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25 スキル 共有意思

「ギィ、アリス、お前らさっきまで敵同士だったのになぁ。いつの間に仲がよくなったんだ!」


 ギィとアリスはキョロキョロと周囲を見回していた。


 突然、声をかけられて驚いていたようだった。


 そして、声の主が自分しかいないことを確認して、最後にこちらを見ていた。


「えっと・・・あの・・・その・・・もっ、もしかして今話しかけてきたのは・・・しっ!師匠ですかぁ!?」


 あ~、師匠か!

 やっぱりギィは師匠って呼んでいたんだね。

 ギィやアリスの言っていることがなんとなく分かったのは、やっぱりスキル共有意思があったからなんだなぁ。


 そう考えていると、ギィは大声で「師匠ぉぉぉ~!」と言いながら全速力で自分の方へ走ってきた。


 アリスはどう対応したらいいのか迷っている風で、その場でもじもじしていた。


「そうだよ。今お前たち話しかけているのは自分だ!ギィ、そしてアリス」


 アリスは自分の名前を呼ばれ、ビクンッ!と驚いていた。


 それでも名前を呼ばれると、ゆっくりと自分の方まで歩いてきた。


「師匠!師匠!師匠ぉぉ!話が出来るよぉ~うれしいよぉ~師匠!」


 ギィのあまりの喜びように困ってしまったが、会話が出来ても目をキラキラさせて話しかけてくるのは変わらないなと思った。


「わかったよ。なぁギィ、そう何回も師匠って呼ばれるとなんかくすぐったいよ」


 少し照れ臭そうにして、頭をポリポリかきながら・・・

 って、手がないから尻尾で頭をかいてるけど・・・蛇だから・・・。


「すんません、師匠!でも、なんで、急に話が出来るようになったんすか?」

「そうですよ。師匠はギィちゃんとの付き合いが長いから不思議じゃないですけれど、私なんてさっき会ったばかりですしね!」


 おっと!いきなり二人から質問攻めだ!


 しかも、アリスも自分のこと師匠ってよんでるよ。


「うん、そうだね。今後のこともあるから説明しておくよ」


 ・・・ステイタスの事は、話してもきっと2人にはわからないだろうから・・・


「自分も、まだよくわからないんだけど。仲間になったら自分の加護を相手に与えることが出来るみたいなんだ」

「えっ!それって精霊の加護みたいなものですの?」


 アリスは魔法や精霊について詳しく知っているようでダイレクトに質問してきた。


 ギィはやはりよくわかってない風だったが「うんうん」といかにも「私もそう思うっす」って顔でうなずいていた。


「えっあっうん!・・・そこはまだよくわからないんだ。だけど共有意思っていうスキルがあって、ギィとアリスを登録したら突然話が出来るようになった。しかも、この共有意思は少し離れた場所にいても会話が可能みたいなんだ。つまり、普通に会話できるって事みたいなんだよ」

「そしたら、私と師匠はいつでも会話ができるって事っすよね!きゃ~!」


 おいおいギィ!何で女子高生みたいにはしゃいでいるんだよ。

 まあ、ギィとは短い間だったけど色々あったからな・・・。

 でも、会話が出来きるようになってもイメージと変わらないな。


「あっ!師匠、そういえば我々キルアントも戦闘時に指示をもらっていましたの。レッドキルアントのリーダーからだけでしたけれども・・・。う~ん、普通の会話とはちょっと違う感じだけど・・・」


 アリスの言葉にうなずきながら、心の中でありんこ達ってキルアントだったんだと驚いていた。


 そして、赤色ありんこはレッドキルアントっていうんだ。フーン!


