162 えっ!白熊!
「だめだ、押さえるんだ。こんな状態でギィの側についても、何の役にも立てないだろうがぁ。馬鹿か」
怒りに我を忘れても、何の解決にもならない。
ならどうすればいいのか!
とにかく、深呼吸でもして気持ちを落ち着かせるんだ。
す~~~~~ふぅ~~~~
だめだ、落ち着かない!
「くっそぉおたれがぁぁああーーーーー!ギィィィイイイイイイイーーーーー!すぐに助けに行くからまってろよぉぉおおおお」
出来る限りの大声で、ギィを助けに行くと叫んだ。怒りを声に出して発散することをしてみた。
「ふぅ~~叫んだことで少し落ち着いたか。こんな時に怒りに任せてはいけない。落ち着くんだ。自分」
溢れてくる怒りを抑えながら、冷静に状況判断をしようと気持ちを落ちつかせた。
そうすることで気がついたことがあった。
2度目のジャンプでギィの状況が少し細かく見ることが出来たことも幸いした。
それは、空中から見えるギィは何かに警戒しているようだった。
普通は正面からくる敵を警戒するのだが、ギィは右や左を何度も見ていた。きっとどこから攻撃が来るのかが分からないのだろう。そんな風に見えた。
ラクーン地下1階でのギィは高い戦闘能力があり、スピードにしても速度を重視した戦い方をすると思っていた。そして、進化によりその能力はさらに向上していたはずだった。
そんなギィが敵の攻撃に翻弄されているなんて自分の目が間違っているのかと思える光景だった。
もしかして、あの暴風雪のせいなのか?
たしかに強風と豪雪のせいで視界がかなり減ってしまっているのは間違いない。それに、ギィはそう言った場所での戦闘には慣れていないはずだ。
しかし、そんな暴風雪の中であっても、敵はその状況をうまく利用できるんだろう。いや、この暴風雪を利用した状況こそが、敵のスタイルなのかもしれない。
もしも自分達がこういった環境での戦闘に慣れることができれば、少しは反撃の機会が増えるようになるともいえる。
しかし、今の自分達にはそんな技術は無い。
地下2階に降りてきて、気持ちのゆるんだ自分達を戒めるかのような敵の出現に、少しづつ冷静になり状況をみれるようになった。
それに、もうひとつ気がかりなことがあった。ギィにも、自分やアリスの持つ防御系統のスキルである皮鎧があった。かなりの硬さがあり、それなりに攻撃を防ぐことが出来ていたはずだった。
それなのに、あれほどの出血を追うような傷が出来るなんてどれほどの攻撃力があるのだろう。自分の防御力がどれほど耐えられるか少し心配になった。
しかし、そんなことはギィを救うことにどれほどの障害にもなりえない。
そもそも1度目のジャンプの終わりごろから、気配察知にはビンビンに反応していたので、自分にとって心づもりは十分にできている。
だから、今できることは冷静になってモチベーションを上げつつ、同時にサーチで新たな敵の数を確認しておくことだ。
それなのに、結果として確認できた敵のマークは4つだけだった。あれは、子猿のもので間違いないはずだ。
いくら暴風雪があるとしても、あの小猿達にそれほどの攻撃力があるとは思えない。
それなのにギィと戦っている敵のマークが出てこない!
「ちくしょう!やっぱりいたのか!」
サーチにかからない敵がいることは十分警戒していたが、よりによってこんな時に出てくるとは、なんて厄介な状況なんだ。
でも、だめだ!もう時間がない。今はギィを救うことが先決だ。
ボフゥファアア!!
2度目のジャンプは狙い通りにギィの側に到着した。
『”通信” ギィ大丈夫か?』
『痛いっす。全身痛いっす。すみません。会話は聞こえていたっす。でも・・・気をつけて下さい。敵の攻撃もめちゃくちゃ強いっすけど、スピードが桁違いっす。とにかくおかしいっすよ・・・・危ないっ!師匠、右っす』
ギィがいきなり右からくると言ってきたので、右側を防御しつつ相手の様子をうかがった。
えっ!白熊!
暴風雪で視界がとても悪いため、相手の姿が見えるとすぐに攻撃があたる距離に来ていた。
「うっ、爪がそこに!」
ギィが右と声をかけた瞬間には右側を振り向いていたが、自分のすぐそこに白熊の太い腕に大きな3つの爪が迫って来ていた。
ウルトラソニックでスピードを下げるか、水弾丸で牽制するかまよったが即座に判断を迫られた。
「水弾丸だっ」
ウルトラソニックは間に合わないと考えた結果、水弾丸でとにかく牽制してみた。
爪に向かって打ち放った水弾丸は特別にダメージを与えることは目的ではなかった。とにかく、目の前にやってくる爪に当たりさえすればいい。
よし、爪の軌道が少し外れたっ!
ザグゥイイイイイッ!!
白熊の爪は、水弾丸で軌道が外れたと思ったが、それでも、自分の体を引き裂くように削り取っていた。
うっ・・ぐぐぅっ!
くっそぉお!
水弾丸(改)槍ィィイイイ!!
強烈な痛みがあったが、追撃を加えようと水弾丸(改)を放った。
しかし、白熊はすぐに吹雪の中に消えていったために、当てることが出来たかどうか分からなかった。想定される位置にもう一度、水弾丸(改)を撃ち込もうと思った時、ギィから声が聞こえてきた。
『師匠、左から来てるっす』
「嘘だ、今、吹雪の中に入った瞬間に反対側から攻撃を仕掛けてきたっていうのか?」
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