164 防御魔法
そもそも自分は防御主体で、敵の攻撃を受けながら魔法で攻撃するというスタイルで戦ってきた。そのため、白熊の攻撃を相殺できる武器を持たない。
まあ大した武器は持てないんだけど・・・・蛇だから手ないし。
しかし、最近手に入れた強力な防御魔法がある。
それは魔力操作がランク10になった時に、追加で獲得したBOXの魔法だ!
最初に出てきたときは単なる箱だったので、ものすごくショックを受けた。でも、形やサイズを修正できることがわかり、その中でも、箱の側面を最大限に広げて、2枚合わさるようにしたところ、1m×1mの薄い板として現れた。
硬さもあり、自分の思うところに展開できることから、イメージしやすいように『BOXミラー』と名付けていた。
「ここだ!BOXミラー!!」
まるで轟音を立てているような勢いで迫ってくる白熊の大きく鋭い3つの爪が右サイドのすぐそばまで来ていた。
落ち着いて、その爪に合わせるように視線を向けた。すると、そこには1m×1mの半透明な板が現れた。
白熊の爪がものすごい勢いで半透明の板をたたきつけた。
ガキィィイイーーーーーーーーーーンッ!!
甲高い音が周囲に響いた。
本当にこのBOXミラーで白熊の攻撃を避けられるのか不安になったがひび一つ入らずに防ぎきっていた。
逆に、白熊は何が起きたのか分からずに、一瞬動きが停止していた。
「この距離ならウインドカッターの攻撃も当たる!」
白熊の頭を狙って風魔法を唱えた。
ウインドカッターッ!
白熊の巨体に向かってウインドカッターが風を切って飛んでいった。近距離から唱えたウインドカッターは確実に白熊にダメージを与えることが出来た。
「よっしゃー!ざまーみろってんだ!」
大したダメージを与えることが出来たわけではなかったが、それでも、白熊は予想外の防御板と突然受けた攻撃に慌てて下がっていった。
『”通信” ギィ、自分の防御魔法が白熊には通じるみたいだ。自分が攻撃をかわしている間に、アリスと合流してくれるか』
『すいません。わかったっす。師匠』
『”通信” 次の攻撃に合わせてこの場所から離脱するんだ!』
『はいっす』
この流れで行くと、次に攻撃を受けるのはきっとギィだろうと予測した。ふっと我に返っても、その予測が何なのかよくわからない確信を持っていた。
『”通信” 次はそっちに来るぞ』
『えっ、まだ、姿も気配もないっすよ』
ギィが返事をするとほぼ同時にギィの方に白熊が現れた。
自分が防御魔法を唱えようとしたが、ギィはそれを抑えるように体で自分の前に立ちふさがった。
目標に視線を合わせられないと防御魔法は出せない。何をやっているんだギィはと思い、ギィに通信をしようとした。
しかしギィの姿を見てやめることにした。
それはギィが仕返しを狙っているのが見え見えに、白熊の攻撃に合わせて集中していたからだ。
ギィの正面にいた白熊はギィが迎撃態勢に入っているのに一瞬立ち止まった。
しかし、白熊はすぐに動き出して、そんなこと微塵も気にしないでギィに右腕を振るい上げた。
ギィはそれに合わせるように、左腕を合わせて打ち付けた。
グワッギィィイイイ!!
白熊の爪とギィの爪が合わさり鈍い音が周囲に広がった。
1秒から2秒くらいの間、呼吸が止まるような時間の後、ギィの腕は白熊の腕にはじかれた。
ギィは白熊にはじかれた反動でバランスを崩して倒れ込んだ。
さらに、そのギィに向かって白熊の左手が迫っていた。
「そんなことはさせないぞ。BOXミラーッ!!」
倒れ込んだギィの上に半透明の板が広がった。
ガキィィイイーーーーーーーーーーンッ!!
白熊は攻撃のチャンスと思って、たたき込んだ左手が急にさえぎられたことに違和感を感じていた。
しかし、倒れ込んでいるギィに攻撃を与える絶好のチャンスと思っているのだろう。さらに、半透明の板に向かって、何度も何度も追加攻撃を加えてきた。
「おまえぇぇぇえええ!いい加減にしろよぉぉおおおお!!ウイングカッター」
倒れ込んでいるギィに攻撃を加え続けている白熊にウイングカッターを連射した。
しかし、連射が来るのをわかっていたかのようにスーーと後ろに下がってそのまま吹雪の中に消えていった。
「ふざけてんなよなぁ~」
自分の攻撃が白熊に当たらないことの腹いせに思わず罵っていた。しかし、白熊が後退したので、それはそれで好機と考え、そのタイミングに合わせてギィに後退するように声をかけた。
『”通信” 今だギィ!自分がカバーに入るから今のうちにアリスの所へ行くんだ!』
『はいっす。でも、悔しいっす!』
声をかけるとギィはすぐにアリスのいる方に向かって動き出した。しかし、一言残しながら一気にラッシュウォークで走って行った。
今のギィでは白熊との1対1ではかなわない。しかし、それでも少し抵抗で来ていたので、もう少しでギィの力も届くだろうと考えた。
自分はギィをカバーするように、正面の吹雪を警戒しながらゆっくりと後退していった。