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6 絶対に生き延びてやるんだ

  2匹のスライムに襲われるといった絶体絶命の状況の中で一瞬あきらめの気持ちになってしまった。


 あんなに強いスライムが同時に2匹・・・。


 無理だ・・・。


 すると、走馬灯のように、突然、紗耶香さんが瞼の奥に現れた。


 紗耶香さんが教室を出た後、後ろから一緒について出た自分に振り向いて、やさしい笑顔で声をかけてきた。


「たぬき!生徒会室には一緒にいこうね、だから、ちゃんと待っててね!」


 その言葉を、なぜか急に思い出した。


 ほんの一瞬だったけど、あきらめてはいけない気持ちMAX!になった。 


 ・・・だめだ、こんなところで死んではいけない。


 気持ちで負けては、絶対にダメだ!


「ハッピー!リア充な高校生活が・・・紗耶香さんと一緒の高校生活が待っているんだ」


 自分の、目の前には紗耶香さんがいた・・・・妄想だけど。


「俺は何とかして、元の世界に戻ってやる」


 こんな危機的な状況の中での、自分勝手な妄想に過ぎなかった。


 しかし、その思いが、自分のこれからの目標として急に決定した。


 そして、力を与えてくれた・・・・気がした。


「絶対に生き延びてやるんだ!」


 慌てていた気持ちが落ち着いた。


 その結果、周りの状況が、一瞬ですっと、しみ込むように入ってきた。


 ちょっと前まで、慌てていた時は、スライムのスピードがとてつもなく速く見えていたのに、今の俺の目は何とかそのスピードに追いついていたのだった。


 レベルが上がったせいだろうか。


 わからないが、レベルが上がったことにする。

 少し勝機が見えてきた。


 すると、スライムがこちらに進んできながら、右と左の2手に分かれてきた。


「成功するかどうがわからないが、今できることするまでだ!」


 最初のスライムとの闘いで、スライムの発射する水の塊の射程距離はつかんでいた。いつでもジャンプが出来る体制のまま後ろに下がった。


 先ほどみたいにジャンプで目くらましは出来ない。


 仮に1匹倒せても、もう1匹に背後を取られて死亡する未来しか見えない。


 ならどうする!?


 まだ、2匹のスライムは並行して、急な曲がり角を右側に曲がってきている途中だ。


 曲がり角だが、斜面になっていて、天井と斜面の隙間からスライムは両方とも見える。


 そして、外側のスライムが若干前に出てきている。


 ちょうどいい。


 このまま、2匹目が角を曲がりはじめたタイミングで、ジャンプをすれば・・・。


 いけるかもっ!!


 2匹のスライムは自分の姿を確認で来ていたはずだが、2匹が同時に攻撃できる状況を待っているようだった。


 まだ、待つんだ。


 ・・・・・今だっ!


 2匹のスライムの正面が自分に向いた瞬間に水の塊をとばしてきた。


 ビュシュッ、ビュシューーーーン!


 俺は予定通りに、そのタイミングで天井と斜めに切っている洞窟の斜面の間に向かってジャンプした。


 コントロールをミスって天井や斜面にぶち当たればそこでジエンドだっ!


 これは運を天に任すしかない・・・。


 後ろではスライムの水の塊が自分のいた場所にぶち当たり、床にあった土砂をまき散らしていた。


 俺はそんな状況を後ろに見ながらも、正面の隙間に向かって飛んでいる軌道に不安を感じた。


 やば、少し上すぎたかな・・・。


 このままでは、天井にあたってそのまま落下・・・。


 そこは、スライムの目の前・・・。


 やば・・・。


 空中で出来る事なんてないというのは、TVの中での常套句だ。


 だけど、今はそんなこと言ってられない。


 何か・・・何か・・・。


 分からなかったから、とりあえず頭を下げてみた。


 ズズズッ・・・・ガリガリッ・・・・・。


 ズシャぁーーーーー。 


 オッ、何とか抜けた。


 ジャンプ中に頭を下げることで、何とか軌道修正が出来た。


 そして、滑りこむように天井と斜面の隙間を通って着地することが出来ていた。


 おお、俺天才かも・・・。


 って、そんなことしている場合じゃない。


 着地で滑りながらも、まるで、ドリフトをしているように回りながら方向転換を済ませた。


 正面に見えるのは1匹のスライム、もう一匹は斜面の向こう側だ。


 俺は滑りながらも連続ジャンプで曲がり角の斜面の手前にいるスライムに噛みつきを行い、そのまま、巻き付きをした。


 パシュッ!


