166 いつまで攻撃してくるのだろう
『師匠!大丈夫っすか?応援に行った方がいいっすか?ここから師匠の姿は見えにくかったっすけど、今ならしっかり見えるっすよ!』
『”通信” 一つ策を打ってみようと思う、お前たちは森の奥になるが、吹雪が切れているからそちら側に抜けるんだ。自分もこの白熊を何とかしてそちらに向かうよ』
『わかりましたわ。師匠も気をつけて下さいね』
ギィは戦いたそうだったが、反面、アリスは吹雪の中の戦闘に参加できないことで自分を心配してくれているようだった。
ギィとアリスの気持ちを強く受けて、気持ちを新たにした自分はギィ達の進む方に背中を向けて、白熊に対して迎撃態勢を整えた。
白熊が暴風雪にスピードを合わせているおかげで、吹雪の影響を受けずに、少し落ち着いて白熊と子猿の状況を観察出来た。
「おいおい、白熊と子猿はなんで連携取っているんだよ。なんだ!仲間か!?いやでも・・・そんなわけないよな。敵の敵は味方ってやつか!ちくしょぉ、やってらんねぇよ」
吹雪からは白熊の姿はまったく見えなかったし、サーチをかけても4匹以外のマークはやっぱり現れなかった。
「はいはい、吹雪の有利な状況は変えない方針ですね。わかりましたよ!」
距離をとっていたが、吹雪は徐々に自分の方に近づいて来ていた。作戦を実行するためにも、そのまま白熊が現れるのを立ち止まって待っていた。
吹雪が強くなっていく中で白熊が撤退してくれることを期待したが、白熊の殺気がやってくることに気がついた。
そう、うまくはいかないか・・・。
最初の攻撃は右かっ!
予測は効果的に発動していた。ここまでくると直感の効果であることに何の疑いもなかった。
サーチで白熊を確認できなかったので、直感があることに助かったと胸をなでおろしていた。
「BOXミラー!そして、ニードルショットだ!」
白熊の爪による攻撃をBOXミラーで防いだ瞬間にニードルショットを打ち付けた。
ビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッ!
連続して発射されるニードルショットが次々と白熊に当たった。
ダメージ効果の少ないニードルショットを受けても何ともないという風であったが、何かが当たることは嫌だったのだろう。追撃もなく、吹雪の中に消えていった。
「白熊はニードルショットの麻痺の効果に気づいていない?ならば・・・」
白熊が見え初める距離を保ちつつBOXミラーとニードルショットを続けていった。
しばらくは3回に1度は白熊の爪を受けていたが、次第に白熊の動きにも慣れていった。
次第に直撃を食らうことが4回~5回に1度と減っていった。
「これだけ避けれるようになったのに、まだ、攻撃を続けてくるのか!?」
この巨大森林では白熊の方がホームになるので、今自分を倒しておかなくても、別に機会があると思う。
それなのに、どうして4~5回に1度しか攻撃が当たらないのに攻撃を続けているのか不思議でならなかった。
確かに自分は平気そうに装っていたが、HPはすでに3割を切っていた。もしかして、白熊はそのことがわかっていたのだろうか。
「おっとっ!左からくるかっ!BOXミラーっ!ニードルショット!」
このやり取りはもう30回くらいまでは数えていたが、それ以降はもう数えていない。白熊の連続攻撃が続いてからそろそろ30分近く経過するだろうか。
攻撃を避ける回数が増えたことで、気持ちも少し楽になったとはいえ、精神的にはつらくなってきていた。
それは、向こうも同じだろう。いや、向こうは逆に攻撃が次第に当たらなくなってきているので、ストレスは上がっているだろう。
「ニードルショットの効果が少しづつ現れてきたかもしれない」
そう言えば、白熊の連続攻撃は続いていたが、先ほどから1度も攻撃を受けていなかった。
予測からBOXミラーでのガードが確実に行えて来ていた。
暴風雪による風と雪の為の視界は変わらなかった。魔法で作っている暴風雪のはずなのに途切れなく続いている。
「魔法で作っている以上魔力が必要なんじゃないのか?耐性があるとはいえ、疲労感もいい加減いっぱいいっぱいだよ」
文句をいっても仕方がないが、この状況がいつまで続くのか不安になった。
最初に暴風雪を受けてから、かれこれ3時間以上は経過しているような気がした。
「このまま、攻撃を避け続けるか?それとも、反撃に移るか?」
白熊の攻撃力はかなり高かった。
そのため、BOXミラーでよけていけば、暴風雪も止んでくれる。
そうすれば、白熊のよくわからないスピードで移動している理由もわかるし、違う戦いかたもできるだろうと思っていた。
しかし、暴風雪の勢いは弱くならないし、ダメージを受ける頻度は減ったといっても、残り2割を切っていた。
反撃に出るにも、白熊の体力はそれほど減らせているとは思わない。それに、あの巨体なら体力もかなりあるに違いない。
もうしばらく、待つか?
それとも、スピードが減ってきた今、防御中心から攻撃に移るか?
「ここはラクーン大洞窟地下2階だっ!今までのような防御力を頼りにした攻撃をしていてはやっていけない。この白熊はそれを物語っているじゃないか!打って出るんだ。スピードが下がっている今はそのチャンスじゃないか!」