78 超広範囲探知!?
「ラクーングレートリザードが来るのがいつもよりも早かったので、師匠様達がちょうど出られたすぐ後だったので、もしかしたらと・・・。ヒヤヒヤしてました。」
確かに自分の気配察知と移動スピードがなかったら、そして、決まった隠れる場所がなかった、本当にやばかったかもしれない。
「来るかもしれないと言うことがわかっていたので、自分たちも準備ができて、対応もできていました。しかし、急に現れた場合は、今回であればちょうどポイズンバットの討伐の最中だったかもしれない。討伐中だとすると、気づくのが遅れてしまう可能性もありました。その場合は非常に危険だったかもしれません。ただ、キルアント族はどうやって、ラクーングレートリザードが来るのがわかったのですか?」
自分の気配察知だと、せいぜい200~300メートル程度だろう。
しかし、キルアント族は朝からその兆候を知っていた。
何か特殊な探知が出来るのか、それとも、超広範囲に探知できる何かがあるのかだろう。
もしも、その能力を獲得出来たら、これから先に進むにあたってかなり有利な条件になると思われた。
「申し訳ありません。我ら門番は、ラクーングレートリザードが来るので、警戒と入り口の閉鎖のみの役割となっていますので詳しいことは分からないのです。」
まあ、門番にまで探知できる方法だとすると、キルアント族の探知能力は規格外になってしまうな。
これで、探知の方法が一般的なものではないということは分かった。
「メーベル女王様や近衛の方々だとわかるかもしれません。」
「そうですか・・・。お忙しいところ、色々教えていただきありがとうございます。」
「いえいえ、この程度の事であれば、いつでもお聞きください。師匠様!」
ハルナばあさんやカルナじいさんあたりに聞けばわかるかもしれないから、機会があれば聞いてみよう。
そう考えながら、そういえば北の商業地区の露店の店主のおいちゃんのところに行かないといけないことを思い出した。
そして、門番にお礼を言って、その場を離れた。
f 北の商業地区に向かう途中にある一般居住区へ、避難区域から戻ってくるキルアント達で、中央広場に向かう道はごった返していた。
「ギィ!キルアント達はこんなにたくさんいたんだな!」
「そうっすね!師匠!1,2,3,4,5,6、・・・・98、99、100 もう数えられない!!いっぱいいるっすね。」
「そうだな!一匹づつ数えていたら数えられないだろう。小さなキルアントの子供たちも含めると、軽く1000~2000匹位いるんじゃないのか?」
「ひょえぇぇ~~~!! それって100が何回分くらいっすか?」
「100を10回から20回くらいだぞ!」
「100を20回っすか!!! え~と・・・。100を数えて、それから100を数えて、それから100を数えて、え~とこれで100が3回で・・・。それから・・・。うひゃぁぁぁあ!! 頭使いすぎて目が回るっす。」
「まあ、そんなに細かく数えなくてもいいんじゃないのか。いっぱいいるでいいだろ!!」
「いっぱいるっすね!そうっすね!さすが師匠!頭も強いっすね!!」
まあそんなにたくさんの数をかぞえることなんて、この世界では必要がないから気にする必要ないし、100まで数えられるだけでも十分すぎるだろうと思った。
ギィは以外と頭も優秀なんだと実は感心していた。
中央広場まで進むのに、いつもの3倍くらいの時間がかかったが、中央広場まで到着するとキルアント達の数も減ってきていた。
そこから北の商業地区までは、スムーズに進むことが出来た。
逆にいつもよりも少ないのではないかと思ったくらいだ。
露店の店主のおいちゃんのところに到着するとおいちゃんは忙しくしていた。
「こんにちはおいちゃん。忙しそうですね。」
「そうなんだよ!蛇神さん。ラクーングレートリザードの避難で大騒ぎだったからね。」
おいちゃんは忙しそうにかたずけをしながら、困った顔で返事をしてきた。
「おいちゃん!聞いてもいいですか?」
「えっ!聞くのかい?」
あっ!聞いてもいいんだ!
