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62 北の商業地区④

 キルアントトレイダーのコンサルさんと別れた後は、露店をゆっくりをまわった。


 自分の姿が珍しいのか、蛇神様として敬っているのかわからないが、遠くからささやいているのがわかった。


 時々、小さいキルアント達がやってきて話しかけることもあった。


「あのぉ~!へ び かみ さま ですか?」

「そうだけど何か用があるのか?」


 そう返事をすると同時に、ギャァギャァ言いながら走り去っていく姿が、何度かあった。


 ギィに聞いてみても、『なんすかねぇ~』と不思議そうな返事だった。


 露店の間を進んでいると、色んなところの店主からギィは声をかけられていた。


「ギィちゃん!今日もよろしっくっすね!」

「あいよ!任しといて!」


 縁日のあんちゃんのような返事をして何か、荷運びを請け負っていた。


 露店を回りながら、背中に乗せたかごに、飾り物やおやつのような食べ物など、色んな荷物を載せて移動していた。


 自分も協力しようと思ってギィに声をかけた。


「ギィ!手伝うぞ!背中に荷物かごを括り付けてくれるよう頼んでもらえるか?」

「師匠にそんなことしてもらっていいんっすか?」

「ここに来る前には、色々とあったからなその恩返しだよ!」


 心優しいキルアント達に、何かしてあげることがあれば、いつでもしようと決めていたので、今回は絶好の機会だと思っていた。


「体を傾けないように移動してもらっていいっすか?」

「大丈夫だ!ゆっくりなら体を傾けることなく移動できるよ!」


 そう言って、背中に大きめの荷物かごを括り付けてもらった。


 は~!こうやって運ぶんだと思っていると、ギィは遠慮なくどんどん荷物を増やしていった。


「師匠!荷物かごが足りないんで、増やしてもいいっすか?」

「おっ、おう!」


 背中に括り付けている荷物かごを見ながら、ギィに荷物運びを頼んだ露店の店主が心配そうに声をかけていた。


「蛇神様にそんなことして大丈夫ですか?」

「師匠は強いから、大丈夫っすよ!」


 そういって、ギィはいたるところで、自分から荷物無いっすかと声をかけまくっていた。


 気が付いたら、体の端から尻尾の近くまで、まるで貨物列車のようになっていた。


 それを見たキルアントの店主たちは、目を丸くしていつもとは違う驚きをしていた。


「なんですか!?あの、連結荷物運びは!? って、運んでいるのは蛇神様ではないですか?」


 といった声がいたるところから聞こえてきた。


 荷物を運んでもらった露店の店主たちは、皆大いに喜んでいた。


 途中からは、小さなキルアント達が横を一緒に歩きながら騒いでいた。


「連結荷物運びの蛇神様!!!」


 大人のキルアント達は、気まずそうな顔をしていたが、子供たちは嬉しそうに叫んでいた。


 これって、変な二つ名になってないか?


 そう思ったが、笑顔があふれているキルアント達を見ているとうれしくなった。


 そして、露店の荷物運びと露店まわりが終わったころには、ポイズパッド討伐の時間となっていた。


「ギィ!今日はポイズンバットの肉の丸焼きが夕食だぞ!」

「舞う焼きってなんすか?」


 ギィは顔を傾けて、不思議な顔をしていた。


「違うよ!丸焼きって言って、ポイズパッドの羽をとって、内臓を出す。そして、それを焼くんだ。しかも、中までじっくり火が通るようにゆっくりとゆっくりと焼いていくんだ。うまいぞぉ~!」

「うわぁ!よだれが出てきたっすよ!師匠!それなら早く行くっすよ!」


 そして、午後のポイズンバット討伐を終わらせるとすぐに隠れ洞窟の入り口の門番のところまで持って行った。


 門番は話を聞いていたようで、すぐに対応してくれた。


「王宮より本日、師匠様がポイズパッド討伐の後、商業地区に納品するために持って帰ってくる旨聞いております。それから、すでに、キルアントトレイダーよりポイズンバットを運ぶためのキルアント達が待機しています。あちらにいますよ!すぐに呼んできます」


