174 (sideギィ)羽があればなぁ
ギィは木の陰でこの後の攻撃をどうするか考えていた。
「待つ・・攻撃・・待つ・・攻撃・・待つ・・攻撃・・・松・・講義・・待て・・氷・・・いやぁぁぁあああ。違う。違う」
木の陰で相手の攻撃を待つのか、打って出るか、今ギィが出来ることはどちらか考えていた。
しかし、考えれば考えるほど、別の事が頭に浮かんでくる。
こんなことしていてもだめだと考えた。
「大体私に攻撃するのを待つなんて無理なんだよ。もう、打って出るしかないね」
今の場所から最も近くにある木はどこかを確認した。
「ちょっと奥になるけど、あそこの木かな」
目標の木と師匠から行くように言われた道の方を確認した。
「少し反対方向になるな。でも、ここから戻ったら狙い撃ちされるだけだし・・・。あいつらを倒してから、戻ればいいや」
ギィは戻ることよりも、倒すことに気持ちを持っていった。
白い敵は木の狭くなった場所で暗くなっていて見えにくいところから動いていなかった。
きっと、そこから出てくると姿が丸見えになるから出ないんだと考えた。
そして、ギィは敵の位置を中心として、少しづつ反時計回りに木と木の陰を利用して進んでいた。
次に目指す木はさらに反時計回りを進める場所に位置していた。
そこまで行くと、敵が今と違った対策をしてくるかもしれないとギィは考えたのだ。
「行くよぉ」
ギィは自分にタイミングを合わせるように声をかけて、体を横に向けた。
ピシュンッ
ピシュンッ
ピシュンッ
いきなり、魔法の音が聞こえて来た。
ギィは慌てて体を縮こまらせた。
「そ・・そんなにいきなり魔法を打ち放ってきたら、何も出来ないじゃないかぁ」
白い敵は自分がこの場所から少しでも出ようものなら、集中攻撃をしてくるつもりだとわかった。
「やばい、無理だ。アリスちゃん。私はここで短い一生を終えるです。すみません」
ギィは上を向いて、アリスに謝罪をするように弱々しく語った。
きっと、このまま上を向いたまま敵に囲まれて、滅多打ちにされるだけだ。
ギィはくやしくて涙がぽろぽろ出てきた。
・・・・・・。
・・・・。
・・。
・。
涙が出てきた時に思い出した。
あれは、師匠とレベルアップの為に初めてスライムと戦った時の事だ。
自分の攻撃に過信して、師匠のいうことを聞かずに調子に乗って飛び出した。
最初の一匹のスライムは倒すことが出来たことの喜びで回りの事も気にせずに無防備になっていた。
すると、後ろから来たスライムに集中砲火を受けてしまい。
危うく死にかけた。
その時の師匠の顔が浮かんできた。
「ぼいっギィ!いぎでだっ、いぎでだのがぁあ・・ひっく!」
師匠の顔が涙であふれていた。
そして、ゆっくりと緑エノキを食べさせてくれた。
師匠の顔から涙が止まらずに、語り掛けてくれていた。
「違うよ!せっかくこの世界で出会ったギィに死なれたかと思ってな。自分の未熟さと、ギィのことを大切に思っている・・・ぐす・・・ずずっ・・・」
師匠の顔から涙が洪水のように落ちてきて、それが私の顔を埋めていった。
「ごめん・・・、思い出したら、また、涙が出てきた・・・ずずっ・・大切に思っているんだってわかったんだ。だからね、ギィ!絶対に死んじゃぁだめだよ!わかったかい!」
・・・・・・・・・・。
ギィはぽろぽろとこぼれてくる涙を振り払ってしっかりと考えることにした。
生き残る道が閉ざされたわけじゃない。
まだ生きている。
「ごめんなさい。師匠!こんなに簡単に命をあきらめちゃっていたっす。今までは師匠やアリスちゃんに考えてもらっていた。だけど、今は自分1人で考えないといけないんだ。だから、考える」
ギィは下を向いじゃだめだ。
上を向かないと。
そして、考えないといけない。
「右も左もだめだ。多少のダメージを受けても逃げ切る。だめだ、きっと追いつかれて攻撃を受けるだけだ。やっぱりだめ~。だめだめ、それは今まで考えて来た。考えるなら別の方法だ」
何か新しい魔法があれば・・・それは、無理。
今より早く走ることが出来るように・・・それも、無理。
ジャンプで飛び越える・・・助走が足りなくて、無理。
皮鎧を強化する・・・どうやって?・・・そこらへんの落ち葉で・・・強化にならない、無理。
「どう考えても、無理じゃないか!アリスちゃん何かないかなぁ~」
そうだ!雪の中をもぐって行く・・・無理だよねぇ~。
穴を掘って逃げる。
良いんじゃない。
ギィはその場で穴を掘り始めた。
最初にあるのは雪だったので、簡単に掘ることが出来た。
雪の下には地面があり、それも何とかほれそうだったので、ギィは爪を立てて掘ることにした。
しかし、水分をたっぷりと吸った土は粘土状になっていて、ギィがどんなに力強く掘っても、この場所から逃げ出すことが出来るほどの穴を掘ることは出来そうになかった。
「やっぱり無理じゃんかぁ」
ギィはもう考えられないのかなと気が抜けてぼ~っと空を見た。
あぁ~、鳥みたいに空を飛べたらいいのになぁ。
ギィは空を飛んでいる姿を想像して苦笑いをしていた。
木と木の間を羽の生えたギィが飛び回っている姿にうらやましさを感じていた。
「羽かぁ。羽があれば飛べるのになぁ。そして、この窮地を脱することが出来るのに・・・」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ブックマークや★★★★★をチェックしていただければ励みになりますので、
どうかよろしくお願いします。




