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37 進化ラッシュとケッセイの仮説

「朝から色々とすみませんでした」


 第2近衛の3名は、喜びのあまり、騒ぎすぎたことを少し反省しているようだった。


「キルアント族の皆さん、うれしい時はうれしいと喜ぶべきです。喜びは士気を上げ、士気が上がれば、チームワークもよくなる、そしてそれは勝利につながると思います。だから、喜べる時に喜びましょう!」


 軍隊であるとはいえ、喜んでいる姿を見るのは、とてもうれしかったので、思う通りに伝えた。


「師匠様は、どんな時でも、お優しいですぅ」


 チエさんは、尊敬のまなざしでキラキラとした目を向けていた。


「そんなことないですよ、私は皆さんが喜んでいる姿が見れるのが、本当にうれしいだけです」


 尊敬のまなざしを受けて、少し恥ずかしかったので、進化の話に切り替えてみた。


「ところで、進化の印の発生状況はどうですか?」


「えっ、あっ、はい、今朝の報告では、さらに9名のキルアント達に進化の印が現れました。レベルアップによる進化は順調に進行しています。そして、本日の部隊編成ですが、繭化した6名のキルアント達の為、チームに穴が開いてしまいました。待機しているレッドキルアントの1チーム3名を、増員することで、対応する予定です。師匠様、差し出がましい様ですが、アリス姫様が繭化した分を、レッドキルアントから1名向かわせるようにしておくことで、よろしいですか?」


「その必要はないです。アリスのいない分は、ギィがカバーしますので大丈夫です」

「えっ!、ポイズンバット3匹を、ギィ様だけで倒されるのですかぁ~?」


 チエさんの返事は、かなりオーバーリアクションぎみだったが、気にせずに答えた。


「はい、ギィだけで倒します。まあ、もともと、自分とギィでポイズンバット討伐によるレベルアップを行う予定でしたから・・・、今更、問題などありません。ギィもやる気に満ちていますしね!」


 アリスが繭化して、しばらく、参戦できないので、それまではギイだけで戦うことに決定した。


 6名のキルアントが繭化した穴には、第3部隊からレッドキルアントが1チーム増員することにした。



 ポイズンバット討伐 11日目 部隊編成


 第1部隊 第2近衛バレットアントの3名チエ・チタ・チミ

 第2部隊 レッドキルアント 3名×5列 隊長ツウ

 第3部隊 レッドキルアント 3名×1列 隊長ツエ

 第4部隊    キルアント 3名×4列 隊長テト

 第5部隊    キルアント 3名×4列 隊長テイ


 第3部隊 レッドキルアント 3名×4列 (予備)


 この日、ギィは、気合を入れすぎたため、ポイズンバット3匹を右、左、右の爪魔法攻撃3連発で瞬殺してしまった。


 ギィの動きを見ていた、キルアント達は、隠れ洞窟に戻る間中、ギィの側で、その戦闘力をほめちぎっていた。


 特に、いつもはあまり語りたがらないチミさんが、ギィの動きをほめていたのには驚いた。


「今日のギィさんの動きは、とても素晴らしかったですねぇ~。我々第2近衛の3名と戦ったとしても、全く勝てる気がしないですねぇ~。ねぇ~!どうですか、ギィさん!今度、我々と模擬戦でもいかがですかねぇ~!」

「いっ、いやぁ~、自分じゃ勝てるはずないっすよぉ~!かんべんしてくださいっすよぉ~!チミさん」

「そうですかねぇ~。私は大変興味があるんですがねぇ~」


 チミさんは、冗談なのか、本気なのかわからないような口調だったので、ギィは、返事に困ってた。


 物静かに見えるチミさんは、意外に戦闘狂なのかもしれない、そう思わせる話しぶりだった。


 こうしてみると、第2近衛の3名は皆そろいもそろって、意外に個性的だなぁと、このポイズンバット討伐で、ひそかに気が付いた。


 ※     ※     ※


 ポイズンバット討伐 12日目


「師匠様、進化の印が出たキルアント達の報告です。今朝は、ケッセイを除くすべてのキルアント達に進化の印が現れました。そして、昨日、進化の印が現れた9名は繭化に入っています。本日の部隊編成では、3名のキルアント達には、3名のレッドキルアントが補助として参戦します。3名のキルアント達が倒せなかった場合は、レッドキルアント達が倒すということにしています」


