191 仲間を信じる
新型コロナの感染者が増え続けています。
この世の中どうなるのでしょうね。
早く安心できる世の中になってほしいものです。
スノウラビット族
アナベルさん・・・白熊討伐派(かつて白熊と何度も戦ったが、その都度惨敗してきた)
アイーダさん・・・犠牲享受派(グレートリザードと白熊にそれぞれ生け贄を出す)
トレールさん・・・年老いた白いトラ(双方のスノウラビット族とも共存している)
今の自分に出来るのは、訓練をして、強くなって、必ず白熊をそして、あいつを・・・ラクーングレートリザードである・・・あいつを必ず倒してやる。
そして、アイーダさんとアナベルさんのような生け贄といった存在が出ないようにしてやるよ。
もちろん、こんな弱肉強食の世界ではあたりまえのことなのかもしれない。
それでも、何も抵抗せずに命を落とすのはどうしても許せない。
ああ~くやしいなぁ。
「師匠君いいかな。そろそろ訓練に入ろうと思う」
訓練に入ると声をかけて来たトレールさんの表情は柔らかく見えるが、その中に厳しい意志が見えた。
「はい。よろしくお願いします。ですが、その前に1つお願いがあります」
「構わんが、どうしたんじゃ?」
ギィとアリスとは連絡がつかないままだった。
ただし、先ほどステータスで確認をした時に、耐性拡張は有効なままだったので、生きているのは間違いない。そして、こんな状態では落ち着いて訓練に入ることはできない。
だから、訓練に入る前に探しに行きたかった。
「白熊との闘いの後に仲間とはぐれてしまったのです。なので、その仲間を探しに行きたいので少し時間をもらえませんか?」
トレールさんの表情が険しくなった。
やべぇ~、これは怒らせてしまったかもしれないなぁ。
「師匠君、この森は別名『雪の森』といわれているんじゃ。もうわかっておると思うが、先の見えないどこまでも続く巨大な木々だけでなく、頻繁にやってくる吹雪、これにより道を外れてしまうと簡単にはもとに戻れないんじゃよ」
「でも、トレールさんはこの森に棲んでいるんですよね?」
「そうじゃよ。長年この森に棲んで折るから、道に迷わずにこの場所までくることが出来るんじゃ。しかし、森の奥に進んだ後に吹雪に合うと、絶対に戻ってこれなくなる。だから、吹雪が止むのを待って戻ることにしているんじゃよ・・・」
トレールさんはこの先の言葉を少しためらっているように一呼吸おいた。
何となくこの先の言葉が想像出来てしまい、自分の鼓動が大きくなるのを感じた。同時に、その想像が間違いであればいいと祈りながらトレールさんの言葉を待った。
「師匠君、君たちは初めてこの場所に来たと言っておったの?」
「はい・・・」
「この森ではぐれた仲間を探すことはあきらめた方がよかろう。しかも、最近、『いっぽん道』の周囲ではスノウキャット達が暴れまわっておる。単独ではおそらく助からんじゃろ。こいつ達もスノウキャット達に襲われてけがをしていたんじゃ。だから、わしが治療をしておった訳なんじゃが」
あきらめるなんて絶対に出来ない・・・。
生きているんだ。生きているのは間違いないんだ。
想像通りの言葉をかけられて少し混乱してしまっていた。
「あいつら、これまで単独で活動していたんだ。数も少なくて単独でないスノウラビット族を襲うことなんかなかったのに、集団で襲ってきやがったんだ」
すると、くやし気にアイーダさんがスノウキャットの事を言い放っていた。
「だから、私たちは一緒に行動していたのに怪我をしてしまったの。スノウキャットごとき1対1なら負けることはないんだから」
そうか、見た目はかわいらしいウサギさんに見えるけど『身体強化魔法』が使えるしこのエリアでは強い方なんだ。
アナベルさんもやっぱりくやしそうだった。
うん、似てるな。アイーダさんとアナベルさんはやっぱり似た者同士だ。
「だけど、まだ生きているのは間違いないんです。道で・・・その『いっぽん道』で集合するように約束しているんです。だから、自分が助けに行かないといけないんですよ」
「だが、師匠君の怪我はあきらかに尋常ではないと思うんじゃが、そんな状態で助けに行っても、助けにならんじゃろう。そんなことは言われんでも、お主ならわかっておると思うんじゃがな」
しばらくゆっくりしていたおかげで、瀕死の状態は回復していたが、それでも、まだ、体力は3割程度しか戻っていなかった。
普通であれば、しばらく、養生しておくべき状態というのはわかっていた。しかし、スノウキャットの話を聞くとなおさら助けに行かないといけないと思っていた。
「は・・い・・・。わかって・・・います。でも・・・」
(トレールさんに来てもらえれば、何とかなるかもしれない)と口に出して言おうとしたが、やめた。
そんなことを頼めるほど信頼関係が出来ているとは思えなかったからだ。それに、今の自分では足手まといにしかならないし、こんな状態で白熊と合ってしまったら、それこそ終わりだ。
「君の仲間も強いんじゃろう!」
「はい、強いです。ギィはリザードで身体能力が高く、戦闘に関してのセンスも高いんです。アリスはキルアント族で、頭がよくて、無理はしない。それに、自分の保護を受けているのでこの雪の中でのハンディキャップはないも同然ですしね。すっごく強いんです」
トレールさんにギィとアリスの事をほめてもらったように聞こえてとてもうれしかった。
「それなら、今は、師匠君は自分の体の回復を最優先させるんじゃな。そして、その間に身体強化魔法の基礎を教えてあげよう。仲間を信じるんじゃ。よいな」
軽くなった気持ちに釘を刺されたように伝えられた事実に反論できなかった。そして、信じることが今できる最大限の行動なのかもしれないと考えた。
お願いだ。死ぬなよ!
必ず探し出して迎えに行くからな。
すまない・・・。
「わか・・・りまし・・た」
読んでくれてありがとうございます。