 今度もうまくいった。よし、もう一匹だ。


 そう思って、残ったスライムを探すと、すでにこっちを向いていて、水の塊を発射しようとしていた。


 予想外に、スライムの動きが速すぎた。


 俺はジャンプでかわそうとしたが、間に合わない。


 とっさに頭を守るために体を盾にした、そして、水の塊は胴体に直撃した。


 大ダメージを受けて、一瞬めまいがした。


「くっそぉーーー、痛ってぇーーー、でも、絶対に!生き残って!やるんだぁぁぁぁ」


 フラフラの状態になりながらも、気力でもって絶対に生き残ってやるんだと思い、痛みとめまいに耐えた。


 その時、尻尾に握っていた緑エノキを思い出した。


 そうだ、HP回復薬があった!


 しっぽに握らせていた、緑エノキを食べるとHPが回復するのを感じた。


「まだ・・・戦える!!」


 そう思ったが、スライムは俺のすぐ側まで来てとどめを刺しに来ていた。


 近距離から水の塊が・・・・・。


 だめだ。


 やばすぎる・・・やめてよぉぉぉ。


 それでも、スライムはそんなことお構いなしだ。


 ビュシューーーーン!


 俺は、必死でスライムの水の塊をよけるようにジャンプした。


 ちっ・・・狙われたっ!


 スライムは落下するタイミングを待っていたかのようだった。


 だめだ!空中ではよけられない!


 空中にいる俺に水の塊をよけることはほとんど無理な状態だった。


 考えろ! 考えるんだ!


 今使えるものはなんだっ!そうだ、まだ、尻尾がある!


 しっぽを精一杯のばして、壁のばした。


 滑る。


 滑る。


 引っかかれーーーーー。


 こんどは、少しだけ引っかかった。


 ほんの1秒、いや、0.5秒だろうか、落下スピードを遅らせることができた。


 完全な直撃は避けることが出来た。


 スライムの水の塊に俺はかなりのダメージを与えられたが、まだ、何とか反撃する機会を作ることが出来た。


 スライムに向かって噛みつきを行うため、そのまま壁を足場にして、尻尾で思い切り壁を押すように、空中でジャンプした。


【水弾丸を獲得しました】


 ドキッ!


 いつもの、メッセージが急に頭の中に鳴り響いた。


 驚いてしまい、スライムを見失ってしまった。


 しかも、同時に、急激な睡魔がやってきた。


「なんだ、もう30分経ったのか、あと少しだったのに!俺の異世界てん・・せ・・・ぃ・・・・・・・」


 空中で意識を失い、そのまま、落下してしまった。


 ※     ※     ※


 やばい、やられる!!


 目を覚ました後、すぐにかまえて、攻撃態勢を取ろうとした。


「えっ、なんで・・・生きているの・・・」


 スライムを探した。


 しかし、そこにスライムはいなかった。


 えっ、だってさっき噛みつきをしようと思って、そして、壁をしっぽで蹴って、何とか壁ジャンプをして・・・。


 睡魔の前の状況を順を追って思い出してみた。


「そうだ、レベルアップ後の睡魔が来たんだった。でも、空中で意識を失ったから、本当にもうだめだと思ってたのに・・・」


 不思議に思いながら、周りを確認してみた。側にはスライムの死骸が2匹あったが、もう1匹の姿が見えなかった。


 俺にとどめを刺さずに、逃げて行ったのかな。・・・まさか、そんなはずはないよな。


 そんなことをつぶやきながら、少し移動してみた。すると、自分の体の下敷きになって広がっているスライムを発見した。


 俺は、壁ジャンプをした後、噛みつき攻撃をするつもりだった。


 しかし、睡魔の為、意識がなくなったものの勢いはあったので、まるで、フライングボディーアタックのようにしてスライムを攻撃していたのだ。


「ふぅぅぅーー、俺ってなんという強運の持ち主なのだ・・・」


 こうして、転生後、初の戦闘で、何とか勝利をもぎ取ることができた。


 いや、生き延びることができた。


 それが、なぜか無償にうれしくなり、涙が出てきた。


「何があっても、絶対に生き延びてやるんだぁぁぁっ」


 しばらく、泣きじゃくっていたが、睡魔が襲ってきたときに聞こえてきたメッセージを思い出した。そうだと思い、ステータスを開いてみた。


 ーーーーーーーーーー


【名前 】 なし

【種族 】 スネーク


【ランク】  G

【レベル】  2(up)


【HP 】 45/45(up)

 NEW)【MP 】 10/10


【体力 】  4(up)

【力  】  8(up)

【知力 】  4(up)

【素早さ】  6(up)


【物理攻撃力】 30(10+20)(up)

 NEW)【魔法攻撃力】 24

【物理防御力】 60(15×4)(up)

【魔法防御力】 36( 9×4)(up)


【スキル   】

 噛みつき ランク3(up)

 牙    ランク3(+20)(up)

 巻き付き ランク2(up)

 NEW)ジャンプ ランク1


【特殊スキル】

 卵の殻壁 ランク3(× 4)(up)

 NEW)水弾丸 ランク1(MP=3)


 ーーーーーーーーーー


 あれ、ステータスの項目がふえてるぞ!


