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49 ポイズンキャンセラーとサーチ

 ケッセイは、確認した真技スキルを読み上げるように、語りだした。

 本当は、実際に使用してもらうのがよかったが、今の弱体化状態では使用するのは無理だった。


「師匠様!まずは基本の攻撃に関する真技からです。」


 ケッセイは、スキルに関してあまり話さないでほしいと言っていたにもかかわらず、読み上げるのが嬉しいのか、目がギラギラしていた。


「進化後は種類が3つも増えました。キルアントの頃の真技は噛みつき、蹴りでした。進化後は、パラライズニードル、麻痺弾そして、ポイズンファングです。すごいでしょ!毒攻撃です。ほんとにすごいことなんです・・・・。」


 喜びと驚きで、泣き笑いをしながら、スキルを読み上げていった。

 アリスは予想していたが、実際にキルアント族に毒攻撃ができる戦士が現れたことに驚きが隠せず固まっていた。


「後は、防御系で鋼外殻です。」


「それで全部か?」


 解毒関連のスキルがあるはずだと思ったが、進化後すぐ獲得できるわけではないなと思い、やはり、レベルアップが必要だと感じていた。

 しかし、ポイズンファングを持っているということは、毒関連のスキルを必ず、取得できる可能性があると予想できた。


「・・・あっ、いえ、あとは毒関連の真技とは思うんですが、ポイズンキャンセラーとサーチですか?意味がよくわからないんです。使用してみればわかるんでしょうが、師匠様はこの真技が何かわかりますか?」


 かなり重要なことをサラッと言ってのけたので、聞き間違いではいけないから、ゆっくりとはっきり聞き直してみた。

 もしも、間違いでなければ、毒耐性以外の仮説は証明されたことになる。

 しかし、ポイズンキャンセラーがあれば、毒耐性なくても大丈夫なんではないかな・・・・。


「ケッセイ、今、()()()()()()()()()()!それに、()()()!といったのか?」


「はい、ポイズンキャンセラーとサーチです。もしかして、師匠様は知っているのですか?」

 ケッセイはキョトンと目を丸くしていた。


「ケッセイ、驚くなよ!ポイズンキャンセラーとは解毒の真技だ。つまり、毒を解除してくれる技だ。さらに、サーチだ!この真技を獲得できるとは、さすがに思わなかった。聞き間違いじゃないかと、耳を疑ったくらいだ。」


「師匠様、サーチとはそれほどにすごい真技なのでしょうか?」


「ああ、すごいぞ!ポイズンバット討伐の時に、あの暗闇の中で、ポイズンバット達の攻撃ラインがわかるのは、知っているよな。」


「はい、師匠様の目の良さには、驚いていました。」



「はははっ!よく見えるからと、思われていたんだな。しかし、本当は、サーチの真技の効果で、ポイズンバット達の動きがわかっていたんだ。」


「ポイズンキャンセラーとサーチの真技が、どれほどすごい技なのかを実感して、少し怖くなりました。」


 ケッセイは、動揺して、すこし震えていた。それは、これから自分がどういう立場になるのかを考え、その重圧を想像したからでもあった。


 この時のケッセイは、もう一つの危険に気づいてはいなかった・・・・。


「ケッセイの進化に関して、確認したいことは全部確認できた。これほどとは予想できなかったけどな。今日は一日ゆっくりと休んで、明日のメーベル女王様の謁見に備えておくようにな。」


「わかりました。師匠様ありがとうございました。」


 進化後の弱体化と、精神的な重圧に、かなりの疲労がでてきたようで、返事をした後、すぐに、繭の中に戻って行った。

 弱体化中は繭の中が落ち着くのだろう。

 繭の中で、足をゆっくり折りたたむと、繭の壁に頭を添えるようにして、すぐに眠りについていた。


「アリス!大丈夫か!」


 ケッセイの真技を聞いて、固まっていたアリスは、ゆっくりと状況を飲み込み、落ち着きを取り戻していた。


「ええ!大丈夫ですわ。それにしても、ケッセイさんの真技は本当にすごいですわ。これからのキルアント族を率いるリーダーとしてもその能力をいかしていけると思いますわ。」


 アリスは自分で話しをしていて、そこに潜む危険にハッとした。そして、そのことに大きく震えて、しゃがみこんでしまった。


「アリスも気が付いたか!ケッセイの能力は、すでに、王族を超えているといっても過言ではない。しかし、ケッセイにはその気がないので、全く気が付いた様子はなかった。」


 アリスは落ち着きが取り戻せなく、顔だけを上げて、自分を見ていた。


「しかし、明日の謁見では、メーベル女王様、それに、第1近衛の方たちは、必ずそのことに気づかれるはずだ。それまでに、我らに、何かできることがあるのだろうか?」


「ケッセイさんには、ケッセイさんの考えがあるはずですわ。今我々が万全の体制を作ったとしても、ケッセイさんの成長にはつながりませんわ。ケッセイさんの為にも、見守るのも必要だと思いませんこと。」


