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55 キルアント達による王宮の出迎え

 

 3つ目の大型スネークとの出会いにより、王家の滅亡のシナリオから、王家の復権のシナリオへと転換を図ることが出来た。


 さらに、王家の復権を叶える為の状況も順調に進んでいたかのように見えた・・・。



 そして、、毒耐性を持つキルアントの誕生という奇跡までも起きた。


 普通に考えると、毒耐性を持つキルアントは、種族に新たな進化をもたらしてくれる存在となる。


 そしてそれは、これまでのキルアント族の歴史を塗り替えしてしまうほどの進化だとも考えられた。


 一般的にはそうだ。



 しかし、王家にとって、そうではなかった。


 現状、王家といっても、キルアント族の最終進化であるクイーンキルアントに進化できない。


 そして、千年真珠も失ったままの為、解毒や探索の魔法を持たない。



 それは・・・・・名ばかりの女王だった。



 そんな状況である自分に、ケッセイの存在が重くのしかかってくる。


 ケッセイの進化は明らかに、これまでにないキルアント族の進化を進んでいる。


 そして、これまでのキルアント族の最大の弱点である『毒耐性を持たない』を克服してくるはずだ。


 これほどの進化を成し遂げたケッセイは、もはや王家を超えた存在となる。


 そして、それは、王家の交代を意味していた。


「どうして、ケッセイは、私メーベルが女王であるときに生まれてきたのよぉお!」


 メーベルは一人声も上げられず、ささやくように声を上げ、むせび泣いていた。




 しかし、否応なしに朝は来る。


 メーベルの苦悩を解決しようが、するまいが関係ない。


 外の風は、冷たさを増して、自分に厳しい問いを投げかけ続けるようだ。


 そして同時に、メーベルは女王としてケッセイに対して決断を迫られる。



 ケッセイを・・・受け入れる・・・それとも・・・拒絶する・・・。



 朝の訪れとともに、メーベルは1つの決断をする。



 すべては今日の面会で決まる。



 自分の思いを決めたメーベルは穏やかさを取り戻していた。


 見方によっては、あきらめたとも言えなくもないほほ笑みを浮かべながら、自室へ戻って行った。



 ※     ※     ※




 南の居住区にある一区画、そこで師匠達は生活を行っている。


 アリスやケッセイの繭化も、同じ一区画の中で行っていた。


 今日はケッセイの面会の日だったので、ケッセイの繭の前に皆そろっていた。


「おはようございます。師匠! それにみんなもよく眠れたぁ!?」


「はい、まあ、それなりにです。」


「一応、目はつむりましたわ。」


「それなりにかな。」


 ケッセイは、朝方少し眠れたようだった。


 アリスはやっぱり、眠れなかったようだった。


 王宮でケッセイの取り扱いがどうなるか心配がぬぐえ切れなかったのだろう。


 ギィは、一人だけ旗色が違ってスッキリしていたようだ!


「ギィはしっかり眠れたようだな!」


「はい!師匠!なんてったって、今日はメーベル女王様にお会いする日っすから、しっかり眠っておかないとダメっしょ!」


 ギィらしかった。


 女王様に会うのに、しっかり体力を整えて、万全の体制でのぞむ。


 相手に対して、失礼のないようにするといったギィの考え方は嫌味がなく、正直なギィらしい考え方であり、ほほえましくも思えた。


「その通りだな!ギィはよく考えているんだな。」


 ギィは考えているといわれ、周りに笑顔を振りまいていた。


「これからメーベル女王様に会いにいくぞ! 皆準備はいいか!」


「ばっちりっす!」

「大丈夫ですわ!」

「はい!準備できています。」


 南の居住区からまっすく進んだどころに王宮があり、それほど時間はかからない距離にあった。


 今日の謁見で報告する内容は3つ。


 ①アリスの2回目の進化について

 ②ケッセイの進化後の真技について

 ③ケッセイの毒耐性に関する検証の為の回復チームの準備について


 後は、必要があれば、間もなく出発することを伝えるくらいだった。


 報告内容を確認している間に、王宮に到着した。


「師匠!王宮の入り口のところに、キルアント達がたくさんいるっすね!」


 ギィが慌てて、話しかけてきた。


 自分も王宮の前に並んでいるキルアント達に驚いた。


 初めて、王宮に入った時は、入り口のところに数名、そして、バレットアントの第2近衛のチエさん達、そして、第1近衛のカルナじい様とハルナばあ様、最後にメーベル女王様が座っている状態だった。


