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41 ギィの進化と身体能力

ポイズンバット討伐 18日目 終了後


 第2近衛のチエさんがやってきた。普段よりも、足取りも重く元気さが全く見られなかった。


「師匠様、メーベル女王様に、復帰組の参戦の中止を報告してきました。『キルアント族の活性化に水を差すことにならないといいのですが・・・』と非常に残念に思われておりました」


 チエさんはいつものようなキラキラした目がなく、俯き加減で、少し悲し気に報告してきた。


「メーベル女王様が気落ちされていらっしゃったので、ハルナばあ様が『師匠様には、アリス姫様の旅の安全と、進化を協力してもらわんといけんじゃろう、しかたあるまい』そう言って、慰めておられました」


 ハルナばあ様は、キルアント族の心の支えなんだなぁとチエさんの報告を聞きながら思っていた。


「チエさん、辛い役目を申し訳ありませんでいた」


 声をかけると、チエさんは『それが私の仕事ですから』とでもいうように、背筋を伸ばして、第2近衛としての威厳を取り戻していた。


「ところで、チエさん達に進化の印はまだ出てこないのですか?」

「攻撃力や体の動きは、日々、充実してきています。しかし、こればっかりは、予感のようなものはないのです。突然、現れるので、我らとしてはそれを待つだけです・・・」



ポイズンバット討伐 18日目 夜


 南の居住区に戻ってきて、くつろいでいた。


「アリスちゃん、すごくかっこいいよ!真っ赤だね。それに、きれぇ~!」

「ねぇ!師匠もそう思うっすよね~!」

「ああ、そうだな。赤いアリスは、まるで・・・彗星みたいだな」

「彗星ってなんすか?」


 ギィが疑問に思って聞いてきた。


「彗星っていうのは、赤い光の線が流れていくんだ」

「そうそれー!アリスちゃんが移動している時、後ろに光の線が流れていってたっすよねぇ~。あれが、めっちゃ綺麗だったんすよ~!」


 ギィは戦闘中のアリスの動きを思い出して、ウットリしていた。


「私も、この赤い色とっても気に入っているんですの。ギィちゃんや師匠に褒められて、とぉ~ても、うれしいですわ」


 アリスは進化後の体の赤い色がとっても気に入っているようで、ギィに褒められた後、色んなポーズをとって、見せびらかしていた。


「ねえ、ギィちゃん、私がいない間に、ものすごく強くなっているように思いますの。ギィちゃんの動きを目で追うだけでも大変でしたわ」


 次はアリスがギィを褒める番だな。はははっ!!


「たった10日くらいで、あんなに強くなるのは、何か秘密があるのではなくて?」


 ギィはアリスから秘密があるのではないかと、たずねられて困っているようだった。


「う~ん、わかんない!・・・エヘッ!!」


 うん、そうだろう、そんな質問をギィに出しても、わかるはずないよなぁ~。


「アリス、いいか?」

「なんですの?師匠」

「ギィはアリスのいない間に、戦闘能力が上がっている。しかし、アリスの感じている強さではないと思う。違うか?」

「ギィちゃんの戦闘能力が上がっているのは、もちろんわかりますのよ。でも、それだけではありませんの、とっても動きが・・・そう、効率がいいんですの!」


 さすが、アリスだな!ギィの動きの変化をよくとらえているように思う。

 王族の資質に関係があるのかもしれないな・・・。


「ギィは、アリスのいない間、ケッセイとチームを組んで、ポイズンバット討伐にあたっていたんだ。そのため、ギィはケッセイが動きやすいように、また、ケッセイの攻撃力で足りない部分を、ギィが補うように戦っていたんだ」

「そう・・・ギィちゃんは周りを意識して戦いを行っていたんですのね・・・」

「ふ~ん!!そうなのか、私は周りをみて、戦っていたのか・・・。あっ!そしたら、こんなに強くなったのは、ケッセイのおかげだね!次にケッセイにあったらお礼を言わなくっちゃ」

