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186 身体強化魔法

 トレールさん達が力を合わせたら白熊なら倒せるんじゃないのか!

 それに、もしも倒すことが出来たら、別れた種族がもとに戻ることが出来るのではないか!


 それを考えると、無理は承知で提案してみた。


 ただし、これがグレートリザードだったら、ここにいる生物では決して勝てないだろう。

 あいつの強さは別格だ。

 それでも何時かは自分が倒してやる。

 そう考えたが、それは口には出さなかった。


「お前なんかが簡単に口に出すんじゃないよ。何も知らないくせに・・・」


 アナベルさんは目に涙が溜めて、自分に向かって口を開いた。


「私たちは何度も、何度も白熊を討伐しようとしたさ。だけど、その都度多くの犠牲を出すことで・・・あいつを倒すことは・・・かなわなかっ・・たんだ・・・」


 むせび泣きながら語り、最後はほとんど言葉にはなっていなかった。


「すみません。そうだったんですか。でも、ここにいる白いトラのトレールさんと力を合わせれば、何とかなるのではないですか?」


 あれほど強ければ、きっと何とかなるはずだと、もう一度トレールさんに向かって声を上げた。


「・・・何度かな・・・あの白熊に戦いを挑んだことはあったんじゃが。1度も勝てなんだ。忌々しいあの白熊はいつもブリザードスクイレルと一緒にいるじゃろうが。それに・・・・あいつの謎が解けなくてのう」


 トレールさんは少し弱々しく、そして、少し寂しそうに話してくれた。


 どう声を掛けたらいいのか分からなくなってしまった。


 しかし、トレールさんが話してくれた言葉の中に『謎』とあり、その言葉に思い当たることがあった。


「もしかして、瞬間移動みたいな攻撃ですか?」


「なんじゃ師匠君もあやつと戦ったことがあるのかい?」


 白いトラのトレールさんは驚いて、自分を覗き込んできた。


「よくもまあ、生き残ることが出来たもんじゃのう」


「はい。ギリギリでした」


 後半はいい勝負が出来たと思ったが、白熊にまだまだ奥の手があるとするといけないので控えめに返事をしていた。


「あやつのあれはやはり瞬間移動か何かかのう!?」


「私にもわかりません。しかし、瞬間移動だとしたらあれほど連続で使用できるようなものでしょうか?そういえば、トレールさんも同じような瞬間移動を使えるように思えましたが?」


 戦闘中に少しぶれたように見えた後、攻撃をすり抜けるようにしていたのを思いだした。


「ああ、あれか。あれは瞬間移動ではないぞ。高速移動じゃ」


 瞬間ではなくて高速!?


 それは違うのか!?


「師匠君には種明かしをしてもかまわんじゃろ。あれは、高速でのサイドステップじゃ」


 自分が悩んでいることを察したのか、少しの間の後、トレールさんが秘密を教えてくれた。


「サイドステップですか?あの横に行ったり来たりするステップですよね」


「そうじゃ。サイドステップじゃ。長年行ってきたことで、元の位置に戻ることが出来るようになってのう。相手から見るとすり抜けたように見えるんじゃ」


 なんだ瞬間移動ではなかったのか。


 サイドステップとしてもあのスピードサイドは瞬間移動と変わりないじゃないか。


 それでも勝てないなんてどういうことだ?


 あんなに強いのに・・・。


 そう言えば何か新しい単語があったな・・・『ブリザードスクイレルと一緒』とはどういうことだ!?


 もしかして子猿の事か?


 そうだとすると、白熊との戦いの時の暴風雪はたまたま重なったわけではなかったということか。


 そして、白熊と子猿はチームということになり、いつも同時に攻撃を仕掛けてくる。


 それは強いな!!


 それに白いトラのトレールさんはきっと見えないところから攻撃を仕掛けてくる白熊とは相性が悪いに違いない。


 だから白熊には勝てないんだ。


 だんだんわかってきたぞ。


 問題は相性にあるんだ。 


 その点自分は直感があるから、見えないところからの攻撃にも対応が出来るというわけだ。


 基本的な強さでは白トラのトレールさんには勝てなくても、白熊には勝機があるということか。


 次の戦闘では何とかなるかもしれない。


「トレールさんのあの動きはてっきり瞬間移動だと思っていました。それに、薄緑色の膜を張ったトレールさんはとてつもなく強そうに思えたんですが・・・」


 この話の流れなら次いでに教えてもらえるかもしれないと思って聞いてみた。


「薄緑色の膜!?はて、なんのことじゃ?・・・・おお、身体強化魔法の事か?」


 白いトラのトレールさんは少し考えていたがすぐに気がついたようだった。


「そうです。突然スピードが上がって追いかけて来た時にトレールさんの周囲に薄緑色の膜が見えたんです」


 身体強化魔法というフレーズを聞いて、これはぜひ獲得したい魔法だと考えた。

 一応、自分考えていたこととトレールさんの認識したことが同じなのか念の為に確認しておいた。


「そうか、そうじゃったか。薄緑色の膜がのう。あのままだと師匠君が逃げ切りそうだったから使わざるをえんかったんじゃ。それに、身体強化魔法を使った後に生き残っておるものはほとんどおらんかったからな。自分がどうなっているのかはあまりよくわからないんじゃよ。ほっほっほっ」


 やはり、かなり強力な魔法に違いなかった。


「そうするとデメリットもあるんですか?」


「もちろんあるぞ。一度、身体強化魔法を使えば、何時魔力切れを起こすか分からないんじゃ。もしも魔力切れを起こしてしまうと、その後は精神的疲労で動けなくなってしまうからの。使いどころは注意が必要じゃ。なんじゃ、お主も使いたいのか?」


 えっ、教えてもらえるのか!?


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