4 レベルアップと強制睡眠
「新世界への入り口かぁ!」
ワクワクしながら、どんなところかを期待した。
まずは、ここから出てみないといけないな。
え~と、これでいいのかな!
体の動かし方を何となくイメージしてみた。
すると、卵の殻からぬるっと滑り出すように体を乗り出して、外に出ることが出来た。
地面は柔らかいなぁ。
湿度があって、蛇でも移動しやすいぞっ。
そうだっ、周りは・・・・安全だな。
ここは・・・・洞窟なのかなぁ。
右側は行き止まりで、左側は・・・どこかに続いているみたいだ・・・。
左側をみると、洞窟が外につながっているように穴が続いていた。
視界を近くに戻してみると、自分と同じような卵の殻が割れているのが見えた。
あっ!もしかして、兄弟がいるのかな。
仲良くなれるといいな。
ところで、今は・・・・・これ、アバターでいいのかな。
アバターだと思うとゲーム時代の自分の理想の部分が顔を出した。
内気の自分は・・・・。
だめだ!!
こんな世界で内気になっていたら、何も出来ない。
だから、蛇ってアバターを利用して積極的になって生きるんだ。
よし、仲間を探そう。
でも、蛇同士ってコミュニケーションとれるのかな!?
とにかく近づいてみようと、外の明かりでまばゆくなっていたことで、少しかすれた慣れない目を調整しながら近づいてみた。
・・・・・惨状をみて茫然とした。
そこにあったのは、踏みつぶされた卵の残骸が散らばっていた。中には卵の殻に血のりがついていて、まるで、殺害現場のようだった。
ついさっき地震のような振動と轟音が鳴っていたのを思い出した。
あれは飛行機とか自身じゃなくて巨大なモンスターだったのか・・・・・。
きっと、そいつが卵を狙ってこの場所に襲撃に来たんだ。
そう言うことなのかっ!!
えっ、でも、なんで自分は生きているんだろう!?
振り返って自分の卵の殻の方を向いてみた。
卵全体が、柔らかい土に隠れて気が付かなかったんだとわかった。
巨大モンスターの襲撃があったにもかかわらず、自分はとても運がよかったんだとほっとした。
ほっとしたところで空腹を感じた。
なんだろう。
お腹すいたな。
そうだ!何かたべるものがいる。
食べないと生きていけない。
何か食べるものがないかと周りを見回してみた。
うす明りの中、今いる洞窟は突き当りになっていて、反対側の洞窟には道が続いている。
洞窟の天井から壁にかけて光を放つコケがあり、それで自分の体が見える位に明るさはあった。
しかし、もっと明るかったとしたら、巨大モンスターの襲撃した後がはっきりと見えたとしたら、そんなことを想像してゾッとした。
他には何かないかと細かく探してみた。
周囲には緑色をしたエノキのような形のキノコの群生、それに、卵の殻の残骸くらいしか見当たらなかった。
まあ、親が卵から孵った後に、生きていけるようにここに巣を作ったんだよな。
だとしたら、ここにあるものは食べることができると思っていいよな。
まずは緑色のエノキのようなキノコを思い切って食べてみた。
おいしくはないが食べれないことはないな。
すると、空腹を満たすだけでなく疲労感がなくなり、すこし元気になったような気がした。
あれ、食べることで何か変化が起きたのかな。
もしかしたら、緑色の植物はこの世界の薬草か何かなのか!?
そうすると、体力回復に使えるかもしれない。
あれっ、そういえば、ステータスってどうやってみればいいんだ。
ゲームみたいにボタンがあるわけではないので、まずは「ステータス」と呼びかけてみた。
・・・・・・・・・・。
何の反応もなかった。
最初にステータスが出た時の事を思い出してみた。
ステータス画面を出すのに、呼びかけたわけではなかった。
それならばと、心の中で考えてみた。
正解だ!
ーーーーーーーーーー
【名前 】 なし
【種族 】 スネーク
【ランク】 G
【レベル】 0
【HP 】 20/20
【体力 】 1
【力 】 1
【知力 】 1
【素早さ】 2
【物理攻撃力】 5(+5)
【物理防御力】10(×2)
【魔法防御力】 6(×2)
【スキル 】
噛みつき ランク1
牙 ランク1(+5)
巻き付き ランク1
【特殊スキル】
卵の殻壁 ランク1(×2)
ーーーーーーーーーー
考えるだけでいいのは便利だな。
HPをみると10/20だったのが、短時間で20/20と完全に回復していた。
やはり、緑エノキは回復薬みたいだった。
食べ物を食べてお腹が満たされたおかげて少し落ち着いたので、これまでの情報を整理することにした。
異世界に転生して、あまりにも弱すぎるステータスを確認をした。
ラノベにあるようなチートな能力はいまいち感じられない。
攻撃ができて、防御力もある。まあ、どちらかというと防御よりだ。
まあ防御力寄りでよかった。
それだけ生き残る確率もあがるからね。
だとすると、敵モンスターとの闘いは、防御しながら攻撃するスタイルか。
生きのびるのに必要なことといえば、まず戦いに勝って生き抜くことだ。
しかし、それだけではない。
どちらかというと敵と戦うよりももっと強大な敵がいる。
それは・・・・・空腹だ。
これを満たさないと、どんなに強くても生きていくことは出来ない。
生切るためには衣食住が必要だからな。
これを準備して初めて生きていくと言える。
・・・まあ、蛇だから。
衣はいらないけどねっ!!
