177 (sideギィ)この木なんかに負けないんだから。
ギィは自分の背中に羽が生えてこないかよくわからない気合を入れてみた。
ふぅ~~~、そんな簡単に出来るわけないかぁ。
でも、今は空を飛んで逃げる以外に方法は思いつかないんだけど・・・。
どうにかして空を飛べないかと考えてみた。
羽は無理だし、ジャンプで飛ぶのも無理だ。
もしもあの高い木の枝かから飛べばいいんだけど、そこまで行く方法がない。
ジャンプじゃ届かないしね。
こんなことを考えている間にも白い敵達からの魔法攻撃が時々飛んできていた。
地面を掘ったりしているときに体の一部が見えていたりしたせいでもあった。
しかし、白い敵達はあくまでギィが出てくるのを待っていた。
あいつら攻めに来る気なんて、さらさらないんだろうな。
あくまで遠距離魔法で安全に倒せるなんて思っているんだろうな。
正々堂々と直接対決して来ればいいのに・・・。
そしたら、ギィが勝てるのに。
・・・まあ、負ける方法をとるモンスターなんていないだろうな。
はははっ。
いっそ走って逃げるか。
勢いつければ、木も登れるかもしれないしな。
はははっ。
あっ、木も登れるかも!?
そうだ!飛べないけど、登れるかも・・・。
もしも登れたら木の枝を使って、別の木の枝に移動できる!!
木に登ることを発見するなんて私天才じゃないの!!
ギィは気づかなかったことに気がついて、なんだか自分の頭がよくなったんじゃないかと思った。
そしたらさっそくこの天才の考えた方法を試してみよう!エッヘンッ!
まずは木の真下から上を向いて走り出すことにしてみた。
体を縮めてぇぇーーー一気に行くよ。
ギィは勢いよく木の上に向かって走りだした。
5~6歩はうまく走れたが、7歩目は体が外側に向かってそのまま後ろに落ちてしまった。
フギャァッ!
やっぱり勢いがいるのかな。
少し下がって、勢いよく木を登るよ。
白い敵達に見えないようにまっすぐに5m位下がってそのまま勢いよく走り出した。
ダダダッーーーーーッ!
ムギュッ!痛てっぇえええーーーーー。
ギィは勢いよく走り込んでそのまま上に上れると思ったら、思いの外上に方向を変えるのは難しくてそのまま木に激突してしまった。
激突した衝撃で木の上にあった雪が下まで落ちて来た。
雪の落下を自分が飛び出そうとしたと勘違いをした白い敵は連続で魔法を撃ってきていた。
うわぁぁ、危ない、危ない。
白い敵達は何があっても、ギィをこの木の外に出さないつもりなんだな。
これほどゆっくりしていたら、増援が来るんじゃないのかな。
ギィは白い敵達があまりにもゆっくりしすぎているのではないかと気がかりになった。
それに、折角、木を登る名案を考えたけれどもなかなかうまくいかないことに少し自信を無くしつつあった。
だめだ・・・だめだ、元気を出せ私。
できる・・・自分なら出来る。
何とかするんだ。
頑張れ私!
ここで落ち込んでいても始まらない。
ならばどうしたらいいか考えることにした。
勢い着けたら登れると思ったんだけどな・・・・。
でも、勢いをつけないとこの木の枝はずっと上にあるんだし・・・。
実際この巨大杉の一番低いところにある枝ですら100m以上あった。
ギィが最初に上ったやり方ですら10m位しか登れなかったので、困ってしまっていた。
これまでさんざん試してみたけど、無理だった。
これ以上何が出来るんだろう・・・・。
ギィの気持ちは一杯一杯になっていた。
そんな状況でもあきらめずに、今の自分に出来ることは何があるか見直した。
速さだろう・・・牙だろう・・・尻尾だろう・・・魔法だろう・・・そして爪だ。
これを使って出来ることはなんだ!
・・・・もう、私はアリスちゃんみたいに色々考えられないよぉ。
ギィは涙を流しながら、思いつかないのが悔しくて、木を思いっきり叩いた。
グサッ。
ギィの最大の武器である爪が太い木に食い込んだ。
あ~もう、抜けないよ。
この木の馬鹿ぁ。
ギィは木から爪を必死で引き抜いた。
あっ・・・・もしかして・・・・。
ギィはこれまで勢いで一気に登ること以外にこの木を攻略する方法がないと思っていた。
しかし、気に爪がここまで刺さることで、ゆっくり行けばいいのかもと気がついた。
勢いはいらないのか!?
そうだっ、今まで、勢いばかりを考えていたから・・・・。
今は、出来ることをやるしかないんだ。
師匠、アリスちゃん、私は登るよ、この木を登る!
ギィは木の真下まで進んで、真上を見た。
巨大木は無理だ止めろって叫んでいるように見下ろしていた。
負けない。
この木なんかに負けないんだから。
ギィは爪を木に刺し込んだ。
刺しすぎると抜けなくなるので、数回強さを試してみて丁度いい強さを見つけた。
ザグッ、ザグッ
1歩1歩ゆっくりと進んだ。
ザグッ、ザグッ
登れる!登れるよ。
やったぁ。
登れる。
ザグッ、ザグッ、ザグッ、ザグッ
ギィは少しづつ、少しづつ登って行った。
次第に、上り方にも慣れていきリズムよく上がって行った。
上を見ると、木はそこまでだよ。頑張っても、無理じゃないのかと訴えてくる。
負けない。お前なんかに私は絶対に負けないぞ!