 そう言うとすぐに、門番はキルアント達を呼びに行った。


 そこに控えていたのは、40~50匹位のキルアント達だった。


 門を抜けた後に、今日はやたら兵士が多いなと思っていたら、兵士ではなく荷物運びのキルアント達だった。


 門番が、リーダーのようなキルアントに声をかけるとすべてのキルアント達が整列してこちらに向かって来た。


「蛇神様!本日納品していただけるポイズンバットは、ここに置いてある全部でよろしいですか?」


 先ほど門番が話していたリーダーのようなキルアントが声をかけてきた。


 露店の店主と約束していた2体は自分が持っていくから、それ以外のポイズンバットを持っていくように話をした。


「すまないが、2体は個人的に使用するので、他の10体をもっていってもらえるか?」

「かしこまりました! みんな!持って行っていいのは10体までだぞ!」


 リーダーがそうキルアント達に伝えると、一斉に動き出した。


 1体を4~5匹のキルアント達が背中の上に抱えて、軽々と運んで行った。


 山積みしてあった、ポイズンバットもあっという間になくなってしまった。


 ポイズンバットのところに来るときも整列していたが、運んでいくときもきちんと整列していた。


「蛇神様!コンサル様より伝言があります。ご依頼のもの準備で来ておりますので、いつでも受け取りに来てくださいとのことです。 後、久々のポイズンバットの肉が大量に入荷されると聞いて、露店の店主たちは大喜びでした。ありがとうございます」


 リーダーは自分達に、キルアントトレイダーのコンサルさんからの伝言を伝えると、そのまま荷物運びに戻って行った。


「ギィ!自分達もおいちゃんのところに、ポイズンバットを届けに行こうか!」

「師匠!肉が食べれるんすね!丸焼きの肉、たのしみっすねぇ~!」


 自分達は2匹のポイズンバットを、おいちゃんが渡してくれた大き目の荷物かごに入れて、入り口の露店のところまで運んで行った。


 北の商業地区に入るとすぐに、おいちゃんが自分達を見つけると、走ってこちらに向かって来た。


「蛇神様!待ってました!先ほど、キルアントトレイダーの荷物運び隊が大量のポイズンバットを運んでいたから、そろそろだと思っていました」


 おいちゃんと一緒に露店まで運びながら、おいちゃんは荷物かごに入っているポイズンバットを見て喜んでいた。


「蛇神様!ポイズンバットの丸焼きは時間がかかりますが、待たれますか?」

「いや、キルアントトレイダーのコンサルさんに呼ばれているから、その要件が終わったらまた来ますので準備しておいてもらえますか?」

「わかりました。それでは、腕によりをかけて、調理しておきますので楽しみにしておいてください」


 おいちゃんはにっこにこで返事をしてきた。


 ポイズンバット調理依頼がすんだあとは、キルアントトレイダーのコンサルさんのところに向かった。


 おいちゃんの露店から、キルアントトレイダーまでは、橋を渡ってすぐのところにあった。


 到着して、入り口にいたキルアントにコンサルさんを呼んでもらった。


「蛇神様!大量の納品ありがとうございました。久しぶりの大量入荷に、皆大変喜んでいました」

「そんなに喜んでいただいて、こちらもうれしく思いますよ。それはそうと、相談があるとの事でしたが、どうかしたのですか?」


 相談の話になると、コンサルさんの表情が少し曇ったように見えた。


「昨日の朝より、体調不良でキルアントの子供達が寝込んでいる。そういった相談がありました。時々は、そのような相談も入っていたのですが、夕方には10数件の報告がありました。 通常ではありえなかったので、メーベル女王様にはすでに報告してあり、北の商業地区で調査団を結成し原因の調査を行いました」

「原因はわかったのですか?」

「いえ、まだはっきりとはわかっていません」

「『はっきりとは』ということは、何らかの手掛かりは、わかっているのですか?」

「はい、おそらくは水ではないかと・・・・。しかし、まだ確証ではありません。もしも、水が原因だとするとかなりの大問題になってしまうのです」


 確かに、キルアント族にとっての唯一の水源である川の水が汚染されているとなると、死活問題だ。


 キルアントトレイダーのコンサルさんはどう対処したらいいか困惑していた。

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