 いつもは自信たっぷりに、発言することの多いアリスだったが、今回のケッセイの事に関しては、重大さにより、迷いが見て取れた。


 たしかに、気にしすぎることが、本人の為にならないこともあるので、アリスの意見に乗っかることにした。


「そうだな、メーベル女王様の意見を聞いてからでも遅くはないだろう。」


 アリスは迷いながらも、決断を下すところは、王族としての資質からくるものなのだろうかと感心した。

 しかし、早すぎる決断が時に本人を苦しめることがあるのではないかという事を、アリス本人は考えているのか心配な気持ちがよぎった・・・・。


「ところで、アリス!今日、ポイズンバット討伐に行くと、今夜には繭化が始まってしまうと思う。そうすると、明日のメーベル女王様の謁見に参加できなくなってしまうが、どうする?」


「私はメーベル女王様のケッセイに関する決断を聞いておきたいですわ。」


 アリスの中では、明日のケッセイに関する謁見の内容の重大さを考えると、繭化している場合ではなかった。

 それが、わかっていたので、今日のポイズンバット討伐は中止となった。


 と、思っていたところ、目の前にギィがぬっと顔を挟んできた。


「師匠!私はポイズンバット討伐に行くっすよ!だから、アリスちゃんはゆっくり休んでてね。」


 ギィは、戦う気満々だった。

 たしかに、最近はキルアント族の進化の為に、ギィにはフォローばかりさせていたことに気が付いた。


 そういえば、ラージリザードに進化してから、ギィの全力での戦闘能力の確認をしていなかった。

 先の戦いの為にも、ここで、ギィと一緒に戦っておくのも悪くないと思った。


「ギィと一緒に戦うのは久しぶりだな。進化後の力を見せてもらえるか?」


「まかせてください。あたしはやるっすよぉ~!ポイズンバットをメッタメタのギッタギタにして見せるっすよ!」


 ギィの気合も入っているので、久しぶりにラージバットとの再戦を考えた。

 もともと、近いうちに、チーム戦をしておきたいと、考えていたのだ。


「ギィ、今日はポイズンバット討伐の後に、ラージバットと戦闘をしようと考えている。やれるか?」


「ラージバットとは戦ったことがないのでわからないっす。でも、師匠の指示に従って戦えばいいんすよね。」


 ギィは軽く考えているようだが、ラージバットとの戦いでは、余裕をもって指示を出せるとは思わないので、あらかじめ指示を準備しておくことにした。


「ギィ、ラージバットの強さは圧倒的だから、指示を出している暇はないと思う。しかし、相手は1匹だ!こちらは、自分とギィがいるから、うまくいけば、効率よく倒せると思う。そこで、作戦は2つだけだ。自分が、基本的に牽制を行う。そして、ギィは隙をついて、ラージバットの反対側に回り込み、ファイヤーボールを当てる。これが基本だ。」


 ギィに複雑な、戦術をさせようとしても無理なのは、以前の闘いで分かっていたので、出来るだけシンプルな戦術にした。


「師匠と自分で挟み撃ちにするって事っすね。」


「そうだ、よくわかっているな。そして、2つ目の作戦だ!ラージバットがギィの方を向いているときは高速で逃げろ。しかし、上空から降りて、攻撃してくれば反撃していい。どうだ!わかったか!」


 ギィの顔は自信たっぷりとでもいうように、力強くうなずいていた。


「師匠!2つの作戦は、まず、回り込んで挟み撃ちにする。そして、ラージバットが外を向いているときに、ファイヤーボールで、上空から近づいているときは、爪魔法攻撃ってことですね。」


「そうだ!基本的にはそれでいい。後は、ラージバットの魔法攻撃に注意するんだ。ウルトラソニックは速さ減退で、スピードを奪われてしまうから必ず回避するんだ。それと、ウイングカッターは全距離だから、急降下・爪攻撃との使い分で乱されてはいけない。これだけだ!」


「ウルトラソニックには気をつけろということっすね!」


「ああ!まあ、そんなところだ!」


 ギィは、一見、頭が悪そうだが、戦闘に関するセンスというか、勘というか、そこに関しては特別な力を発揮するように思えた。


 まあ、自分もまだまだ、戦闘に関しては学ばないといけないことも多いんだが・・・・。

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