161 傷だらけのギィ
「師匠、ギィちゃんと連絡がとれましたの?」
「ああ、今連絡がきた。暴風雪を起こした敵モンスターを確認したと言っている。小さな子猿といっていた。アリスは心当たりがあるか?」
「詳しくはわかりませんが、ブリザード引き起こすモンスターがいるという話は聞いたことがありますの。5匹一組でチームを組んでいるということは知りませんでしたわ。それにしても、非常に強力な魔法を扱うのですね。師匠の耐性がなければ本当に危うかったですわね」
自分はアリスと暴風雪を使うモンスターについて話しながらギィが戻ってくるのを待っていた。
通信の出来る距離にいたので戻ってくるのに数十秒もあれば大丈夫なはずだった。
しかし、ギィからの返事が来てから1分を過ぎても戻ってこなかった。
「おそい。遅すぎる。時間にして1~2分だが。通信の届く範囲でこんなに時間がかかるはずがない。何かトラブルに合っているのかもしれない。アリス一緒に向かうぞ」
「ギィちゃん大丈夫かしら」
「一応戦闘準備をしておくんだ。アリス」
「わかりましたわ、師匠」
鋼外殻とまだランクは低いが直感を唱えながら、ギィがいるであろう場所に急いで向かった。
ギィの素早さを考えると、ある程度危機的な状況であってもしのげるはずだった。だから返事位はできるのではないかと思っていた。
それが、返事すらもできないのは、もしかすると強敵が現れてるということなのだろうか。
一層の不安が募ってきたので、もうすぐ到着すると考えていたけれど、念の為に通信を送っておくことにした。
『”通信” ギィどうしたんだ?何かあってるのか?』
しかし、それでも返事はなかった。
「くっそぉお、到着するまでに何かできることはないのか?」
何かあるはずだと必死で考えた。
「そう言えば、ステータスで生存を確認することができたんだった」
考えたら出てくるもんだと思いながら、急いで進みながらもステータスを確認してみた。
ーーーーーーーー
【MP】 4260/4460(-200)
ーーーーーーーー
耐性拡張を使用している間はギィとアリスそれぞれにMPを100常に使用していることがステータスに表示されていた
よし、耐性拡張は生きている。ということは命に別状はないということだ。
何かに倒されてしまったのかという不安がよぎっていたがすぐに解消された。
とすると、残るはやっぱり返事が出せないくらい危険な状態なのか。
焦る気もちをさかなでるように眼前の暴風雪は少しづつ力を回復しつつあるように見えた。
子猿のようなモンスターの1匹を倒し4匹になった後、敵が少しづつ自分達から距離をとっていた。その結果、魔法の中心が自分達のいた場所から遠くなり暴風雪が和らいでいた。
しかし、ギィのいるはずの場所に近づくにつれて、再び少しづつではあるが雪と風が強くなり、気づくと動きと視界を奪われていった。
そもそもギィのいるはずの場所まではすぐにつくだろうぐらいに考えていた。しかし、慣れない雪道に雪と風が合わさることで、耐性があるはずなのにいつものスピードが出せずにいた。
ジャンプすればすぐに到着できると思ったが、それだと、アリスとばらばらになってしまう。ギィとはぐれている以上それは危険だと判断した。
とにかく、今は出来るだけ早くギィのところに着けるよう移動に力を入れれるだけだと、雪道を急いだ。
「師匠、ギィ・・・らの連・・・はあり・・・の?」
次第に、直接の会話での声が届かなくなっていった。
『”通信” アリス少し聞き取りにくくなっている。通信で頼む』
『すみません。ギィちゃんからの連絡はありますの?』
『”通信” あれから何度か送っているが届いていない。この会話はたぶん届いていると思うんだが・・・』
『師匠、すみませんですの。私の移動が遅いばっかりに・・・・』
ギィからの返事が届いていないとアリスに伝えたら、アリスは下を向いて辛そうな表情をしていた。アリスは体の重さが軽い事が強風の中ではかなりデメリットになることが許せないのだろう。
出来るだけ急いで進んでいるうちに、だんだんと暴風雪の威力が上がっていった。しかし、4匹のままなのだろう。最初に経験していたほどはなかった。
『師匠、あそこですわ。戦闘が起きていますの』
『”通信” 見えたよ。アリスはここで待機しておいてくれるか。ここからジャンプで向かう』
『わかりましたわ。お気をつけて。師匠』
アリスは自分が助けに向かえないことが少し残念そうに見えた。
しかし、今は連絡が出来ないほどの状態にあるギィが心配だ。ここからなら1度のジャンプで届きそうだが、風が強いので低空で短めの連続ジャンプにすることにした。
よし、ジャンプッ!
1度目のジャンプ中にギィの姿が見えた。なんだが傷だらけに見えた。それだけでなく、全身から出血しているようにも見えた。
いっきに、自分の鼓動が大きくなるのに気がついた。それだけではなく、強烈な怒りも同時に湧き上がってきた。
1度目のジャンプの着地後、ギィのいる場所の正面に降りれるように調整をして、2度目のジャンプをした。
「このクソッたれがぁぁぁぁああああ!俺のギィをこれほど傷だらけにしてただでおけると思うなよぉぉぉおおおおおお!!!」
この暴風雪の中では、いくら自分が叫んでいたとしてもその声は届くはずがなかったが、あまりもの怒りがこみあげてきていた為、叫ばずにはおれなかった。