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183 薄緑色の膜に覆われた白いトラ

 2匹のウサギは状況を理解したとすると、きっと感謝してもらえるはずだ。

 だから、今の危機的な状況から何とか方法を考える為に静かにしてもらおうと思っていた。


 そして、今、目の前にいるウサギは2匹そろって「ニィニィ」と叫んでいた。

 必死な顔で「ニィニィ」とうるさい位叫んでいた。

 その様子が、どうにも感謝しているようには思えなかった。


 しかし、それなら、今の危機的状況の中では静かにしてもらうことが先決だった。


「わかった。話しは後で聞くから、静かにしてくれないか?」


 自分は2匹のウサギに叫んだ。


 それに対して、ウサギは変わらずに「ニィニィ」と叫び返してきた。


 何となく止まれと言っているように聞こえたが、後ろから般若の顔で追いかけてくる白いトラがいるのに、止まることなんで不可能だった。


「後ろを見てみろ。さっきまで、お前ら食われそうだったんだぞっ!」


 必死で、危険な状況だった事を伝えるが、ウサギ達には全く声が届かない様子だった。


 2匹の来るウサギ達と口論を続けているうちに、後ろの白いトラの全身は薄緑色の膜で完全に覆われた。


 来るっ!

 魔法の効果はなんだ!


 緑色だとすると、HP回復か何かだろうか?

 いや、対したダメージを与えていないから、回復ではないだろう。


 だとすると、この白いトラの魔法の効果は何だろうか?

 もしも、遠距離魔法だとしたらBOXミラーでかわしてやればいい。


 しかし、もっとも危険なのはスピードが上がる場合だ。

 現在すでにスピードにおいて負けている。

 その場合は・・・それでも水弾丸(改)網とニードルショットの連射しかないか・・・。


 もしかするともっといい方法があるかもしれないが、目の前で「ニィニィ」と騒ぎまくるウサギ達のせいでゆっくりと考えられなかった。


 とにかく今は白いトラの出方を見るしかないとおもい変化を観察していると、白いトラのスピードが爆発的にあがって近づいて来ていた。


 くそぉぉ、やばい方の予想が当たってしまったか。


 白いトラの近づいてくるスピードが予想をはるかに超えて早く、このままだとあっという間に近づいてしまう。


「悪いがちょっと静かにしておいてくれっ」


 2匹のウサギ達に文句を言ってBOXミラーを唱えた。


 白いトラのスピードが速すぎて、水弾丸(改)網とニードルショットの連射では間に合わないととっさに判断した。


 薄緑色の膜に覆われた白いトラの目の前にBOXミラーが現れた。


 BOXミラーは白熊の攻撃ですら受け止めることが出来た。


 この魔法で一度距離を稼ごうと思いながら着地態勢に入った。


 パリィィィンッッッ!


 しかし、BOXミラーは軽々と割られてしまった。


 予想では白いトラは目の前に現れたBOXミラーを今までと同じように避けるだろうと思っていた。

 それなのに白いトラから避けるような動作は見られなかった。

 それどころか、大きな右手の爪で斜めに叩きつけるようにしてBOXミラーを切りつけていた。


 待てっ待てっ待てっ!


 そんなぁ、たった1撃で割られてしまうなんて・・・。


 あまりにも強力すぎる白いトラの攻撃力に茫然とした。


 これはいよいよ2匹のウサギを放してでも、自分の命を救う方を優先させないといけないのかと覚悟した。


「せっかく助けたが・・・すまない」


 残りの魔法をすべて打ち尽くす覚悟で2匹のウサギに詫びを入れた。

 自分の言葉が通じるとは思わなかったが、それでも、謝罪するしか今は出来ないと考えた。


 そして、今出来ることは少しでも時間稼ぎをするためと思い、BOXミラーを放って麻痺効果で何とかなる可能性を考えニードルショットを間に挟んで撃ちまくった。


 しかし、白いトラに麻痺効果はまったく見られず、変わらないスピードと形相に嫌気がさしていた。


 それでも、体の上にいた2匹のウサギは「ニィニィ」とうるさく叫び続けていた。

 やはり、早く止まれと言っているように聞こえた。

 共有意思の効果でもしかすると、このウサギ達が伝えたいことは合っているのかもしれなかった。


 しかし、止まった所で何が出来るというんだ!


 ウサギ達も自分も殺されて終わりだ。

 それとも、ウサギ達は殺されることを望んでいるとでもいうのか?

 そんなのおかしいだろう。


 自分はギリギリまで責任を果たす。


 それでも、ダメな時はすまない。


 自分にはギィとアリスが待っているから、ここで命を懸けることはできない。


 本当にすまない。


 心の中で何度も謝罪した。


 BOXミラーとニードルショットももう後わずかでMPが切れる。


 そして、最後の魔法を唱えようとした時に、2匹のウサギが尻尾に向かって走りだした。


 何やってるんだ!このままだと落ちてしまうだろうがっ!


 しかたなくバランスを取りながら落ちないように急停止した。


 停止した瞬間、白いトラの位置を確認するまでもなく真後ろにいた。

 白いトラは自分の真後ろで大きな右手とその先に光る爪を振り下ろそうとしていた。


 2匹のウサギ達は自分の尻尾の先に立ち変わらず「ニィニィ」と叫んでいた。

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