18 初めての出会い・・・・ギィ
その後も、メッセージさんの声が続いた。
【噛みつきのランクが上がりました】
【牙のランクが上がりました】
【巻き付きのランクが上がりました】
【ジャンプのランクが上がりました】
【魔力操作のランクが上がりました】
【隠密のランクが上がりました】
【気配察知のランクが上がりました】
【卵の殻壁のランクが上がりました】
【水弾丸のランクが上がりました】
【水弾丸(改)のランクが上がりました】
【鋼外殻のランクが上がりました】
【パラライズニードルのランクが上がりました】
【ポイズンファングのランクが上がりました】
【サーチのランクが上がりました】
【ウルトラソニックのランクが上がりました】
【ウインドカッターのランクが上がりました】
メッセージさんのやさしさにあふれているように聞こえる声がずっと響いていた。
でかこうもりとの壮絶な戦いで疲れ切った体と心を癒してくれるような気がして、いつもは聞き流しているんだが、今はゆっくりと効いていた。
「メッセージさんありがとう・・・」
メッセージさんに感謝の言葉を口にした瞬間、なんだか、急に、でかこうもりに勝利したことを実感して、さけびたくなった。
ウォッーーーーーーーーーーーーーーーーー!
よっしゃぁぁあああーーーーーーーーーーー!
「はあっ、はあっ、あーーーーーー・・・なんか思いっきり叫んだな!」
今までで最も激しかった戦闘に、自分自身気が付かないくらい気持ちが高ぶっていたのかもしれない。
しかし、思いっきり叫んだことで少し落ち着きを取り戻すことが出来た。
すると、今まで何ともなかった体中に激痛を感じ始めた。
「くそっ、いてーーなぁ・・・だけどなんだか気持ちいい」
体中の痛みがあって本来であれば動きたくないくらいのはずなのに、その痛みですら気持ちよく感じていた。
「・・・これが、本当の勝利の余韻ってやつかな」
しばらく、勝利の余韻を感じて、その場で横になり天井を眺めていた。
「レベルがいきなり5も上がったんだ!、でかこうもりはかなり強かったんだな。・・・もしかして格上だったのかな。考えると、本当によく勝てたな!今回は間違いなく運を味方につけることが出来た戦いだったよ!」
急激なレベルアップで各種ステータスやスキルのランクアップを確認したかったが、今は疲労が強すぎて早く住処の洞窟に戻りたくなった。
「あれっ・・・・卵がある!」
洞窟内を意識して探したわけではなく、ゆっくりと体を住処の洞窟へ向けて移動していた。すると、突然、目にそのカラフルな色が入ってきた。
理由は分からないが、洞窟の奥にあって、少し広くなった場所の壁際に、なんというか無造作といっていいような感じに置かれていた。
置かれていた状態なのか、そのカラフルな色のせいなのかわからないが違和感を感じたのは間違いなかった。
ラノベ風に言うと、もしかしたら卵から呼ばれたのかもしれない・・・。
そんなことを考えつつも、そのまま放置していくことはできなかったので、疲れた体を引きづりながら、でかこうもりの死骸を乗り越えてゆっくりと進んでいった。
他に敵もいないので、時間をかけてゆっくりと洞窟の奥の広くなった場所を進んた。そうして壁の隅の方に置かれた卵の傍に到着した。
近くまでくると卵は枯草を集めた塊の上に置かれていた。遠くからは無造作に置かれているように見えていたが、きちんと整えられて保護されていた。
「でかこうもりはこの卵の親だったのかな。悪い事をした。・・・いやいや、この弱肉強食の洞窟内でそんなことは関係ない。だが・・・俺はこの子の親の仇になるのかな・・・・・」
少し、罪悪勘を感じないではなかった。
自分も、見たこともない兄弟や親の敵として本能的にあの巨大モンスターであるあいつを憎んでいることに由来していたのかもしれなかった。
「んっ?・・・でもこうもりは哺乳類だから、卵は産まないはずでは・・・!?」
日本で学んだ知識はどの程度この異世界で通用するのか分からないが不意に頭の中に浮かんできた。
「まあ、そんなことを考えても、この弱肉強食の世界では些細な事か。それにしても、この卵は何のモンスターなんだろうな!?」
卵の大きさは直径が50㎝程で、サイズが不揃いなピンク色の水玉模様がカラフルに付いていた。なぜだ変わらないが、今にも生まれてくるのではないかと思わせる何かがあった。
そんな折、突然卵が揺れ始めた。
もしかして、生まれてくるのか!?
