣性エネルギーを一気に壁に向かって放出していた。
自分もアリスも勝利を確信していた為、ギィの予想外の動きについていけなかった。
次の瞬間、壁にはギィの姿がなかったのだ。
先にギィを見つけたのはアリスだった。
ギィは壁を一蹴りすることで、住処の洞窟の中央よりも少し先まで飛んでいた。
そして、アリスが気が付いた時、ギィはすでに高速でアリスに向かって前進していた。
ギィは高速移動魔法を使っていたようだった。
アリスは必至でギィの動きに対応しようと最速で方向転換を行っていた。
しかし、方向転換までは間に合っていたが、その後に魔法の詠唱が間に合わない。
ギィは爪を構えて、アリスのすぐ前に迫っていた。