 しかし、今日は王宮の前にキルアント達が数百名が整列して待機していた。


「アリス!あの真ん中に、自分たちは行くのかな!」


「そっ、そうだと、思いますわ!」


 アリスも一瞬迷っていたが、行くしかないと観念していた。


 あまりおどおどしているのも立場上よくないので、頭を上げて姿勢を正して自分を先頭として進んでいった。


 ギィやアリスも自分の後ろからゆっくりと移動をはじめていた。


 ケッセイはギィの後ろで、アリスとの間に挟まれる形で進んでいった。


 キルアント達の隊列の前を通り過ぎると、周辺でざわめいていた。


「おい、あれが、蛇神様だろ。さすがりっぱだな!」

「ああ、それに強そうだ!」

「そういえば、昨日ラージバットを討伐したらしいぞ!」

「えっ!あの伝説のラージバットをか!?」

「2番目にいるのが、リザードのギィ様、かっこいいなぁ!」

「ギィ様は時々、市場に来ているの知っているか?」

「知っているぞ。こないだ、ろくでなしのゴヒチ一家ともめたあと、恋愛をまとめたらしいぞ」

「姫さまは名前をアリスって言うらしいぞ!」

「姫様きれいだなぁ、いいなぁ」

「姫様の前にいるのが、噂のバレットアントか?背中に緑のラインがあるらしいぞ!」

「どれどれ、あれだ!きれいなラインだな!」


 並んでいるキルアント達が色々なことを、互いに口ずさんでいた。


 まあ、いろいろと注目されているんだなと感じたが、ギィは何やっているんだ!


 ギィについて話しているキルアントたちがかなり多かったのに気が付いた。



 そして、門の前のところまで行くと、そこには、出迎えのキルアント達がいた。


 レッドキルアントのテト隊長とテイ隊長が数名のキルアントを連れて待機していた。


「お待ちしておりました。師匠様! メーベル女王様のところまで案内致します。」


「よろしく頼みます。」


 テト隊長はケッセイの姿を見てほほ笑んでいた。


 ケッセイはテト隊長の姿を見つけると、何度も頭を下げてあいさつをしていた。


 王宮の門を抜けると、そこにいたのは、レベルアップで進化したレッドキルアント達とバレットアント達だった。


 入り口に近いほうから、レッドキルアント達が整列をして待機していた。


 そして、そのレッドキルアント達に続いて、奥に向かってバレットアント達が並んでいた。


 ツウ隊長とツエ隊長の姿もそこにあった。


 前回から比べると、その多さに一瞬目を奪われる程だった。


 そこでも、道々で感謝の言葉が掛けられてきた。


 そして、一段高くなったところで待機していたのが、第1近衛の5名だった。


「師匠様~!よくぞいらしてくださいましたぁ~!首を長くしてお待ちしておりましたぁ~!!!」


 第一声はやっぱりチエさんだった。


 しかも、チエさんはしっかりと自分に向かって話しかけてきていた。


 そして、そのチエさんを押しのけるように出てきたのがチタさんだった。


「はいはい!チエもういいだろ!」


「いや!まだ、あいさつはこれからだよぉ~」


 チエさんは涙目になりながら、後ろに押しやられていた。


「おう!師匠さん!そして皆さんも!今日はよく来てくれたのぉ!感謝するぞい!」


 チタさんは進化で見るからに強そうになっていた。


 細いはずのバレットキルアントなのに、2まわり位大きなサイズになっていた。


「今日はよく来てくれたねぇ~!ギィさん!いつでも戦うよぉ!今からでもどうねぇ~!」


 進化したのに、相変わらずのバトルジャンキーなチヌさんだった。




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