160 反撃②
『そうですわね。魔法を唱えるものが1匹減れば、魔法の威力が下がるのは当然ですわね』
そうだったんだ。てっきり威力は変わらないと思っていた・・・・・言わなくてよかったぁ~
5匹で魔法を行使していたが、1匹減った所で変わらない可能性があると考えていたのだ。しかし、アリスは1匹減れば当然威力が弱くなることを知っていたようだった。
偉そうに伝えて、『あたりまえですわよ』なんて言われたらちょっぴり恰好つかないところだった。よかったぁ。
とにかく単純計算で5匹が4匹なったということは、20%威力が下がったことになるだろ。そして、その逆を考えれば我々の能力が20%向上したって考えられなくもない。耐性の効果もあるし、これは挽回のチャンスだ。
「よぉお~し、これなら。どんどん倒していくぞ!」
口に出して声を出しても、ギィとアリスには聞こえないことから、これまでのうっぷんを晴らすかのように少し強気の発言が出ていた。
まわりで吹き荒れている風と雪の強さは依然として強いままだったが、寒さの負担がない分、風だけに注意すればいいことも気持ちを前向きにしてくれた。
次の敵を狙うために、サーチを唱えた。今までは5匹で半円をかくように等間隔で追って来ていたが、4匹なってからはゆっくりと木の上で立ち止まることはなくなっていた。
4匹の統一した動きがなくなり、バラバラに動いているように感じた。
『”通信” 1匹を倒したら、残りの4匹は警戒をはじめたようだ。定位置でゆっくりすることがなくなった。しかし、暴風雪の威力が少し下がったことを踏まえると、突撃してもいけるかもしれない』
『師匠、師匠、それなら私が最初に行くっすよ。いいすか?』
ギィは目をキラキラさせて、待っていましたと言わんばかりに速攻で返事をしてきた。
『”通信” おっ・・おお、風が強いから気をつけてな』
あぁ~。動揺してなんか普通に送り出すお父さんのような返事しちゃったよ。
ギィがラッシュウォークで駆けていく姿を見ながら1人もじもじしていた。
『”通信” ところでギィお前は敵の場所が見えるのか?』
『見えないっすよ。でも近づいたら見えるかなって・・・・・・う~ん、あれっ、近づいても見えないっすねぇ。すんませぇ~ん、師匠ぉぉおお、敵はどこにいるっすかぁぁああ』
ギィは半泣き声でたずねてきた。
出だしがあまりにも勢いがよすぎたので、敵がどこにいるのか分かっているのかと勘違いして送り出してしまっていた。
あれっ、それより、なんであんなに遠くに走っていくギィの姿が見えるんだ!?
おかしい!
そう思って、まわりを見回した。
間違いない、雪と風が急激に弱くなっているんだ!
『”通信” ギィ状況がおかしい。一度こちらに戻ってきてもらえるか?』
心配なことが思い浮かんだので、慌ててギィに戻るように通信を使った。
「師匠、どうしましたの!風と雪が弱くなっているのは、戦いやすくなって良い事ではないですの?」
側にいて聞いていたアリスが通信を使わずに普通に返事をしてきた。
やっぱり暴風雪の魔法がほとんど解けているんだ。
いや、魔法の中心が遠くなっていると考えた方がいいだろう。
そもそも、自分達がここまで来たのは、あの暴風雪を自然の猛威と勘違いさせられてここまで逃げてきたことを思い出した。
「アリスいいか!自分達はあの見えない敵の暴風雪に追われて、この森のかなり奥まで来てしまっているんだ。アリス、この森の敵があの5匹だけだと思うか?」
「はっ!そうですわね。より強力な敵がいるということですのね?」
「その通りだ。あの暴風雪は強力すぎる。だから、暴風雪の間は他のモンスターが活動を中止している可能性があると思うんだ」
「だとすると、ギィちゃんが危険ではありませんの!」
アリスは少し表情を曇らせながら慌てて返事をしてきた。
「先ほど、戻るように促してはいるんだが・・・・攻撃に夢中になっているのではないかと思う。まだ、敵の場所を見つけていないはずだ・・・・教えてないからな」
「ということは、ギィちゃんは夢中で敵を探しているわけですわね」
アリスは少しあきれ顔に変わりながらつぶやくように声に出していた。
「もう一度、呼びかけてみるよ。しかし、ギィの姿が見えない状況だと・・・通信が届くかどうか?むやみに追いかけてないといいんだが・・・」
ギィが走って行った方向はすでに雪と風が舞い上がっていて、こちらからは姿が全く見えなかった。
想定した場所で雪と風がなければ姿が見える距離だが、もしもむやみに追いかけていたらと考えると不安を感じずにはいられなかった。
『”通信” 聞いているか、ギィ?一度こちらへ戻ってきてくれ。状況を再確認したいんだ!』
やはり、奥に向かって進みすぎているのではないだろうか!?
「返事がないな。アリス一緒にギィの方に向かうことにするぞ!」
ゆっくりしている場合ではないなと少し焦りをともない、アリスと一緒に向かおうとしていた。
『師匠、敵モンスターの姿が分かったっす。小さな子猿見たいっすね。ここから見えるところにいるけど、一旦戻ることにするっす』
『”通信” すまないがとにかく1度戻ってきてくれ』
ギィはやはり敵モンスターを見つけていた。こんな吹雪の中でさすがだなと感心した。一方、ギィと連絡が取れたのは良かったと安心した。
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たぬき




