66 調査結果の報告
ギィはしばらく水の中で泳げることを楽しんでいた。
それなら、コンサルさん達が来る前に、ドラゴンを確認しようと考えた。
「それにしても、でかいな!」
頭だけで、3m位あった。
もしも体があれば、30m位の巨体だろう。
しかし、これほどのサイズのドラゴンが首から噛みちぎられている。
まあ、確定ではないが、見た目ではほぼそう見えた。
『数日前に、川の水が赤く染まって、巨大モンスター達が戦ったのではないか』とツキさんは言っていた。
おそらく、このドラゴン達の戦いだったのではないだろうか?
しかし、このサイズのモンスター同士の戦いとなると、環境破壊はすごいことになるだろうなぁ。
今の自分にはその戦いは想像できなかった。
しばらくすると、ツキさんと一緒にコンサルさんがやってきた。
それに合わせて、ギィも水から上がってゆっくりしていた。
「蛇神様!巨大なドラゴンを倒したそうで!!」
コンサルさんが目を丸くして大声で話しかけてきた。
あちゃ~~~!やっぱりツキさんは倒したと勘違いしていたよ!
「コンサルさん!倒してないですよ!丁度みんなが集まってくれたので、調査結果を話しますね。」
ツキさんとコンサルさん、それに調査団の方々とギィが、ドラゴンの頭部の側に集まっていた。
「まずみて下さい。今回のキルアント族の子供達の病気の原因は、このドラゴンの牙から漏れ出ていた毒のせいではないかと思います。そして、このドラゴンの頭部は、貯水池の奥にある大穴の中に引っかかっていました。ツキさんの予想通りでしたね。」
「巨大モンスター達の戦いを想像していましたが、まさかドラゴンたちだったとは・・・・。外の世界では何が起きているのでしょう・・・。」
コンサルさんはつぶやくように考えを口に出していた。
ツキさんから報告を受けていたんだろう。
「外の世界の事はわかりませんが、水質汚染の原因がわかったので、これ以上の被害の拡大は防げたのではないかと思います。ただし、キルアント族は毒に対して非常に弱いです。もしも、今回発生したキルアント族の子供達の病気が治らずに悪化するようでしたら、メーベル女王様の独立遊撃部隊長であるケッセイ隊長を尋ねて下さい。ケッセイ隊長なら何とかできるかもしれません。」
「ケッセイ隊長というのは、キルアント族の兵士で毒を受けたことにより、進化できなくなったキルアントの事ですか?」
そうか、進化できたのは最近の事だったから、まだ、町のキルアント達は知らないんだ・・・。
それに、後で話さないといけない事もあるから秘密にもできないし・・・、いいや!話しちゃえ!
「はい!そのキルアントです。名前はメーベル女王様よりケッセイという名を授けられています。(名付けたのは自分だけど・・・)」
「その・・・ケッセイ隊長は、進化できないのに名前を授けられて、さらに、独立部隊!?の隊長にまで昇格したのですか!?」
コンサルさん達は驚いて、側にいたキルアントトレイダーの方たちと顔を見合わせていた。
「その通りです。しかし、その情報は間違いがありますね。ケッセイ隊長は進化しましたよ。しかも、毒関連の真技を獲得しました。そして、その真技の中に解毒があるのです。ただし、その真技が他者に対して効果を持つかどうかは今のところ不明なので、確実に治せるとは言えないんです・・・。」
コンサルさん達は固まってしまっていた。
それはそうだろう!