それに、幸い味はいまいちだが、この場所は空腹を満たすことができて、かつ、HPの回復手段もある。
ここは親に感謝だな。
あと、土にも・・・。
土が自分の卵を隠してくれなければ、兄弟たちと同じ運命をたどっていた。
気持ちだけでも手を合わせておこう・・・。
蛇だから手ないんでね。
うん、決めた。
ここはレベルを上げて強くなる為の拠点として最適だろう。
今から、ここで俺は成長するんだ。
あと、空腹とケガの治療はこの緑エノキがある間は問題ないな
次は・・・レベルアップをするか周辺探索をするかだけど・・・。
レベルアップなら戦う敵モンスターの存在を確認すべきだろ。
そのためには周辺探索をすべきか迷うところだなぁ。
・・・・うぅぅ・・・っていうか、探索したいぞっ!
ここには食事兼回復薬としての緑エノキが大量にある。
ならばレベルアップしながら探索も可能ということだろう。
やっぱりこの場所は最高じゃないか!
そうじゃない・・・・・・。
その点に気づいて不意にゾッとした。
もしも、この存在を他のモンスターが知っていたら、今の自分よりも強いモンスターが知っていたら・・・。
現に、おそらく数日前だろう・・・1度、巨大モンスターが来ている。
もしかしたら、あいつが、また、やってくるかもしれない。
もしも襲撃を受ければ、今の自分はあまりにも弱すぎる。
戦うことも、逃げることさえも難しいだろう。
ここは行き止まりで逃げることも出来ない。
あっという間に餌だ。
周辺探索をしたいなんて悠長なこと言っている場合じゃない。
答えは決まっていた。
レベルアップをすることが先決だ。
すぐにでも強くならないといけない。
このままだと、本当に死にゲーになってしまう。
だから、探検や冒険のたぐいではなく、すぐ近くの周辺のモンスターの探索からだ!
ステータスにレベルがある以上、きっとゲームと同じでモンスターを倒してレベルアップが出来るはずだ。
もちろん慎重さも大事だから無理しちゃいけないけど・・・。
でも、少しくらいなら無理してもいいかな。
食べ物と薬草としての緑エノキの確保は十分できているのでなんとかなるだろう。
とりあえず、まずはの方針は決まった。
後は・・・他に何か必要なものは・・・・・。
そうだ、忘れていた!
ここには水場がない!
水場を探さないと、生き物は生きていけない!
大事な事を忘れていた。
生きていくには食べ物だけではなく水が絶対に必要だった。
しかし、この場所には水場がない。
ただし、周辺に湿り気がある以上、きっと近くに水場もあるはずなんだけど・・・。
まあ、水を除けば生活品はそろった。
・・・・といっても、食べ物だけだけど。
次は・・・実際に探索する前に、身体能力を色々と試してみないといけない。自分の能力を知っておかないといけない。これは必須だ!
「己を知り、相手を知れば百戦あやうからずだ!」
まずは、移動からだな。
蛇なのであたりまえだけど2足歩行はできない。TVで見たようにくねくねしてみることにした。
しかし、うまく動けない・・・・。
「なんだ、蛇ってくねくねして移動するんじゃないのか。蛇行って言うのに・・・」
練習が足りないのかと思って、引き続きくねくねしてみた。
くねくね、くねくね、くねくね・・・。
「くそっ!うまく動けないな!」
何度も行っていると、曲がった部分を支点にして、横に移動するのはうまくできた。
「おっ、横にはうまく移動できるぞ!」
そこで、はっと気づいた。
おなかの部分を支点にして、上半身をくねらせ、一気に伸ばしてみた。
うわっ・・・!
前に進もうとしたところ、ものすごい勢いで前にジャンプしてしまった。
あまりに、勢いがありすぎて、洞窟の壁にぶつかって止まった。
ぶつかっただけでなく、ダメージを受けてしまった。
あわててステータスを確認した。
ーーーーーーーー
HP12/20
ーーーーーーーー
ぶつかっただけなのに、半分近くダメージを受けてしまった。
やっばいな。本当に弱っちいなこの体。
突如、周辺探索がかなり不安になってきた。
そんな心配をしているところで、また、頭の中にメッセージが流れてきた。
【卵の殻壁がランク2に上がりました】
えっ、今ぶつかったことで、スキルがアップしたのか?
