表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/238

21 ギィのレベルアップ 前編

 ギィは毎日6匹のスライムを倒してレベリングを行っていた。


 住処の洞窟内で1日に倒すことが出来るスライムは6匹だった。


 朝3匹倒すと、夕方に3匹復活しているのだ。


 どこから湧いて出てくるのかわからないが確実に倒すことができる数だった。


 ギィは日々スライムを倒している。


 しかし、いつレベルが上がっているのか、今レベルがどれくらいなのか、スキルや耐性がどうなっているのか、全くわからないままだった。


 何を聞いても、目をキラキラ輝かせて「ぎぃ~~~」としかいわないから・・・。


 ただ、レベルが上がっているのは間違いなかった。


 それは、スライムを爪攻撃の1撃で倒せるようになっていた。


 攻撃力だけでなく防御力も向上していた。


 水弾丸一発位なら受けても平気で反撃することが出来るようになっていた。


 そして、昨日はなんと「ファイヤーボール」を放ったのだ。


「ギィ!、今のは魔法なのか?」


「ぎぃ~~~♪」


 そうだよすごいだろ!レベルが上がって魔法が使えるようになったんだと言っている気がした。


 いつの間にか、遠距離攻撃をすることが出来るようになっていた。


 最近は、体も少したくましくなり、攻撃力と防御力がアップしているのは間違いないので、そろそろ、毒蝶々のいる大洞窟へ出てみようと考えた。


「ギィ!そろそろ毒蝶々討伐を始めようかと思うがどうだ?」


「ぎぃ~~~」


 やっと!僕の強さを認めてくれたんだねと言っている気がした。


「ただし、毒蝶々の毒鱗粉には気を付けるんだぞ!いくら強くなったからと言って・・・・静かにっ!!」


 ギィに毒蝶々の注意をしている最中、自分の気配察知に緊急で最大限の危険を感知した。


 来たっ!あいつだ!

 そろそろ来るんじゃないかと思っていた。


「ギィ、絶対にしゃべるんじゃないぞっ!」


 かすかに、地面から振動が伝わってきていた。


 そして、その振動はだんだんと大きくなっていた。


 間違いなく、こちらに近づいてきてきている。


 なんだ!?


 近づいてくるスピードがかなり速いぞ。


 まずい、時間がない!


 そう思い、ギィを尻尾につかんで全速力で水辺まで進んだ。


 隠密をかけなくても、自分が動く時はスライムや毒蝶々は姿を見せない。


 しかし、今はやつが来ているので、スライムも毒蝶々も警戒しているのだろうすでに近くにはいなかった。


 前回、水の中に体を隠して回避する事が出来たので、今回も同じようにした。


「ギィ!何があっても、体を動かすな、そして、声も出すなよ!」


 そう、小声でギィに伝えた。


「ぎぃ~~~」


 どうしたの急に?でも分かったといっている気がしたので、2人とも呼吸ができる状態で、水の中に隠れていた。


 そして、だんだん大きくなる振動、そして、轟音!


「ぎゃおおおおおおおおおおおおお!」


 すぐ側で鼓膜が破れてしまうような轟音が響いた。


 そしてそのすぐ後に体を支えられない位の大きな振動がすぐ側まで来ていた。


 今までにない強烈が現象にギィが驚いて、声を出してしまうのではないか?


 ギィには隠密がないので気づかれてしまうのではないか?