「ラクーングレートリザードの避難は、定期的にあるのですか?」
「決まってないよ!だから、困るんだけどね! 100日だったり、50日だったりとその時々でバラバラだね。朝いきなり隊長さんがやってきて、避難するように言われるんだよ。まあ、この隠れ洞窟の事がばれたら、商売どころじゃなくなるからねぇ。」
やっぱり探知できる何かがあるに違いない。
周期的に判断している可能性もあったが、この点も違うことが判明した。
やっぱり、メーベル女王様や近衛の方たちに聞くほかに方法はないのかなぁ。
忙しそうだけど、ポイズパッドの丸焼きを頼めるかなと思い声をかけようとした。
「おう!ところで、蛇神さん!今日は何の用ですかい!」
おいちゃんは自分が何か頼みごとがあるって察してくれたのかな!やっぱり商売を生業としていると気が利くんだねぇ。
「はい!こないだ作ってもらったポイズパッドの丸焼きがおいしかったので、もう一度お願いしようと思い、ポイズンバットを2体持参したんですが・・・。」
「おっと!残念だが、今、ありみつを切らしてましてさぁ!同じものが作れないんですよ!」
ありみつが貴重なものと知っていたので、今日は念の為に、いただいたありみつを半分ほど持参していた。
「ありみつは貴重だから、もしかして、なかったらいけないと思って、自分が持っているありみつを半分ほど持参していますが、これでどうですか?」
「お~~!これこれ!これなら作れますよ!良かったですね!」
「では、こちらにポイズンバットを2体置いときますね。」
「2体分の丸焼きでいいですか?」
「いえ!1体はおいちゃんが使ってください。」
「蛇神さんは太っ腹だねぇ~~!こんな貴重なありみつを準備してもらったうえ、ポイズンバットを1体丸ごといただけるなんてねぇ。蛇神さんと知り合いになっていてよかったですよ!!では、こちらは明日の午後になりますが、いいですか?」
「明日の午後でちょうどいいです。おいしく作ってくださいね!!」
「そりゃ~もう!腕によりをかけてお造り致しやす!!まかせといて下さい。うちの超お得意様ですからね。はははっ!!」
陽気なおいちゃんのところを後にして、午後のポイズンバットの討伐までの時間を、この北の商業地区で過ごした。
昨日と同じように、連結荷物運びをしながら、近寄ってきた子供たちを背中に乗せて、北の商業地区をぐるぐると周った。
キルアントの子供たちを頭に乗せると、キルアントの親たちがキルアントトレイダーのコンサルさんのところに行くことになるといけないので、頭の上には乗せないようにした。
しかし、2周まわったところから、順番待ちの子供たちが並ぶようになった。
5周目に入ると、順番待ちの子供たちの最後尾がわからなくなり、ギィが近くの露店の店主から、赤い布をもらい、それを首に巻いて、最後尾の案内をしていた。
今日は時間もあったので、そのままぐるぐる回っていると、子供たちだけでなく、その子供たちを見る親たちや何事が起っているのかを思って、見に来た他のキルアント達であふれてしまっていた。
12周目で戻ってくると、そこにはキルアントトレイダーのコンサルさんがいた。
「蛇神様!子供たちがなにやらご迷惑をおかけしているようで、本当にすみません。」
「子供たちだけでなく、大人のキルアント達も喜んでもらって、嬉しいですよ。ギィも並んでいる子供たちと楽しそうに話をしたり、近くの露店の店主から何やらいろんなものをいただいて、喜んでいますし、ご覧ください。ギィの手やら足やら首やらに色んなかざりで飾られてきらびやかになってますもんね。」
そう言いながらも、キルアントトレイダーのコンサルさんの迷惑にならないように、頭の上に乗せるのを控えたはずが、結局、コンサルさんを煩わせる結果となってしまった。
「でも、軽い気持ちで、子供たちと遊んでいたら、大ごとになってしまい、お手を患われせてしまい巻いた。コンサルさん、すみません。」
「蛇神様!そんなことはありません。皆、こんなに、喜んでいるではありませんか!こんなに盛り上がっている北地区を見るのは、初めてです。逆に、キルアントトレイダーを代表してお礼を申し上げます。」
コンサルさんと話をしていると、ギィから声をかけられた。
「次は何時出発するのか聞いてきてくれって、たくさんのキルアント達から声をかけられたっす!師匠!そろそろ出発出来るっすか?」
「わかった!あと、ギィ!そろそろ午後のポイズンバット討伐の時間になるから、今の最後尾までで終了すると並びに来た子供たちに伝えておいてくれるか?」
「了解っす!!師匠!」
丁度、コンサルさんがいるので、聞いておきたいことがあった。




