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44 最後の戦いと残念チエさん

 ポイズンバット討伐 20日目


 朝のポイズンバット討伐の為、中央広場に集合した。

 自分の姿を見つけたチエさんが、目をキラキラと輝かせて走ってきた。


「師匠様っ!見てください。我々第2近衛の3名に、進化の印が現れました。ついに!ついに、念願の1つが叶いました」


 遂に、第2近衛の3名にも、進化の印が出たことを嬉しそうに報告してきた。

 しかし、同時に、共に戦う最後の日ということでもあった。


「・・・ですが、師匠様と共に戦えるのも、今日で最後になります。これまで色々を助けてくださいました。ケッセイの事に関しても、感謝の気持ちは語りつくせません。この気持ちを載せて、今日は戦います。ですから、私の戦う姿を見ていてください。よろしくお願いします」

「20日間もの間、共に戦うことが出来たこと、キルアント族の皆さんと交流できたこと、メーベル女王様に出会えたこと等、色々ありましたが、全て、よい経験となりました。本当にありがとうございます」


 あいさつは、ポイズンバット討伐後でもよかったが、繭化に入る前は、近衛としての立場上、色々と忙しいだろうと思い、朝の出発前であったが感謝の意を示しておいた。


「私がこうして進化することが出来たのも、皆さんの協力のおかげっす。それに、この20日間は、本当に楽しかったっす。ありがとうございやしたぁ」

「私はこれから、師匠と共に強くなり、そして、クイーンとしての力をつけて戻ってまいりますわ。それまで、カルナじい様やハルナばあ様、そして、メーベル女王様を支援してくださいませ。よろしくて!」


 こうして、ギィやアリスも近衛3名とあいさつを交わし、中央広場を出発した。


 7名は暗闇の洞窟の前に到着した。


 いつものように、ポイズンバット討伐の為の準備を行った。

 自分を先頭に、縦1列で、ケッセイ、アリス、ギィ、そして、第2近衛の3名の順で並んでいた。


「第2近衛の3名と、ポイズンバット討伐ができるのも今日で最後です。いつも通り、変わることなく戦うことが大切です。準備はいいですか!それでは、始めましょう!!」


 水弾丸(改)網っ!右少し上空っ!

 ブァッ!サ~


「行きます、噛みつき3連撃ィィィ!!!」


 ケッセイは、2日くらい前から、噛みつきの連撃を行えるようになっていた。

 そして、それは、ケッセイだけでなく、第2近衛の3名も同様に行うことが出来るようになっていた。


 水弾丸(改)網っ!次の右っ低空できている!