「ふふっ!ギィちゃんたら、変わらないわね」


「ギィ、アリス!そろそろ明日に備えて、休むとしようか?」

「は~い!師匠」

「師匠!おやすみなさいませ」


 ギィのレベルアップも大詰めだろう。数日のうちに進化が来るんだろうな。進化後はどんな姿になるんだろう。


 楽しみだな・・・。


 ギィの進化がどうなるかを考えながら、ウトウトとし始めたころ・・・。


「師匠っ!ぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!!!!!」


 ギィは横になったと思った後、いきなり叫びだした。


「どうした!?」

「なんですの!?」


「師匠!来ます。来ますよぉ~」

「来るって!何が来るん・・・そうか!進化か?」

「はい、師匠!やりました。頑張りました」


 ギィは喜びのあまり、久しぶりのギィダンスを披露した。


 トリプルジャンプからの後方宙返り3回&3回ひねり、着地をしたら、体の中心を軸にコマのように回り、最後は頭と尻尾のジャンプハイタッチ!!しかも、ギィ・アレンジバージョンだった。


「明日が、楽しみだな!」

「ギィちゃんのダンス素敵ですわね、そして、どんな風に進化するのか楽しみですわ」


 ※     ※     ※


ポイズンバット討伐 19日目 朝


「師匠、おはようございます」

「おはよう、アリス。ギィはまだ寝てるな」


 進化は終わっているような様子だったが、ギィはまだ眠ったままだった。


「アリス、ギィは大きくなったな。約1.5倍位かな」

「師匠、体の色も変わってますわ。以前は濃ゆい紫色でしたが、今回は、薄いピンクに体に沿って3本の紫の線が入ってますわね。とぉ~てもかわいいわぁ~。目を覚ましたら、きっと喜びますわよ」


 ピンク色のボディに紫色のラインが入ることで、ふんわりした印象に力強さあった。

 近くで、見ると、表皮は以前よりきめが細かく、硬くなっているようだ。

 それだけでなく、体全体が締まっていて、全体的にスピードやパワーも上昇しているようだった。


 自分の時もそうだったが、体のサイズよりも、筋力の上昇が大きく動きに慣れるためには、訓練が必要だろうと推測した。


 ギィはもともと、身体能力が高いので、すぐになれるだろう。あとは、どんなスキルを獲得したのかだな・・・。

 それは、目が覚めてから確認していけばいいな。


 そばで、ギィを観察していると、ゆっくりと動き出した。


「師匠!おはようございます!ところで、なんでそんなにじろじろと私を見ているんっすか?もしかして!師匠もついに私の魅力に気づいたんっすか?」

「朝から何を言っているんだ。進化が完了しているようだったから、アリスと確認していたんだよ」

「あぁっ!そうでしたっす。師匠!私、昨夜、進化したんっすよ」

「だから、しってるよ。ギィ、自分の体を確認しなくていいのか?」


 ギィは、自分の体つきや、色合いを確認し始めた。


「うわ~!とってもきれいな色になってるぅ~!それに、背中の3本の線、なんかかっこいいっすねぇ!師匠、アリスちゃん、そう思うっしょ!?」

「うん!ギィちゃんとってもかわいいわよ」

「アリスちゃん、ありがとう。アリスちゃんの赤がとってもきれいだったから、自分の色はどんな風になるか心配していたんだよねぇ。でも、こんなにかわいくなって、よかったぁ~」


 ギィが目を覚ましたら、喜ぶだろうと思っていたが、予想以上に大騒ぎだった。

 今日のポイズンバット討伐に、行けるかどうか確認がいるので、騒いでいるギィに声をかけて落ち着かせた。


「ギィ、少し確認したいことがあるんだが、十分喜べたか?」

「師匠!まだ喜び足りないっすけど・・・なんっすか?」

「今日のポイズンバット討伐はどうするんだ?」

「もちろん、参戦っす。この進化した体で、華麗な戦いを披露するっすよ!」

「披露するのはいいんだが、きちんと体を扱えるのか?」

「問題ないっす!それでは、見ていてください」


 ギィはその場で、昨日のギィダンスを披露した。しかも、高さ、スピード、技の切れ共に、大きく向上していた。


 ギィの身体能力は一体どうなっているんだ!?


 自分もアリスもギィの身体能力の高さに目を丸くして驚いていた。


「師匠、それにアリスちゃんも、なんでそんなに驚いているんっすか?昨日よりちょっと体が大きくなっただけっすよ!!」


 自分とアリスは、お互いに目を合わせて、ギィを常識で考えてはいけないと納得し合った。

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