195 (sideギィ)レニーエスとミンザの実
10日ぶりの投稿になります。
緊急事態宣言が出ていますが、外に出るのは怖いですね。
毎日、仕事と自宅とちょっとスーパーな日々です。
スノウラビット族 アンデス 衛兵隊長
レニーエス アンデスの妹
ミンザの実 強力な眠り薬
アンデスは振り返ることもなく、ゆっくりとテントから出て行った。
「ギィちゃん、君には次にとてもいい場所を準備しておくからね・・・ふふっ」
アンデスは不敵な笑みを浮かべていた。
「兄さんっ、ねえ、アンデス兄さんってばっ、ちょっと待ってよ」
突然、キルアント族の衛兵隊長であるアンデスの前をさえぎるようにして1匹のスノウラビットが立ちはだかった。
「なんだ!何の用だ。レニーエス。今忙しいから後にしてくれないか」
アンデスは前に立っている妹のレニーエスを押し退けるようにして先に進もうとした。
「族長は知ってるの?」
レニーエスはアンデスに向かって、厳しい表情で追及するように声を掛けた。
「何のことだ!族長に知らせるようなことは何もないぞっ」
「知ってるのよ。今は使ってない大テントにこそっとトカゲなんかを連れ込んでるでしょうがっ」
アンデスの表情が一瞬曇ったように見えたが、すぐにいつもの無表情に戻っていた。
「しかも、大事な食糧をあんなに食べさせて何を考えてるのよ?」
レニーエスは目にうっすらと涙をためて、無表情のアンデスに訴えた。
「食事は・・・・どうしても必要なんだよっ。仕方ないだろっ、それに族長は今不在だろうがっ!」
「それなら・・・なんで、いきなり連れてきたのよ。こんな遅くにこっそりと連れてくるなんておかしいでしょうがっ。それなのに、よりによってトカゲなんか・・・。ううっ・・。知ってるでしょっ、私たちの同胞がどれだけ犠牲に・・・。それなのに、あんな奴に、大事な食糧までも・・・。ううっ・・。」
レニーエスは我慢していた涙が抑えきれなくなり、次々に大粒の涙を流してアンデスに怒鳴っていた。
「ちょっとレニーエス待ってくれ。少し声を下げてくれないかっ。みんなに聞こえるだろう。実は、これには訳があるんだよ。だから・・・ちょっと、静かにしてくれないか、お願いだっ」
アンデスはレニーエスに寄り添うようにして声を下げてもらうように必死で頼んでいた。
「それなら、説明しなさいよっ」
「今はまだ説明できないんだ。大事な作戦があるんだ。なっ、だから、お願いだよ。ここは見逃してくれ。なっ、兄弟だろっ」
「わかったわ。兄さん。・・・でも、族長が戻り次第報告に行きますので、そのつもりでいてね」
レニーエスは兄のアンデスから必死で頼みこまれたことでこの場は引くことにした。
「ふぅーー。よりによって、こんな場所でレニーエスに合うなんて驚いたよ。だが、今はまだ上手くいくかわからないから、邪魔されたらこまるんだよ」
アンデスは、レニーエスの姿が見えなくなるまでその場にたたずんでいた。
レニーエスの姿が見えなくなると、アンデスは薬品庫に入って行った。
「えーっとぉ。睡眠の効果があるミンザの実はここら辺にあったはずだが・・・」
アンデスは、テントの一番奥で厳重に保管してあるケースの中から1房の実を取り出して、握り込むとそっと周囲を確認した。
まわりに誰もいないことを確認したアンデスはまっすぐにギィのいる大テントまで向かった。
「これで・・・これで、我らの念願がかなうんだ。だから・・・この罪は俺がかぶればそれでいいんだ。すまないレニーエス。許してくれ・・・」
大テントの前で、アンデスは手に持ったミンザの実を握りしめながら、独り決意を込めていた。
そして、ゆっくりとギィのいる大テントの中に入ると、そこには大量の食糧を食べ続けているトカゲの姿がそこにあった。
「ギ~ィちゃん。食事はどうだい?」
「うん、とってもうまいよ。でも、こんな雪が多い場所でもここにはたくさんの食料が余っているんだね」
アンデスはまた薄ら笑いをしているよ。
まあ、食べ物を分けてくれるし今は気にしてもしょうがないな。
怪我の治療も必要だしね。
「あ、ああ、そ、そうだろ。ここには食料が豊富なんだ。だから、たくさん食べてくれよな。そう、それから、これはミンザの実って言って、ギィちゃんがおいしいと言ったコリコリするトーロモイと一緒に食べるとさらにおいしくなるよ」
「えっ、本当なの。あのコリコリする木の根はトーロモイ!?っていうんだね。それで、そのミンザの実ってどんな味なの?」
美味しいと聞いたギィはすでにトーロモイをつかみながら、アンデスにミンザの実についてたずねていた。
「食べてみたらわかるよ。本当にうまいんだから」
アンデスはゆっくりとギィの側にやってきて、大事そうにギィに渡した。
「ありがとう。アンデス」
ギィは満面の笑みで返事をしていた。
「あ、ああ。そうだな。まあ、食べてみてよ」
アンデスの返事は少し歯切れの悪いものだったが、おいしいと言われたミンザの実に夢中で目の前のアンデスの表情には気づいていなかった。
「アンデスっ、これ、ちょっと酸っぱいんだけど・・・。それほど、おいしくもないんだけど・・・。スノウラビットではこれが美味しいのかい!?」
「そ、そうかな。おいしいはずなんだけど・・・。ギィちゃんの口には合わなかったのかな」
ギィはおいしいと感じなかったけど、トーロモイと合わないだけかもと言いながら、今度は、ミンザの実だけを食べていた。
「アンデス・・やっぱり、この実はあまり美味しくないよ。少し・・・酸っ・・ぱ・いような。・・・あれ、なんだか、眠くなって・・・きちゃった・・よ。たべ・・過ぎた・のか・な」
ギィはそのまま、眠りについていた。
「ごめんね。トカゲ・・これも我が種族の為なんだ・・・」
読んでくれてありがとうございます。
評価とブックマーク増えました。
話が先に進まないのが申し訳ないですが、ゆっくりと頑張ります。