表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/238

68 ありみつとポイズンバットの丸焼き

 キルアントトレイダー管理の上流区画でのコンサルさんとの交渉の結果、ポイズンバットの納品は夕方のみということに決定した。


 北の商業地区にあるキルアントトレイダーまで帰る途中で、コンサルさんは自分に聞こえる位の小さな声で、『お気を使わせてしまいまして、申し訳ありません』と話しかけてきた。


 キルアント族のキルアントトレイダーとして、色々あるのだろうということは分かっているので、小さく1度うなずいてそのまま進んでいった。


 コンサルさんもそのことを察して何もなかったようにして、キルアントトレイダーまで戻って行った。


「ねぇねぇ!コンサルさん!ドラゴンの骨で作った腕輪はどんなデザインになるっすか? 私はねぇ、綺麗な色の石を真ん中にして、その両側に牙を上下に合わせて、ドラゴンが炎の魔法を口から出しているような強そうな模様がいいなぁ!でも、もしも難しかったら、石と樹木と牙を並べて綺麗な模様になる様にするのもいいなぁ!・・・・・・」


 ギィは自分の考える腕輪のデザインをずっと熱心にコンサルさんに伝えていた。


 コンサルさんは少し困った顔をして返事をした。


「ギィ様!アイデアがどんどん出てくるのはとても素晴らしいと思いますが、腕輪を作るのは、装飾技師さんにお任せで作ってもらうので、私に一生懸命話されても、うまく答えることが出来ないんです。」


 ギィは少し残念そうにうなずいていたが、すぐに自分の中で新たな想像を繰り返しているようだった。


 ※     ※     ※


 キルアントトレイダーに到着すると、コンサルさんがありみつを持ってきた。


「焼き魚は明日準備しておきますので、今日は”ありみつ”だけですね。」


 近くに持ってきただけで、甘い匂いがしてきた。


 甘いだけでなく、さわやかな酸味が混じってすがすがしい気持ちにさせられた。


「とても、おいしそうな匂いですね。ところでありみつはどうやって作るのですか?」


「ありみつの作り方ですか! 隠れ洞窟の外に咲いているイエローサンライズから搾取します。そして、それを加工して純度を高めたものがありみつとなるのです。イエローサンライズはいつでも咲いていますが出来上がりは時期によってまちまちなんです。」


 あぁ!イエローサンライズって、ありんこ洞窟の近くにある黄色い巨大な花のことか・・・。


 でも、あそこには毒蝶々がいるから取りに行くのは難しいのではないのかなぁ。


 すこしどうやって確保するのか気になったので、聞いてみることにした。


「そのイエローサンライズからとれる蜜は簡単に搾取できるものなんですか?」


「いえいえ!とんでもないです。イエローサンライズからの蜜搾取はキルアント族の兵隊による命がけの任務となります。あそこにはポイズンバタフライがいて、あいつらの毒鱗粉を受けると場合によっては死に至るからです。」


「そんなにしてまで搾取する必要があるのですか?」


 それほど困難なら、無理して搾取しなくてのいいのにと考えた。


「キルアント族の生まれたばかりの子供達はありみつを食べて成長するのです。強いキルアントに成長するためにはどうしてもありみつが必要になるのですよ。まあ、イエローサンライズ自体で王宮の補修やそれ以外での活用もたくさんあるんですが。」


「そんな貴重なありみつをもらってもいいのですか?」


「なにをおっしゃいますか!ポイズンバットを納品していただいた報酬には、このありみつでも足りないくらいです。大量に渡すことはできませんが、蛇神様とギィ様で楽しまれてください。」


「それはどうもありがとうございます。あとでおいしくいただきます。」


「コンサルさん!腕輪の作成よろしくっすね!」


 キルアントトレイダーのコンサルさんにお礼を言って、ギィはコンサルさんに腕輪のお願いをしていた。


 そして、次のところへ向かった。


 もちろん、露店の店主おいちゃんのところだ!


 本来、焼き魚とポイズンバットの丸焼きの両方を受け取れるはずだったが、焼き魚が無理だったので、もう一つの調理された食べ物であるポイズンバットの丸焼きを受け取るためだ。


 おいちゃんのお店に近づくと、香ばしくて食欲をそそる匂いに、どこかほろ苦い匂いが混じって香ばしさをひきしめていて、何とも言えないおいしそうな感じだった。


「おいちゃん!丸焼き出来てますかぁ?」


「えっ!丸焼きですか?」


 あれっ!出来てないのかな・・・。


 いや、違う!そうだ、おいちゃんはからなず聞き返してくるんだった。


「はい、ポイズンバットの丸焼きです。」


「もちろん、準備万端で最高に贅沢に完全にできていますよ!」


 いやいや、その修飾語は使い方間違っているだろぉ~!


 おいちゃんは慣れてくるとどんどん不思議化していくなぁ~~!


「ちょっと待ってて下さいね!」


 そう言うと、おいちゃんは露店の奥からポイズンバットの丸焼きを背中に乗せて持ってきた。


 体を小さく折りたたんで、頭は取ってあった。


 羽はひっくり返って、体を包むように重ねてあった。


 体全体に少しテカリがあり、どうやって作成しているのか聞いてみた。


「体全体が少しテカっているですが、どういう風にして作っているですか!」


「えっ!テカリですか?」


「ほら、おなかの部分や足の太くなっているところにキラキラとしているでしょ!」


「ああ!これですね。これは、ありみつを水で薄めて、仕上がりの直前に塗って仕上げるとこうなるんです。表面がぱりっ!となって、ポイズパッドの肉と薄い甘さが混じっておいしさがアップするんです。」


「それで、匂いだけでなく、見た目もおいしそうに見えますね。おいちゃんにお願いして本当によかったです。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