しかもここで!?
少し頭の中がパニックになっていたが、なんとなく中でもがいているに違いないと感じさせた。
「卵って栄養価が高いんだよな。食っちゃうか?生まれた後に敵討ちだぁ!!なんて言われてもこまるしなぁ」
生まれてきたこの卵を持って帰るか、それとも捕食してしまうかその場で考えていた。
しかし、疲労も強く、考えるのは住処の洞窟に持って帰ってゆっくりでいいか。仮に生まれてきたとしても、その後に捕食することも出来るし・・・・そう考えて卵を尻尾に抱え込んだ。
パキッ!
卵に亀裂が入った。
パキッ! パキッ! ピキピキッ! バリバリバリッ!!
「うわっ!生まれちゃった!どうしよう!?」
卵の割れたところから、ゆっくりと手なのか足なのかわからないが、足っぽいものが出てきた。その後、尻尾が飛び出したかと思うと、その尻尾で体にまとわりつく卵の殻を割り砕いていった。
ちょっと面白そうだったので、そのまま見物していた。
背中に残った殻を尻尾で上手に振り払って、4本足で尻尾のある姿が現れた。頭には依然、卵の殻が乗っかったままだったので顔は見えなかったが、明らかにトカゲのような形をしていた。
「あーーこれは、どう見てもトカゲだな。するとあのオオトカゲの子供か!?」
やばいやつが生まれたのかと思って、やっぱり今のうちに捕食してしまっとこうかという気持ちが心をよぎった。今なら、気にせずに一口でパクリだ!
しかし、今捕食するということは、子供を殺すことになる。
そのことが、一瞬の戸惑いを誘っていた時に、目の前の殻を被ったトカゲは頭を横に大きく振り回して、頭の上にある卵の殻を吹き飛ばした。
そこいたのは、つぶらな、かわいい瞳で蛇である自分を見つめてきた小さなトカゲだった。
「あっ~見ちゃった。もう無理だ。それに、これって刷り込みじゃないかな!」
つぶらな瞳を見た瞬間に、絶対に捕食するのは無理だと自覚した。
さらに、卵からかえって最初に見た生き物を自分の親と思い込んでしまう刷り込みで見ているのが自分だとすると・・・・・あ~~俺は蛇で、この年で、親になるのか・・・。
「ぎぃ~~~」
突然、この小さなトカゲが鳴き声を上げた。小さな甲高い声だった。直感的にメスなのかなと思った。
「はいっ!?」
「ぎぃ~~~」
「あ~~~おまえ、しゃべれないのな!」
”ぎぃ”としか鳴かないが、なんだかかわいく聞こえた。色々と話しかけたら何かわかるかもしれないと思って話しかけ続けた。
「ぎぃ~~~」
「おまえの種族はなんだ?」
「ぎぃ~~~」
何を聞いても”ぎぃ~~~”としか話さないので、とりあえず”ギィ”と呼ぶことにした。
「いいか、お前の名前は”ギィ”だ。”ギィ”だぞ。いいか!それから、お前はこれからどうするんだ?」
「ぎぃ~~~」
「決まってないって言ってるように聞こえる。不思議だ」
鳴き声はぎぃだけなのに、なぜだか意思が通じているような気がした。
「あってるかどうかわからないけど・・・それに、生まれたばかりで話が出来るのかも不明だが・・・。とにかく、自分は、今、とっても疲れているんだ。だから、住処の洞窟に帰るぞ!。いいか!」
「ぎぃ~~~」
わかったといっているような気がした。
とにかく今は疲れもあり、うまく考えれられなかった。ただでさえ少し戸惑いもあったので、そのまま、住処の洞窟に向かって進みだした。
そうするとすぐに後ろから声がしてきた。
「ぎぃ~~~ぎぃぎぃぎぃ~~ぎ、ぎ、ぎぃ~~・・・・・・・・きぃ・・ぃ」
最初はうるさいなぁと思ったが、声がだんだん遠くなっていった。
仕方がないので、どうしたのかと後ろを振りかえってみるとトカゲのギィはかなり後ろにいた。一生懸命に走ってついて来ているが、自分のスピードについてこれず一生懸命に叫んでいたのだ。