 ブァッ!サ~


「ギィちゃん、私はまだ2連撃までだから、最後の1匹はよろしくね!」

「アリスちゃん任せて!!」


 アリスは切れのある走りで、網にかかったポイズンバットのところまで行き攻撃を加えた。


「噛みつき2連撃ィィ!!」


 ギィは、アリスを飛び越えるようにして、3匹目のポイズンバットにジャンピング爪攻撃を加えていた。


「爪攻撃っ!」


 サイズの大きくなっているギィの攻撃は、普通の攻撃だったけれど、軽くポイズンバットを倒す威力があった。

 しかも、アリスの攻撃の角度を知っているかのように、全く同じ角度で、飛び込んでいたので、後ろから見ていると、アリスとギィは並んで動いているように見えた。


 第2近衛の3名は、攻撃にも余裕が見えた。

 2日くらい前から、3名ともポイズンバットに3連撃を、打ち込み、打ち込んだ後にポーズまで入れていた。


 チエさんは、手を腰部に当てて仁王立ち。

 チタさんは、片手逆立ち。

 チヌさんは、牙を光らせていた。


 第2近衛の3名はいつポーズを考えているんだろうと思った。

 最後なので、聞いてみたい気がしたが、適当に考えているような気もしたので、やめておいた。


 こうして、朝のポイズンバット討伐が終了した。


 午後のポイズンバットは緊張が切れて何が問題が起こるかもしれないと心配した。


 しかし、発生した問題は・・・・。


 午後のポイズンバット討伐が無事に終了した後、チエさんが自分の側から離れようとしなかったことだ。


 ここで、チエさんの新たな特質『駄々っ子』を獲得してしまった・・・。


「師匠様は、どうして、去っていくのですかぁ~~!!もっと私と一緒にポイズンバット討伐を続けて下さいよぉ~!!!いやだ〜離れたくない〜!!」

「行くぞ、チエ!メーベル女王様に、繭化の前に報告をしないといけないだろうが!!」


 そう言って、チエさんはチタさんとチヌさんに両手をつかまれ、泣きながら、引きずられるようにして、連れていかれた。

 思いを打ち明けた後、振り切ってしまったチエさんは、だんだん残念な女性になって行ってるのが、誰の目からみても明らかだった。


「チエさん!お元気で~~!」


 チエさん達、第2近衛の3名の姿が見えなくなったころ、ケッセイが近くにやってきた。


「師匠様!本当のことを教えてください。私は進化できないのでしょうか?」


 ケッセイは、このまま、ポイズンバット討伐に参戦を続けても意味がないのであれば、師匠様達に迷惑をかけるだけだと考えているのだろう。

 経験値はかなり入っているはずだった。

 チエさん達が繭化したということも含めて、そろそろだろうと、何となく進化が近づいている気はしていたが・・・・・。


 あいまいなまま、確信は持てなかった。


「ケッセイよ!お前には多量のレベルアップが必要なんだ。だが、まだまだ、足りていない。あと、少しのところまでレベルアップは行えているんだ。あきらめずに取り組んでいくんだ。いいな!」


 ケッセイのやる気を続かせるためにも、少し嘘をついた。


「あと、少しなんですね!わかりました。頑張ります」


 ケッセイは、進化まであと少しと聞いて、目をキラキラとさせて、喜んでした。

 キルアント族は喜ぶと、だれでも目がキラキラとなるんだなと思った。女性だけかと思っていたが関係なかったようだ。


 ケッセイの歩みは力強く、その後ろ姿に迷いはなかった。



 ※     ※     ※



 ポイズンバット討伐 21日目


「おはようございます。師匠様!ギィ様!アリス姫様!」


 第2近衛の3名は無事に繭化したので、今日からのポイズンバット討伐は、自分、ギィ、チエ、ケッセイの4名で行うことになった。


「おはよう!ケッセイ!」

「おはようございます!ケッセイちゃん!」

「ごきげんよう!ケッセイさん!」

「ポイズンバット討伐のに対する数は減っているが、やることは同じだ。ただし、ペースは速いので、注意するんだ。ギィはしっかり、アリスのフォローをするんだぞ!」

「はい!師匠。わかっています」


 暗闇の洞窟の前で、いつものように、準備を整えた。


「みんな、準備はいいか!」


 水弾丸(改)網っ!今日は左側連続だ!

 ブァッ!サ~


 ギィはしっかり、アリスをフォローしていた。

 ペースが速い為、後半はアリスの動きに少し乱れが出てきていた。


「アリスちゃん、その角度だと、2撃目が外れちゃうよ!」


 そういって、尻尾でポイズンバットを抑えて、アリスの攻撃を当てさせたうえ、ほとんど同時に、自分の爪攻撃をくらわせていた。


「ギィ!いい動きをしているなぁ」


 ギィの判断と動きをさすがと感心した。


「ありがとう、ギィちゃん!」

「アリス、休憩を入れるか。無理は禁物だ!」

「わかりましたわ、師匠!」


 アリスは自分の状態の事を、よく把握していて、決断力も早かった。


「よし!ケッセイの後は、ギィ単独だ!」

「了解っす!師匠!」


 ポイズンバット討伐 21日目は朝も、夕方も最後の2ターンはケッセイとギィで倒すパターンで終了した。


 ※     ※     ※


 ポイズンバット討伐 22日目


 ケッセイはいつも通り、中央広場に集合していた。

 しかし、進化に関しては何も言わずにいた。

 昨日は、1日で12匹のポイズンバットを倒していた。

 このペースなら、1日でキルアントが進化できた。

 そんなペースなのに、進化できていないのは、不安だろうと思ったが、見守ることにした。


「みんな、今日のポイズンバット討伐もいつも通りにいくぞ!」


 今日のポイズンバット討伐も、いつも通りに終了した。


 ※     ※     ※


 ポイズンバット討伐 23日


 今日も、ケッセイに進化の印は出なかった。

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