今まで毒を受けると、進化できないと思われていたキルアントが進化したと伝えたのだ。
「蛇神様!今、ケッセイ隊長は進化したといわれましたか!?」
ようやく、コンサルさんは情報を受け入れたのか質問をしてきた。
「はい!ケッセイ隊長は進化したと言いましたよ。」
「ですが、これまでキルアント族は毒を受けると進化できないといわれていたんですが・・・。なぜ、毒を受けたのに、進化出来るんですか?」
全てを話してしまうのもいいかどうかわからないので、少し情報を濁すことにした。
「まあ・・・。それは、色々あったのです・・・。ですが!毒を受けたキルアント族の子供達を治療できる可能性があるのは、現在ケッセイ隊長だけなんです。」
「・・・・・わかりました。治療困難な子供達がいましたら、ケッセイ隊長をたずねたいと思います。」
「あと、先ほども言いましたが、毒を受けても進化できる可能性があります。今回のキルアント族の子供達が、将来兵士となる時は必ずケッセイ隊長に相談することを忘れないでおいて下さい。」
コンサルさんは安心したようにうなずいていた。
「それは良かったです。本当に良かったです。今回の調査結果で微毒だったということを公表した場合、病気になった子供達の将来から兵士としての選択肢を奪うことと同じでしたから・・・・。」
キルアント族の雄はほとんどが兵士となる。
しかし、進化できないとなると、兵士としての選択肢は絶望的だった。
それは、ケッセイのレベルアップを見ていたので、よくわかる。
だから、コンサルさん達の安心した姿は十分納得できるものだった。
「そしたら、調査結果の報告の際に、子供達が将来兵士へ志願することがあれば、ケッセイ隊長へ相談するようにと子供達の両親へ伝えておきます。」
「これまで、毒を受けると辛い将来となっていたことは知っています。ですから、その事は必ず理解してもらうようにしてください。そして、そのことは将来のキルアント族に関わってくると思います。」
将来のキルアント族に関わると説明した・・・。
しかし、コンサルさん達は、将来についての話に関してはあまり理解できていないようだった。
将来がどうなるかは誰もわからないので特に掘り下げることはしなかった。
それよりも、このドラゴンの頭部をどうするかだった。
「病気の原因の事は解決したと思います。そうすると、このドラゴンの頭部はどうしますか?私としては放置するのもさらなる病気の原因になりかねないので、焼却処分をするのが適切ではないかと思いますが・・・。」
「蛇神様!のお考えの通りで構いません。我々も必要とする部位はありません。ただ、牙や骨はアクセサリーの材料になるので頂ければ幸いですが・・・。」
コンサルさんは控えめに、焼却処分後の骨などを希望されていた。
「我々にも必要がないので、構いませんが・・・。ギィもそれでいいか?」
ボ~と話を聞いているのか、聞いていないのか分からない感じで側にいたギィに声をかけた。
すると、すこし体がビクッ!となった後に慌てて返事をしてきた。
「いるっ!いるっす!私はドラゴンの牙のアクセサリーが欲しいっす!コンサルさんお願いできるっすか?」
「えぇ!いいですよ。ギィ様が望むのであれば、お作りして1つ差し上げますよ!」
「本当っすか!?作ってもらえるんすっかぁ!!コンサルさん!ありがとうっす。そしたらね、この右手につけている腕輪と合わせて飾ることが出来るようなのがいいっす。」
ギィは自分の右手につけている赤い2本のラインが入っている皮の腕輪を、コンサルさんの近くに行って見せびらかしていた。
「わかりました!ギィ様!そのきれいな2本の赤いラインが入った皮腕輪に合わせられる飾りにすれば良いのですね。」
少し無理やりな感はあったが、コンサルさんにギィの希望はしっかり届いたようだった。
ギィは嬉しそうに、ニコニコしながら自分の皮腕輪をみていた。
「ギィ!準備が出来たら、このドラゴンの頭を燃やしてくれっ!!」
「わかったっす!師匠!」
そう言って、ギィはファイヤーボールを連続でドラゴンの頭に発射した。
ぼゎ~!ぼゎ~!ぼゎ~!ぼゎ~!ぼゎ~!ぼゎ~!
ドラゴンの頭はあっという間に、焼却して骨になっていた。
「作成までにかかる日数は7日位だと思いますので、その頃にキルアントトレイダーまで受け取りに来て下さい。」
「からなず行くっす!!コンサルさん!」




