69 ありみつとポイズンバットの丸焼き②
ポイズンバットの丸焼きはイエローサンライズの大きな葉っぱに乗っていたので、南の居住区まで持ち運ぶのは少し困難だった。
「おいちゃん!ポイズンバットの丸焼きをそのまま持っていくと目立ってしょうがないので、荷物運び用のかごを借りれないですか?」
「荷物運び用のかごを貸すのですか?」
このやり取り完全に慣れてしまうと、逆に分かりやすくていいかもしれない。
「大き目の荷物運び用のかごの方がいいのですが・・・。」
「ちょっと待っててくださいね!」
おいちゃんはそう声をかけると、奥から大き目の荷物運び用のかごを持ってきてくれた。
「こいつは予備だから、返却はいつでもいいですよ!」
「それなら、明日もポイズパッド討伐に行くので、2匹ほど融通しましょうか?」
「それは助かりますねぇ!!ぜひお願いします。」
「では、この荷物運び用のかごに載せて、夕方の討伐の後に持ってきますよ!」
露店の店主のおいちゃんと話をまとめると、荷物運び用のかごにポイズンバットの丸焼きを載せて南の居住区に戻った。
帰る途中にギィが声をかけてきた。
「師匠!その羽の部分でぱりぱりしてそうなところを少しだけ、今食べてもいいっすか?」
「だ~~~めっ! 今日はアリスもいないし、ケッセイも部隊長の特訓中だから居住区でゆっくりとたべれるだろぉ!」
「でも・・・・。」
ギィは納得できないみたいで、自分の後ろから匂いを嗅ぎつつ、よだれを流しつつ、ついてきた。
少し意地悪で、右に行ったり、左に行ったりしてみたが、ギィは周りが見えずに、かごしか目に入っていたいようで、右に行けば右により、左に行けば左により真後ろをずっと一緒についてきた。
その様子が少し面白くて笑っていた。
すると、ギィは真剣な顔をして文句を言ってきた。
「師匠!そんなにフラフラせずにまっすぐ帰って欲しいっすよぉお!」
「もうすぐ着くからそれまでな!!」
そんな事を話しながらも、間もなく、南の居住区に到着した。
到着してすぐに、荷物運び用のかごを下した瞬間、ギィは食べに来ようとしていた。
「ギィ!ちょっと待ってくれ!せっかくだから、ゆっくりと味わうためにも、上の方から順に食べていこう!!まずは、羽からにしようか!」
ポイズンバットの羽は水分をしっかり飛ばしている上にありみつで、薄くコーティングするように固めてあった為、ほのかに甘く、触感はぱりぱりとしていて、歯ごたえがたまらなかった。
羽は2枚あったので、片方を先に食べた。
ギィもバリバリと歯ごたえとほのかな甘みにあっという間に食べきってしまった。
残りは後にしようと思って横に取っているとギィが口を挟んできた。
「師匠!このバリバリしたのは、もう食べないんっすか?先に食べてしまった方がいいっしょ!!」
「これうまいだろう!でも甘みがあるから、あとでもう一度楽しめるように残しておくんだよ!」
ギィは納得していないようだったが、肉を食べると忘れるだろうと思いそのままにしておいた。
「次は肉の部分だぞ!内臓は取ってあるから苦みもなく、これもうまいぞぉ!!」
ここにはナイフもないし、まあ、ナイフがあっても使えないからなぁ・・・。蛇だから。
そこで、ウインドカッターを弱くして、その端を使ってカットしてみることにした。
さすが、イメージ力の魔法だけはある。
まるで包丁のように、スパッと切れた。
すると、切れた場所から、肉汁としみ込んだありみつが混ざり合い、そこからあふれてくる匂いで、ギィは一気にかぶりついていた。
生肉とは違い、焼いてあることから出てくる肉汁とほのかな甘みをかみしめることで、この世界で初めての調理された食べ物を食したことで、とても幸せな気持ちになった。
今日ここにいないアリスとケッセイには申し訳なく思ったが、また、おいちゃんに頼めばいいやと心に決めた。
自分もギィも調理されたポイズンバットの肉を食べて、幸せな雰囲気の中、ゆっくりと床に就いた。
「今日は幸せな夢が見れそうだな!ギィ!」
「そうっすね!師匠!」
ギィも満足したように、残った羽をゆっくりと少しづつバリバリしている姿を見ながら眠りに落ちていった。