チエさんはすこし言いにくそうになったが、一呼吸して続けた。


「あと、通常であれば、ケッセイにも、進化の印が出るはずですが・・・」


 ケッセイはポイズンバットから傷を受けたことによる、毒の後遺症で、進化対象から外れてしまったのではないかとチエさんは考えていた。


 せっかく、命を救ってもらったのに、ケッセイだけが、進化できないとなると・・・。


 チエさんの心の中で、大きな不安がよぎった・・・。


「師匠様は、ケッセイの事をどう思われますか?」

「不安があるのはわかりますが、しばらく様子を見てみましょう。チエさん!、必ずケッセイに進化は訪れます。少し遅れているだけです」

「わかりました。師匠様が、そうおっしゃるならば、しばらく様子を見てみます」


 ケッセイの進化に関しては未知数だったため、本当に進化できない可能性もあった。


 しかし、今は、それを口に出すことはできなかった。


 ・・・仮説検証の為にも、祈るしかなかった。


 祈る先は誰なのかわからないが・・・・・。蛇なので・・・。



 ポイズンバット討伐 12日目 部隊編成


 第1部隊 第2近衛バレットアントの3名チエ・チタ・チミ

 第2部隊 レッドキルアント 3名×5列 隊長ツウ

 第3部隊 レッドキルアント 3名×2列 隊長ツエ

 第4部隊    キルアント 3名×2列 隊長不在

 第5部隊    キルアント 3名×2列 隊長テイ


 混成部隊 レッドキルアント3名およびキルアント3名


 第3部隊 レッドキルアント 3名×2列 (予備)


 心配のあった混成部隊でしたが、レッドキルアントは、さすが、身体能力がキルアント達とは比べ物にならないくらい優れていた。


 そのため、混成部隊とは思えないチームワークを見せていた。


 ※     ※     ※


 ポイズンバット討伐 13日目


「師匠様、進化の印が出たキルアント達の報告です。遂にレッドキルアント達にも、進化の印が現れました。数は3名です。そして、昨日、進化の印が出たキルアント達は全員が繭化しています。レッドキルアント達に進化の印がでるのは、今のメーベル女王様の代になられてから以降、我ら3名のみでした。我れらに、同ランクのキルアント達が現れるなど、まるで夢のようです。しかし、残念なことに・・・やはり、ケッセイには、進化の印は出ませんでした」


 第2近衛のチエさんは、ケッセイが毒を受けたことで進化の道が断たれてしまっているのではないかと考えているようだった。


 そして、それは、チエさんだけでなく、ケッセイ自身も同じような考えを持つようになってきていたことを知ったのだ。


 昨日の夜にギィから、ケッセイが『自分を役立たずとして、悔やんでいる』、だから、何とかできないかと相談を受けていたのだ。


 そして、ギィはケッセイから聞いた次の言葉を話してくれた。


「わたしは、大きな失敗をしてしまい、師匠様やギィ様に迷惑をかけ、さらに、進化も出来ない役立たずが、このまま生きていていいのでしょうか?」


 ケッセイはかなり追い詰められている為、ギィにその心の内を語ったのだろうと理解した。


 ところで、ギィは、いつケッセイとそんな会話をするような仲になったのだろう。

 アリスの時もそうだったが、不思議だ・・・。


 自分は、確証はできないけれども、この問題の解決策は簡単であることはわかっていた!


 チエさんとケッセイに、自分の仮説を伝えるだけでいいのだ!

 それで、チエさんとケッセイはきっと安心できるはずだ・・・。


 しかし、それを伝えることは、今だけの安心に過ぎない・・・じゃないのか。

 そして、チエさんとケッセイを期待させておいて、その仮説が間違いだったとしたら・・・。

 さらに、チエさんとケッセイを傷つけることになる・・・・・・・・かもしれない。


 選択肢は・・・?!


 誰か教えてくれ・・・。


 ・・・・・・・・。


 ・・・・・・。


 ・・・・。



 いや、答えは決まっている。



 仮説が間違いだったなら、頭を下げて謝れば済むことだ。

 ケッセイが生きてさえいれば、何かの形で報いることが出来るはずだ・・・。


 ケッセイが生きてさえいれば・・・・・。


 しかし、もしもケッセイが命を落としてしまうようなことになったら。



 ・・・・・・・・・取り返しがつかない。

 



 

 

 ・・・決めた。


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