 よく見てみると、それは魔法を使える証「MP=10」という数字だった。


 美少女やケモミミへの出会いをあきらめ、転生者としてのチート能力もあきらめ、魔法すらもあきらめていた。


 そんな中で「MP=10」その数字はわずかではあったが、その興奮はとてつもなく大きなものとして感じた。


「やったーーーーーーーーーーー」


 全身で喜びを感じた。体の震えが止まらないほどの喜びだった。この世界にきて、これほど喜んだことがあったかと思えるほどだった。


「魔法っ、まっほうっ、マッホウッ、やーーーーーー!」


 あまりの嬉しさに、トリプルジャンプからの後方宙返り&3回ひねり、着地をしたら、体の中心を軸にコマのように回り、最後は頭と尻尾のハイタッチ!!という、奇妙な蛇ダンスを披露してしまった。


 一応、魔法の攻撃力も見てみた、「魔法攻撃力」は24と通常の攻撃力よりは低くなっていた。


 しかし、現在、近接戦闘しかできない俺にとって、遠距離攻撃はこれからかなり強力な武器になると思えた。


 それにしても、攻撃力と防御力はめちゃくちゃ上昇してないか?


 この世界に来た時と比べると、攻撃力は6倍で防御力は10倍になっている。しかも、レベルはたったの2しか上がってないのにもかかわらずだ。まあ、身体能力というよりも、スキル補正の影響がとても大きく感じられた。


「卵の殻壁さん!微妙なチートといってすみませんでしたっ!」


 誰に怒られるわけでもないが、一応、微妙といったことを誤ってみた。


 独りに慣れすぎて、独り言が始まったのかな・・・・・。


 やっぱり、補正とレベル上げは重要だな!


 この世界で、生き抜くためには、レベル上げとスキル強化は必須の目標になった。スキル強化の方法はわからないけど、とにかくスキルを使用して、モンスターを倒して、レベルを上げる。


 ゲームの中ではごくごく基本的なことだ!


 いずれにしても、強くなると、それだけ生存率も高くなるので、どんどんモンスターを倒すことにした、かつ、慎重に。


 目標が定まったので、さっそく魔法を使う準備をしようと考えた。


 探索も必要だけど、せっかく魔法が使えるかもしれないので、魔法の練習をしよう!


 ステータスの「特殊スキル」の中に、「水弾丸 ランク1(MP=3)」とあった。


 きっとこれが、魔法攻撃に違いないと考えた。


 どうして、この特殊スキルを覚えたのかはよくわからなかったが、スライムが発射してきた水の塊に違いないと思った。だから、どういう魔法なのかは簡単にイメージすることができた。


「水弾丸 ランク1(MP=3)」の内容に、MP=3とあった。


 そして、これは1発発射するのに、MP=3使用するということだろう。


 ここら辺は、ゲームと同じだな。


 そして、俺の、総MPは10/10つまり、連続で3回まで水弾丸を発射できるということだ。


 しかし、魔法ってどうやって使うんだろうか!?


 魔法使いは、杖を持っているが、ここには杖もないし、右手もない。右手のような尻尾はあるけれども・・・蛇だから。


 まあ、俺は蛇だから、うーん、やっぱ口から飛ばすのかな?


 一瞬、怪獣が口からビームを発射するのを想像してしまった。


 怪獣はともかく、飛ばすのは水の塊だから・・・・唾を飛ばす感じかな・・・??


 大体、漫画やアニメでは魔法はお腹からエネルギーのようなもの、マナ??よくわからないが、そんなものを高めて発射している描写が多いので、きっとそうだろうと思った。おなかに力をいれて、唾を出すようにして、口から唾を吐きだしてみた。


 カーーーーッ ペッ


 シーーーーーーーーーーーーーーーーーン。


 何も起きなかった。


 いかん、いかん、これじゃぁ、おじさんが唾を吐きだしているみたいだ。


 しかも、何も起きないしなぁ、やり方が悪いのかな。


 しばらく、口の形を変えて唾を出してみたり、体をまっすぐにして唾を出してみたり、とぐろを巻いてみたり、おなかの力の入れ具合を変えてみたりと色々工夫してみた。


 しかし、何も魔法的な効果は見られなかった。


「やっぱり、魔法なんかできないんだ、くそっ、期待させやがって!」


 独り毒ずいていた。

読んでいただきありがとうございます。

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