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31 ポイズンバット討伐初日

 ポイズンバット討伐初日


 中央広場に行くと、選抜戦士たちが集まって、皆、一撃必殺である最強武器の噛みつきの訓練を行っていた。

 その姿はさすが選抜されたキルアント族の戦士といってよく、力強さもあり、士気も高く、意欲にあふれていた。


 自分達の姿を見ると、一斉に整列して隊列を組みなおしていた。

 全員の動きが止まった後、共有意思のスキルを持っているかの確認も含めて声をかけた。


「今日はみんなよく集まってくれた!」

「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!」


 士気もやる気も十分だなぁ。


「繰り返すが、この暗闇の洞窟への侵攻では死者ゼロを目標とする!いや、死ぬことは禁止とする!必ず約束を守れよ。自分の為ではない、お前たちの家族の為に約束するんだ。いいかぁあ!!」

「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!」


 選抜戦士たちの声ははずんでいた。


 ていうか、はずみすぎだろう。

 大丈夫かなぁ。

 まあ、とにかく、約束はまもられそう・・・かな!


 まずは、実際に戦ってみてから考えることにしよう。


 部隊は5部隊で編成された。


 第1部隊 第2近衛バレットアントの3匹チエ・チタ・チミ

 第2部隊 レッドキルアント 3匹×5列 隊長ツウ

 第3部隊 レッドキルアント 3匹×5列 隊長ツエ

 第4部隊    キルアント 3匹×5列 隊長テト

 第5部隊    キルアント 3匹×5列 隊長テイ


 初日は攻撃力があり動きのわかっている自分・ギィ・アリスの3名で先頭を固めることにした。


 最初が肝心と思って配慮した結果だ。


 1度に戦えるポイズンバットの数が10組~12組程度であることを考慮して、第2部隊と第3部隊は朝と夕方で入れ替わることで調整した。


 レッドキルアントには出来るだけバレットアントに進化の可能性を期待したので、予定の倍の部隊を配置した。レッドキルアントはキルアント達を指揮する能力がある。だから大規模部隊を指揮できる戦士が増えるとそれだけで、キルアント族の戦力増強につながると考えた結果だ。


 初日の午前は第3部隊(15匹)を除く、第1部隊(3匹)・第2部隊(15匹)・第4部隊(15匹)・第5部隊(15匹)で合計48匹の戦士と我々3名の全51名でポイズンバット討伐に向かうことになった。


 全51名の大部隊でぞろぞろと歩く様子は壮観だった。戦士達みんなの足取りはビシッとそろっていてさすが軍隊といえた。


 それでも、皆、緊張しているのか声を上げるキルアント族はいなかった。


 暗闇洞窟に到着して、中に入る前にもう一度流れを確認しておいた。


「選抜戦士のみんな!自分とギィとアリスで最初に突入するからしっかり見ていてくれ」


 自分達は、最初に水弾丸(改)網を打ってポイズンバットをキャッチしたら、左は自分、真ん中をギィ、右をアリスと分担わけをするように移動中に打ち合わせておいた。


 まずは、いつも通りに戦闘準備として鋼外殻とサーチをかけて・・・・。

 ポイズンバットの配置はどうかな・・・よしよし、配置は想定どおりだ。

 これなら予定通りキルアント族のポイズンバット討伐出来る。


「ギィ、アリス行くぞ、準備はいいか?」

「それから、戦士のみんな!ポイズンバットは連続で飛んでくるので、自分の前のチームが出たら、すぐに網の方向をしっかりみて対応してくれよ」

「師匠!いいっすよ!」

「準備できましたわ、師匠!」


 一応警戒しながら自分が先頭で進むと、ボイズンアントの気配察知を感じた。


「ギィ、アリス!ポイズンバットが動くぞ!」


 ポイズンバットの先頭の3匹が飛んできた。

 上空から一気に降下して、洞窟の左側の壁の方向からカーブを描くようにして攻撃してきた。


 水弾丸(改)網!

 ブァッ!サ~


 水弾丸(改)網が完全にポイズンバット3匹を捕らえた。


「爪攻撃!右!左!」

「噛みつき!」

「水弾丸(改)槍!」


 我々3名はいつもの通りにポイズンバットをそれぞれ1撃必殺で倒した。


「決まったっす!」

「決まりましたわ!」


 ギィとアリスはお互いに攻撃が決まったことを喜び合った。


 先頭のポイズンバットが飛び立つと、2番目、3番目以降は次々と連続で一気に降下してきていた。


 自分が最初にポイズンバットを攻撃したときには、すでに、次のポイズンバットは飛行を初めていた。


 キルアント族の為に、飛行ラインを確認し、同時に、第2近衛の3匹にも声をかけないといけない作業に、少しあわててしまったが、現在のすばやさで何とかぎりぎり対応できた。


「次、右の壁の側から飛んできますよっ!その次は真ん中で少し上空を飛んでいます。攻撃チームは注意してください」


 水弾丸(改)網っ! 右っ!

