159 反撃①
敵が自分達を弱らせる為の魔法である暴風雪が、逆に自分達の姿を隠してくれる。今回の奇襲において敵の隙を作れるのはまさにこの暴風雪のおかげだ。
しかし、ここで1匹倒せたとしても、残り4匹は健在だ。
なら、残りの4匹をどうするかだが、これはすでにアリスも気づいていた。同じ奇襲攻撃が何度も通用するとは思えない。今回の攻撃で必ず警戒してくるのはわかっている。
1つ策は考えてあった。しかし、こればっかりは自分の予想が当たるかどうかによって結果が変わる。不安が残るが、分からないことを想像しても意味がない。
とにかく、今は右の木にいる敵に一斉攻撃をすることを優先させるんだ。
『”通信” ギイ、アリス。今から右の木の敵を狙うぞ。一番下にある大きな枝の上にいる。あの枝に乗れるくらいなのでそれほど大きな敵だとは思わない。しかしこればっかりは姿が見えないので分からない。サーチでは多きさまでは分からないからな』
『攻撃はここから狙うっすか?』
ギィは目を細めて目標の地点を見ていた。
『”通信” もしも小さいモンスターだったら、素早さも高い可能性がある。だから、成功率を上げるためにも、あの木に向かって距離を詰める。そこで攻撃を集中させるんだ!』
『わかったっす。師匠について行って、同じ場所に打ち込めばいいすね』
『”通信” これは奇襲だから、みんなのタイミングを合わせることが大切だ。だから、頼むぞ!』
『了解っす。師匠』
『余裕ですわ。師匠』
なんだ!見えない敵に対して攻撃するのに余裕だな
もう少し慎重になるかと思ったが、タイミングを合わせることは、ギィとアリスにとって問題はなさそうだった。
ふっと、少し前に通信すら使えない状態でタイミングを合わせて強敵と戦っていたのを思い出した。
ははっ、そういえばギィとアリスにとってこの程度のタイミングを合わせることは問題ないことだったな
そんなことを考えながら、ギィとアリスに視線を送って飛び出す意思を伝えた。
ギィとアリスは攻撃態勢のまま、一度うなずいた。
体を向きを変えて、自分と敵の距離が半分になるポイントを目視した。
もちろんゆっくり進んでは敵に気づかれてしまうので、移動手段はジャンプを使うつもりだ。
敵は変わらずに枝の上にとまったままだ。自分達が動いていなかったので、もしかして弱っていると勘違いしていたのかもしれない。
「そのまま勘違いして、動かないでおいてくれよ」
敵の動きに視線を残したままジャンプした。
ギィとアリスは自分の後に続いてラッシュウォークで一気に距離を詰めた。
1度のジャンプでは目的のポイントに届かなかったので、続けてジャンプをした。それでも油断しているのかどうか分からないが、先ほどと変わらない位置にそのままいた。
目標の敵は弱っているはずの自分達が向かってくる行動に何が起きたのか分っていないんじゃないか。
もしかすると動揺して混乱しているんじゃないか。
そうであれば、またとないチャンスだ!
「いっけぇ!ファイヤーボール!」
ぼゎ~!ぼゎ~!
2度目のジャンプの着地を待って、すぐにファイヤーボールを2連射した。でかドブネズミから獲得したファイヤーボールだ。まあ、今の所2連射が精一杯だけれど。
程なくして自分の攻撃に合わせるように、後ろから魔法が飛んできた。
「ファイヤショット!」
「硫酸弾!」
ぼゎ~っしゅ!
ぼゎ~っしゅ!
ぼゎ~っしゅ!
ヒィィィィーーーーン!
ヒィィィィーーーーン!
ヒィィィィーーーーン!
自分の攻撃に合わせて、ギィはファイヤショット、アリスは硫酸弾を3連射で打ち込んでいた。
自分とギィとアリスの魔法攻撃は狙いすましたかのように見事に枝の同じ場所に直撃した。狙っていた枝は大きな火炎に包まれた後、間を置かずに粉々に弾けていた。
5匹いた敵がどうなったかを確認するために、サーチで表示されている敵のマークを数えた。
「1・・・2・・・3・・・・・それから、4・・・・・・5匹目はいない。よし!奇襲作戦は成功だな」
『”通信” ギィ、アリス、やったぞ。1匹は確実に仕留めた。相変わらず暴風雪は続いているが、なんとなく弱くなった気がするがどうだ?』
『暴風雪が弱くなっていますの?・・・・・・そういわれると少し雪が弱くなっている気がしますわ』
『弱くなったっすか?あんまり変わんないような感じっすけど』
ギィはそんなに変わっているかなと、顔を上げて雪の強さを確かめていた。
『”通信” 弱くなっている気がする。そして、これは予想通りだ』
とりあえず、ギィの言葉はスルーしておいた。