「おそらく、同じようなスキルに違いないな。全く同じスキルかどうかは判らないが・・・」


 自分の場合は保護の中に登録したことでスキルとして共有意思は反映された。

 もしかすると何らかの補正がはいる可能性があるとは思うんだが・・・今のところは様子見だな。


「アリス、もし何か普段のキルアントの成長やスキルと違うことがあれば教えてくれ!」

「あ~、ギィもな!」

「師匠!、今私の事おまけみたいに言ってなかったすか?」

「そんなことないぞ!ギィも新しいスキルを獲得したらどんどん教えてくれよ」

「わかりました!師匠、任せてくださいっ!」


 ギィは任されたのがうれしかったのか、目をキラキラさせて元気に返事をしてきた。


「え~とっ!少し話しにくいんだが、アリス。・・・今後の事になるんだが・・・」


 今後、先に進むにあたって、からなずありんこ洞窟を通らないといけない。

 そのため、ありんこ達・・・いや、キルアント達と敵対することは間違いない。

 会話が出来なければ、なんとか見ないふりも出来たが・・・。

 ここまで、会話ができるとなぁ・・・・・。


「わかっておりますわ!師匠!1つ私から提案がございますの!」


 アリスが真剣な顔をして、提案があると言ってきた。

 これまで、自分に対する話し方にしても、魔法や種族に関する知識にしても、キルアント族の中では上級クラスのお嬢様ではなかろうかと感じさせられることが多々あった。

 キルアント達にそんなクラスがあるのかわからないけど・・・。


「ねえ!アリスちゃん。何が判ってるの?私には話がよく見えてこないんだけど・・・」

「う~ん!そうね、ギィちゃん!そしたら師匠も一緒に聞いてもらってもいいですの?」

「ああ!いいぞ!」

「実は、明日の朝に話をまとめてから、師匠とギィちゃんに話をしようと思っていたんですが、え~と!何から話したらいいかしらねぇ~。いいわ!単刀直入にいいます。ラクーンキルアントの女王陛下メーベル様と師匠とで休戦協定を結んではいかがかと思いまして!」


 アリスはいきなりとんでもないことを言い出した。

 たしかにキルアント族と自分が休戦協定を結ぶことが出来たら、ありんこ洞窟の通過もアリスの事も同時に解決できる。

 しかし、自分はこれまでキルアント族を何百と倒してきているのだ。

 それに対してなんの償いもなしに休戦協定を結ぶことなど、許されるはずがない。


「アリスよぉ。そんなことが本当に可能ならこんなに悩んでないんだがなぁ・・・言いにくいんだが・・・自分は何百もの・・その・・アリスの同胞を倒してきているんだぞ!それをいまさら休戦しましょうって言って休戦できるはずがないだろう」


 そんな夢みたいなことを考える前に、他の方法がないか考えた方が建設的だろう。

 そう思い、これから明日まで3人で考えた方がいいと提案しようとした。

 しかし、アリスは何か心を決めたように力を込めていたのでアリスの返事を待ってみた。


「私がお母さまを説得いたしますわ!」


 アリスの突然の発言に耳を疑った。


「えっ、今なんて?お母さま?!って言ったのか?」

「え~!女王様って、アリスちゃんのお母さんなの?」


 自分はギィと目を合わせて今の言葉が本当かと確かめ合った。


「ええっ!そうですの。現ラクーンキルアント族の女王陛下メーベル様は私のお母さまです。そして、私は次期女王候補の一人ですの。・・・といっても女王候補は私一人なのですけれど・・・。誰かさんのおかげで・・・」

「・・・すまない」

「いいえ、師匠が謝る必要はございませんの。このラクーン洞窟では強いものが生きる。弱いものは死ぬ。これが最低限のルールですから」


 これまでのアリスを見てきて、色んな知識や潔さから人間なら上級貴族くらいの地位のお嬢さんだろうと思っていたが・・・。

 それがなんと女王様のしかも一人娘だったのか。

 まあ!それなら何とか・・なる・・・かもしれない。

 まあ、最終手段もなくはないからな!


「よし、わかった!女王様の説得は任せたぞ、アリス。もしも、条件を出されたならば可能な限り引受けるつもりだ。・・・ただし、自分に最終手段を使わせないようにな、約束してくれ、頼むぞ!」

「はい、心得ております。師匠」


 力強く返事をしていたアリスだが、体全体が小さく震えていた。


 まだ年若い(たぶん!?ありんこだからよくわからないが・・・)アリスに、このような重責を負わせるのは心苦しかった。


 しかし、王女としての責務を、一生懸命に果たそうとする姿に、もしもどのような難題を出されても絶対に応えてみようと決意した。


「出発は明日の朝だ!今日はしっかり休んでおくんだぞ。いいなお前たち」

「はい、師匠!」

「わかりましたわ、師匠!」


 キルアント族との交渉が平和裏に解決できることを祈りながら眠りに落ちていった。

読んでいただきありがとうございます。

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