175 (sideアリス)アリスと迫るスノウキャット
アリスは走った。
スノウキャットから少しでも距離を取りたかった。
5本目の木・・・6本目の木・・・と進み、
7本目の木まで来て、その木の後ろ側に回り込んだ。
そして、周囲を確認した。
木から木の移動にタイミングをずらし、
酸性弾で雪をまき散らし、
そんな目くらましで、出来るだけスノウキャットがアリスを見失うようにした。
「ようやく少しは身を隠せそうですわ」
アリスは体を木にもたれさせて少し休んだ。
それほど長く休めるわけではない。
スノウキャット達の方を見ると、少し検討違いの場所を探していた。
でも、少し時間が取れたから、
スノウキャットの魔法が直撃した場所を見た。
アリスは自身の軽さから衝撃で吹き飛ばされていたので、少し心配した。
しかし、強化魔法である鋼外殻のおかげで、体に受けた衝撃ほど傷は大きくなかった。
「よかったですわ。胸の怪我は思ったほどではありません。これならまだまだ十分戦えますわ」
アリスは傷が思ったよりも軽かったこともあり、特に気になるスノウキャットの放った魔法のスピードをどうするか考えた。
「急だったので、受けてしまいましたが、あれ位のスピードであれば来るとわかれば避けれると思いますわ。ですが、2体いることを考えると・・・」
知っていれば、おそらく次は避けられる。
アリスは自分自身に確認した。
ただし・・・。
アリスは2対1での戦いに厳しさを感じていた。
だから、対策が必要だ。
雪は先ほどよりも多くなっていた。
少しではあるが、風も出てきた。
雪が風に乗っかり、それが木々に振りかかり周囲全体を白く塗り替えていった。
周囲の白さはスノウキャットに対してかなり有利だ。
一方、赤い体の色を持つアリスにとって、逆に不利な状況となった。
アリスの赤い体の色は、茶色の木の色に紛れることが出来ていた。
それなのに木々が白く染まっていくことによって、アリスの姿を隠してくれていた効果がどんどん減っていった。
「このまま、雪が続くとまずいですわ。私の姿が見つけやすくなっていくではありませんの」
急がないといけない。
スノウキャットの魔法だけでなく、周囲の状況の心配が増えて頭が痛くなってきた。
そんな心配をしながらも、アリスはまだ白くなっていない木の陰に隠れて2体の様子を見ていた。
スノウキャット達はまだアリスの居場所に気づいていない。
アリスが一気に距離をとったことが予想以上に効を奏していた。
まあ、それでも、一時の事ですぐに探し出すだろうと感じていた。
こうして移動しているスノウキャットの移動スピードは思ったよりも早かった。
自分は時々雪に足を取られて滑りそうになるのを必死で調整していた。
なのに、スノウキャットはこの雪の中での移動に慣れているんだろう。
雪の上だろうと関係なしにガンガン走っていた。
2体のスノウキャットは、おそらくこのエリアの配置をよく知っているのだろう。
ゆっくりとではあるが確実に探知範囲をせばめていた。
少しづつアリスの隠れている木の近くまで来ていたのだ。
「このままここにいても時間の問題ですわ。まだ、ギィちゃんは目を覚ましていませんの?」
ギィと共闘すれば対策があるかもと考えていたので、ギィの休んでいる場所に目を向けた。
アリスは隠れている木から少しだけ体をずらして、ギィの休んでいる場所を見てみた。
あまり体をさらけ出してスノウキャットに見つかってはいけない。
周囲の状況に気をくばって体を動かした。
しかし、ここからではギィの休んでいた場所ははっきりと見えなかった。
「あの木が邪魔ですわね。でも・・・ギィちゃんにかけていた落ち葉が乱れているようですわ。もしかしてすでに目覚めているの!?」
アリスは休んでいるギィの体が雪で冷えないようにと落ち葉をかけていた。
目覚める前に敵が現れた時の目隠しになればという考えもあった。
しかし、ここから見える落ち葉は乱れていた。
もしも目が覚めていたとすると、何もなければギィは私を探しているはず。
そうすれば姿を見ることが出来るはずなのに・・・。
でも、この付近にギィの姿が見えない。
ということは・・・・・。
少し嫌な状況を想像していた。
「ギィちゃんは反対の方向に行ってしまったということ・・・!?」
しかし、なぜ反対に進んだ?
反対に進まないといけない理由があるのですね。
やはりギィもピンチということですか。
「仕方ありませんわね。ここは、1人で切り抜けるしかないようですわ」
スノウキャットはある程度、アリスの居場所について目途が付いているように思えた。
近くの木を1本1本注意しながら、2体同時に確認をしていた。
ここまでくると、見つかるのは時間の問題だ。
何か対策を・・・。
アリスは1つの魔法の事を思い出していた。
先のドブネズミ戦の後、1つの魔法を獲得していた。
しかし、その名前の意味が分からず使い道に困っていた。
師匠に確認してみれば、何かわかるかと思っていたんだが、色々あってすっかり忘れていたのだ。
「使い道のわからない魔法・・・どのタイミングで使えばいいのかしら」