もしかして誰か見てるのか!?
文句言ったから少し強くしたとか・・・・!?
・・・そんなわけないか。
でも、そしたら・・・・どんどん壁にぶつかればよくねっ。
卵の殻壁のランクがどんどん上がるってことだろ?
いや、ちょっと待てよ。
さっきぶつかっただけでHPが半分近く減ったよな。
あぶない、あぶない、下手したら、壁にぶつかって死んでしまうこともありえるんじゃないの・・・。
ちょっと、この弱さどうにかならないかな。
文句を言いながらも、回復薬になる緑のエノキを食べて、HPを回復してから再度移動の訓練を開始した。
え~~と、それなら、こんどはタメを小さくして前後に動かしてみよう。
すると、まっすぐに進むことが出来た。
なんと、動作を逆にするとそのまま後ろに下がることも出来たのだ。
こうなると子供心がうずきだした。
そうだ、あれだ。
キングコブラのように頭を持ち上げて舌をシュルシュルするのだ。
これは思ったより簡単にできてしまった。
「おお!なんか、かっこいいかも!」
さらに、どこまで首が持ち上がるが試したところ、体の2/3位まで持ち上げることができた。
結構体って上がるんだな。
蛇の筋肉すげぇ!
しばらく、動きを試していると思った以上に色んな方向に進むことができることがわかった。
移動の次は攻撃方法だけど・・・・。
蛇だし・・・やっぱり、巻き付いて噛みつくのかな。
あと、毒とかは持ってないのかな。
まあ、単純に考えて攻撃は噛みつきと巻き付きだよな。
それに、ステータスに毒がないので毒は使えないだろう。
ふっ、ふっ、ふっ・・・だが、しかーーーし、ここまでくれば、異世界だし、必ずあるはずだ。
そう、あれ!魔法だ・・・・・・って、
ステータス何回見ても魔法ないやん!
魔法の項目がないから、魔法は使えないぃぃぃぃぃ!
しょぼん・・・。
それにしても異世界転生で最もわくわくするはずだった美少女やケモミミに出会う機会がなし。
チートな能力もなし。
ただの蛇に転生しただけ。
しかも、魔法も使えないなんてぇぇぇぇぇ!!
無し無し尽くしじゃん!!
せっかく転生したのに、これじゃあ転生難民じゃんかぁぁぁ!!
あああっ・・・死にたい・・。
いやいや、物語の序盤では何もなくても、後半では・・・いつかは・・・きっと何かいいことがある・・・・・・・・・・・・・・・・かもしれない。
蛇好きの美少女に出会うとか・・・・・。
蛇好きな女性とか・・・。
蛇をすいてくれるケモミミとか・・・。
いやぁやぁ~~~こんなポジティブシンキングって、やっぱり無理ィィィィィィ。
ふうっ ふうっ ふぅ。
魔法が使えない事で、荒くなった息を整えてから、妄想はあきらめて現実に戻ることにした。
とにかく今できることを考えないといけない。
まずは攻撃手段の実戦として噛みつきを試してみるか。
しかし、噛みつくことが出来るものといっても石くらいだしなぁ・・・。
石を噛んで牙が折れたら困るしなぁ。
近くで噛みつきが出来そうなものは・・・あっ、卵の殻がある。
卵の殻は食べても大丈夫だよな。
たぶん成分はカルシウムとかだろうから、大丈夫だろう・・・・・・・。
牙を壊さないようにまずはゆっくり噛みついてみた。
パリッ パリパリッ
思った以上に簡単にかみ砕くことができた。
なんだ、この卵の殻!うんまい!しかも、甘みもあるよぉぉぉ!
こちらの世界に来て、口にしたのは味のしない緑のエノキだった。だから、あっという間に、卵の殻一個分全部バリバリしてしまった。
あっ、ヤバ、1個丸ごと食べちゃったよ。
後の為に残しておいた方がよかったかな!でも、まぁ、いいや!
【レベルが1上がりました】
【噛みつきがランク2になりました】
【牙がランク2になりました】
「うわ!びっくりした!」
急に頭の中にメッセージが鳴り響いた為、声が出た。
っていうか・・・・声出てんのかな。
今更だけど・・・。
レベルが上がったり、スキル獲得するのはうれしいけど、突然鳴り響くとびっくりするなぁ。
心臓がバクバクするよ。ほんと!
しかし、レベルが上がったのでステータスを確認してみることにした。
読んでいただきありがとうございます。
「面白い」
「続きが読みたい」
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