209 (sideギィ)アンデスの要求
スノウラビット族 アンデス (衛兵隊長:白熊討伐派)
レニーエス (アンデスの妹:白熊討伐派)
アリウス (スノウラビット族の族長で穏健な白熊討伐派)
ロレンズ (スノウラビット族の族長補佐で穏健な白熊討伐派)
ターキウス(スノウラビット族の前族長で苛烈な白熊討伐派)
「アリウス族長っ、どうして戦おうとしないんですか?」
アンデスはアリウス族長に食ってかかる勢いで詰め寄っていた。
ここは村の最奥にある族長テントの中に、族長であるアリウス、部隊長のアンデス、そして、族長補佐のロレンズがアンデスに対峙するように座っていた。
アンデス隊長がアリウス族長に話あるというので、族長補佐のロレンズを同席させていたのだ。
「それは何度も皆の前で説明しただろう。アンデス。過去の戦闘であまりにも多くの犠牲を払いすぎて今はまともに戦える戦士達は少ないじゃないか?」
この村での今後の方針として、しばらくは戦闘をせずに犠牲享受派と同じように生け贄をだして現状を維持する事とする方針を出した矢先にアンデス隊長が乗り込んできたのだった。
「そっ・・・それは、そうですが・・・」
アンデス隊長は理由を理解はしていたが、どうしても納得できなかった。それに、戦士が足りないのであれば、犠牲享受派の中の若い連中に声を掛ければ、もしかすると、我ら討伐派の考えに賛同する仲間が出てくるかもしれないという思惑があった。
「何も戦わないと言っているわけじゃないだろう。それはわかるよな。アンデス」
「だけど・・・アリウス族長は先ほど戦士が少ないと言っていたのに、どうして、ターキウス前族長を追放したんですか?アリウス族長の言っていることとやっていることが違いすぎていて納得できない」
ターキウス前族長は白熊討伐に関して積極的であった。あまりにも苛烈に討伐の為の部隊をぶつけすぎた為に戦士が減りすぎて、白熊討伐どころか、スノウキャット達の攻撃から身を守るための部隊の存続ですら危うくなって来ていた。
そして、一部のうわさでは苛烈に討伐部隊をぶつけすぎるから、今のアリウス族長たちによって無理矢理追放処分にしたのではないかというものだった。
「それは皆にも説明があっただろう。ターキウス前族長は禁忌の実であるミンザの実を使って、大事な食糧を奪った罪だと」
「そんなの嘘のでっち上げだという噂があるじゃないですか?現に自分もターキウス前族長がそんなことぐらいでミンザの実を使うなんて信じられません」
アンデス隊長はうわさを信じているわけではなかったが、直属の部下であり、よく知っているターキウス前族長がそんなことでミンザの実を使うことは絶対にないと確信があった。
ただ、ターキウス前族長はどこか得体のしれないところがあることに関しては否めなかった。
「私も何のためにターキウス前族長が食料を盗むためにミンザの実を使用したのかは知らない。だが、この村でミンザの実の無断使用と大事な食糧の盗難といった大罪を犯したことは間違いないんだ。それに、もう今更ターキウス前族長の追放を取り消すことはない」
アンデス隊長はアリウス族長の言葉をどうしても信用できなかったが、族長にここまで強く突っぱねられるとそれに対してこれ以上の反抗は出来なかった。
「そんなの横暴じゃないか?俺は戦いますよ。すでに同士はそろっています。アリウス族長がなんと言っても我々は戦いますから。たとえ自分が独りになったとしてもです。失礼します」
「無茶をいうな。アンデス・・・・待て、アンデッ・・・・・ス」
アンデス隊長はアリウス族長が制止するために呼び止めていたが、その制止を振り切って族長テントから振り返ることもなく出て行った。
アンデス隊長の足音が聞こえなくなった後、アリウス族長とロレンズ族長補佐は顔を寄せ合って小さく語り始めた。
「アリウス族長・・・」
「なんだロレンズっ!何が言いたい」
アリウス族長はロレンズ族長補佐にわかっているから言うなとでも言うように頭を下げて言葉を切っていた。
「アンデス隊長にターキウス前族長の真実を伝えなくてもよろしいんですか?」
ロレンズ族長補佐はあそこ迄激高しているアンデス隊長にはこれ以上黙っていることは逆効果になるのではないかと考えて進言した。
「あのアンデスにどう伝えるんだ。ターキウス前族長はミンザの実の副作用である洗脳術を使ってスノウキャット達を白熊にぶつける為の洗脳兵士にしようとしていたから追放したと伝えるのか?もしも、そんなことをアンデスに伝えたとして、アンデスがターキウス前族長のサイドについたらどうなる。取り返しがつかないぞ。私の後、この部族を任せられるのは今はアンデス以外には考えられないんだぞ」
しかし、事実を伝えた場合、アンデス隊長はターキウス前族長の洗脳術を喜んで受け入れてしまうのではないかという心配があった。それは、アンデス隊長がターキウス前族長直属の部下であった事も関係していた。
「しかし・・・いや、その通りですね。この事はアリウス族長と私の秘密にしておかないといけない案件として心に止めておきます」
アリウス族長とロレンズ族長補佐はその後、何も語らずにその場を離れて、もともとの配置に戻って行った。
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