 心配で心臓がバクバクいって破裂しそうだった。


 ギィの方をそっと見ると、目をつむって小刻みに震えていた。


 眼前に見える巨大モンスターの威圧感と存在感にビビッてしまっているのは間違いなかった。


 そっと、ギィの体を尻尾と体で包み込み寄り添うことで震えが止まった。


 包み込んだ瞬間、ギィは目を開けてこちらを見たが、安心したのかそのまま目をつむってじっとしていた。


 ギィの姿を見て以前の自分を思い出した。


 そうだ今のギィと同じように震えて目をつむっていた。


 しかし、今は違う。


 でかこうもりとの戦闘で自分も力をつけていたことを実感していた。


 自分は、来るべき日の為にやつの姿を確認することにした。


 やつは自信満々に周囲を威圧するように4足歩行をしていた。


 その足には大型の爪が付いていて、今の自分ですら1撃で倒されるだろうと感じさせるに十分だった。


 口元にはどう猛な牙が並び、幾多の戦闘をこなしてきた強靭な顎と風格を漂わせていた。


 頭の先から尻尾の先までは前回と変わらず20m位だったが、筋肉が盛り上がり胴回りは確実に大きくなっているように見えた。


 やつも、激しい戦闘を繰り返す毎日を過ごしているのだろうと思えた。


 種族的にはギィと同じトカゲだろうと思った。


 ギィがファイヤーボールを出せるようになったことから、やつも物理攻撃だけでなく魔法を使ってくるだろう。


 そう考えるとまだまだ情報は足りないな。


 それでも、これだけ確認できたのは幸いだった。


 今回もやつは住処の洞窟の中に入って行き、同じように中で一度だけ轟音を轟かせていた。


 側にいたギィは一瞬ビクッ!としていたが、側にいることで安心しているのかそれ以上の動きはなくじっとしていた。


 その後は、何も収穫がなかったことに不機嫌な様子で、ぎゃぁぎゃぁとわめきながら帰って行った。


 危機が去って、二人で目を合わせて何もなかったことに安堵した。


 この水辺の巨大な花畑は毒蝶々の生息地だった。


 今の状態で攻撃を受けるとギィをかばいながらの戦闘は難しいかもしれないと不安になった。


 それにギィが毒鱗粉を食らうとまずいので、急いで住処の洞窟へ戻る為サーチをかけた。


 近くに反応がある!


 真上か!


 1・・2・・3匹いるっ!


 やばい!


 水弾丸を3発放ち毒蝶々を直ちに仕留めた。


 しかし、毒蝶々は大量の毒鱗粉をすでに放出していた。


 毒鱗粉を倒したことを確認してすぐに、側にいたギィの姿を見た。


 すでに大量の毒鱗粉を食らっていた。


 これほどの至近距離でこの量は・・・耐性がなければ致死量!!


 ギィを見ると、呼吸が荒くハアハアと大きく体で呼吸をしていた。


 体の動きが低下して、わずかに痙攣も見て取れた。


「くそっ、自分が付いていながら!あれほどギィを危険な目に合わせないって誓ったのに。くそっ、何やってるんだ」


 ギィを抱えて、全速力で緑エノキのところまで戻った。


「ギィ、がんばるんだ!死ぬんじゃない」


 住処の洞窟の奥に向かいながら、ギィの様子を見ていた。


 先ほどの状態から悪化することなく、どちらかと言えば、顔色もよくなっているような気がしてきた。


「ギィ、大丈夫・・なのか!?」


「ぎぃ~~~」


 なんか、大丈夫みたい。たいぶよくなってきたよと平気そうな感じであっさりと言っている気がした。


「なんだ、ギィ、もしかして毒耐性があるのか?」


「ぎぃ~~~?」


 頭を横に倒して、よくわからないと言っているように見えた気がした。


「今のギィが毒耐性を持っているってことは、ポイズン系のモンスターってことだよな。じゃないと初期の幼生体で毒耐性持ちってすごいな。将来が楽しみだ」


「ぎぃ~~~」


 えっ、今の褒められてるのって言っている気がした。


 しかし、あまり褒めると調子に乗りそうなので、


「毒蝶々の毒くらいで動きが低下するようじゃあ、まだまだだな・・・」


 嘘をついた。


 毒蝶々の毒は耐性がないと、かなり厄介だったので、警戒心を植え付けるためにも仕方がなかった。


「ぎぃ~~~」


 毒蝶々の毒鱗粉には気を付けますと言っている気がした。


 い心がけだと思い、頭を尻尾でなでてあげたら喜んでいた。


 毒耐性があるなら毒蝶々でレベリングも可能だ。


 今日は、やつのことやギィが毒を受けて死ぬんじゃないかと心配して心労が強かった。


 時間はあったが、そのまま住処の洞窟の奥に戻って、毒蝶々でのレベリングについてギィと打合せを行うことにした。


「明日はファイヤーボールを使って、毒蝶々と戦うんだ。一度の戦闘で何発のファイヤーボールを打てるか確認してみような。それからファイヤーボールを打てなくなったら、ジャンプしての爪攻撃だ。ただし、毒蝶々はああ見えて素早さが高いから、ヒラヒラとかわされて毒鱗粉の餌食にならないように気を付けるんだぞ」


「ぎぃ~~~」


 ファイヤーボールを使って闘い、毒鱗粉に気を付ければいいんだねと言っている気がした。


 返事が軽いので、毎回、大丈夫かなと心配になってしまう。


 娘のことを心配しすぎる父親のようだ。

 あれ、今、娘っておもっちゃたけど・・・・。

 ギィの性別ってどっちなんだろう。

 う~ん!どっちでもいいか!

 でもあんなに、目をキラキラ輝かせて男だとすると・・・・。

 まあ~、それもありかな。

 美少年?!いや、美トカゲかな!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