「う~ん!ごめん、ごめん!」
移動をやめて、ギィが追いつくのを待っていた。側まで到着してから、トカゲのギィを尻尾でつかんだ。
体に乗せようとおもい、尻尾で体をつかもうとしたが、最初は少し警戒していた。しつこく体をつかもうと続けたが自分の尻尾につかまれるのを嫌がっていたが、めんどくさくなったので無理やりつかんで体に乗せた。
トカゲのギィは驚いているようにみえたが、疲れているので無視して進み始めた。
「ぎぃ~~~ぎぃ~~~♪♪」
乗せてからしばらくは背中の上で”ぎぃぎぃ”とうるさく騒いでいたが、そのうち、なんだか喜んでいるようにも見えた。
そうこうしているうちに住処の洞窟に到着して、HP回復の為に緑エノキを食べて、横になって休もうとした。
「ぎぃ~~~」
「あぁ、そうか、お前も食べるか?緑エノキ!」
「ぎぃ~~~?」
食べてもいいのって言っている気がした。
「おう、食べな!」
食べていいぞって伝えて緑エノキを顔の前に置いた。
しかし、緑エノキが何かよくわからないようで、小さな手てつついてみたり、たたいてみたりしていた。
何やってんだろうなと思っていたら、そのうち匂いを嗅ぎ始めていた。
「このままほおっておけば食べるだろう」
そう考えながら極度の疲労の為に、そのまま眠りに落ちていた。
目が覚めて、すっきりとしたなぁと感じた。5レベル上がったから、ステータスの確認をしとかないといけないと考えてた時、ふっと思い出した。
「あっ、そういえば、トカゲがついて来ていたようだったけど・・・」
周りを見回しても、トカゲの姿が見えなかった。
「ペットには丁度良かったかもなぁ・・・。だけど、どこかに逃げて行ったのかな」
ペットにすれば、1人でいるここでの生活に張りがでるかもなんて考えていた。しかし、逃げていったものは仕方がないと思ってあきらめていた。
「仕方がない。ステータスの確認もあるし起きるか」
そろそろ起きないといけないと思って体を動かそうとした。
すると、なぜだが尻尾のところにわずかな重みを感じた。顔を尻尾に向けると、そこにはトカゲが気持ちよさそうに体の上で眠っていたのだった。
「なんだ!よっぽど体の上が気持ちよかったんだな!そんなところで寝るなんて、はははっ」
尻尾でトカゲの頭をなでていると目を覚ました。
「ぎぃ~~~ぎぃ~~~♪♪」
嬉しそうに、ぎぃ、ぎぃ言ってる。おはようって言っているように思えるが気のせいだろう。
「トカゲ、起きたか」
「ぎぃ」
起きた時は柔らかい表情をしていたのに、なぜか急に表情が険しくなった。
「あれ、どうしたんだ?怒ってる!?・・・のか?」
なんだか声が少し不機嫌そうになっている気がした。起きた瞬間はとてもうれしそうだったのに、なんでだろうとちょっと考えてみた。
「もしかして、トカゲって言ったのに怒ってるのか?そういえば”ギィ”って名前つけてたな!」
「ぎぃ~~~♪♬」
「やっぱり!名前で呼ばなかったから、怒っていたのか?はははっ!可愛いやつだな」
「ぎぃ~~~♪♪」
トカゲのギィは、嬉しそうに自分の体の上を歩き回りながら何かを見つけたみたいで、急に飛び降りて走って行った。そして、緑エノキのところへ行き食べ始めた。
「なんだ?ギィ、緑エノキはうまいか?」
声をかけると、こちらを向いて、目をキラキラ輝かせていた。
「ぎぃ~~~」
一声返事をして、また緑エノキを食べ始めた。
もう、すっごくおいしいよ。こんな、食べ物があったなんて知らなかったと言っているように思えた。
気のせいだろうけど・・・。
ギィは昨日生まれたばかりだし・・・・。
「おい!ギィ、飯を食い終わったら少し話がある」