 ブァッ!サ~


 第2近衛の3匹はさすがベテランという雰囲気で、指示通りにそれぞれがポイズンバットを一撃必殺で倒していた。


「止まっている相手であれば、ポイズンバットであっても倒せるもんだな!」

「さすが、師匠様ですね!」

「師匠様が味方になってくれてよかったですよ!」


 あまり褒めると調子にのっちゃくよっ!

 ・・・って、次来てるよ。


 水弾丸(改)網っ! 中央!!

 ブァッ!サ~


 2番目に攻撃態勢に入った隊長ツウ率いるレッドキルアント3匹も落下してくるポイズンバットをワンテンポ遅らせてタイミングを合わせて一気に倒してしいた。


 水弾丸(改)網っ! 右!

 ブァッ!サ~


 水弾丸(改)網っ! 右少し低空!

 ブァッ!サ~


 水弾丸(改)網っ! 中央!

 ブァッ!サ~


 さすがレッドキルアントのチーム達だ!ツウ隊長の後も問題なく抜群の連携で倒していった。


「後5ターン!キルアント達気をつけろよ!次は、左から連続で来るぞ!」


 水弾丸(改)網っ! 左壁ぎりぎり!

 ブァッ!サ~


 水弾丸(改)網っ! 左少し上空!

 ブァッ!サ~


 次はキルアント達のターン。攻撃力が下がる為、非常時に備えて、数も倍の6匹にしておいた。


 その為、レッドキルアント達とは違って、自分の右に3匹、左に3匹に分かれて両サイドに配置しておいた。


 両サイドからアタックをかけるので、攻撃をした後に後続のキルアント達が交差時にぶつかるのではないかと心配したが、そのための訓練を準備していたようで問題なく通り抜けていた。


 まるで、新体操で行われる交差歩行のようだ。

 とても綺麗だっ!


「うまく連携取れているな!あと少しだ!みんな緊張感を維持するんだぞ!」


 このままいけば初戦は大成功でだな。


「さらに左側に続いている。後から来るキルアント達に注意するんだ!」


 水弾丸(改)網っ! 左壁側!

 ブァッ!サ~


「左側に移動できるスペースがほとんどなくなっているぞ無理してはいけない!」


 確実に1匹の移動スペースがなかったが、一番左端のキルアントが壁の凹凸を利用して斜面を全力で走り出した。


「さすが選抜を勝ち抜いてきたキルアント達だ。壁まで利用してすごいな!いいか!次も左側にきている少し上空を飛んでいるぞタイミングに注意するんだ」


 水弾丸(改)網っ! 左少し上空!

 ブァッ!サ~


 ポイズンバットが4回連続で左側に攻撃を仕掛けてきていたので、攻撃の終わった3番目のキルアント達とこれから攻撃する4番目のキルアント達でかなりごちゃまぜ状態だった。


「そこっ!中央のやつっ!!タイミングが遅れてるぞ!周りフォローするんだ!」


 止めを刺した3番目のキルアント達は左右に広がるように戻ってきていた。しかし、このままでは、左の壁を通ってきた1匹の為に正面からくる1匹と正面衝突してしまう。


 そのせいで、攻撃に入っている4番目で左側に並んでいたキルアント達の攻撃ルートが1匹分中央に寄って移動しないといけない状況になっていた。


 まずいっ・・・攻撃ルートが1匹分足りなくないか!

 しかしもう間に合わない!


 洞窟の左側では完全に1匹のルートがなくなっていた。


「ルートのないやつっ!無理するなよっ!!」


 ぶつかってしまうのだけは避けてほしいと思い、とにかく促してみた。


 声をかけたが4番目の左側のチームの動きは変わらずに走り抜けていた。


 あぶない!巻き込まれる!


 そう思った瞬間、ルートがなくなっていたキルアントは右隣のキルアントの上にのりあがった。そしてそのままさらにその隣にいたキルアントの背中を駆け抜けるように超えて、結局一番外側まで移動していた。


「おぉ~!お見事!いいもの見せてもらったよ!」


 少しタイミングがずれていたが何とかぎりぎり攻撃も間に合ったようだった。


「ギリギリに見えたがケガはないなっ!おっと!最後のポイズンバット達がきているなっ!こいつらは中央だ!」


 水弾丸(改)網っ! 中央!

 ブァッ!サ~


 しっかりスペースもあったので危なげなく最後のチームがポイズンバットを倒していた。


「みんな、大勝利だ!」

「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!」


 初戦は1匹もかけることなく完全勝利だった。


 ポイズンバット討伐中、特に気になるようなおかしなこともなかったし、討伐後に何か様子がおかしいキルアント族もいなかったので、これなら問題はないだろうと心配しすぎる自分を打ち消した。


 キルアント達は歓声を上げている中、チエさんチタさんチミさんが自分の方へやってきた。


「師匠様!夢のようです。完全勝利です。我らキルアント族にこのような日が来るなんて・・・」

「おう!師匠様!サイコーだよ!!」

「完璧なる策恐れ入りました。師匠様」


 3匹は各々各自の最高の褒め言葉をかけてくれた。


「危うかった状況もありましたが何とかなりました。さすが皆さま!訓練のたまものですよ!!」


読んでいただきありがとうございます。

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