156 暴風雪1
しばらく歩き続けていたが、森までの道中、特に敵に出会うことはなかった。警戒しながら進んでいたのが無駄だと思えるほどだった。
あまりにも敵が現れることがないので少しづつ気分もゆるんでいた。
「師匠、この辺に敵は住んでいないみたいっすね」
「ギィ、正面を見てみるんだ。すぐそこに巨大な木がいくつもそびえ立っているだろう。きっとみんなこの巨大な木の森の中で生息しているんだと思うぞ。大体、ここみたいに開けたところで集団で囲まれでもしたら、きっとすぐに倒されてしまうと思うからな」
「そうっすかねぇ」
森に到着してその巨大さに驚いた。遠くから見ると、普通の杉や檜の森といえた。
しかし、近くで見ると一本一本の大きさが異常といえるほど大きかった。直径だけみても、10m位あるのではないかと思えた。その分、木と木の間は20m位あり自分とギィとアリスが普通に進むことは何の問題もなく思えた。
この森の木々である巨大杉は何だか分からないが不思議な感覚を自分に向けてきた。普通の杉だと、そんな気持ちにはならなかったはずだが、この巨大杉の大きさが自分を惑わせていた。
こんな場所には必ず罠があるはずだから絶対に無計画に突入するのは危険だから駄目だと経験上わかっていたことだった。
しかし、その時は自分もギィやアリスと同じように気がゆるんでしまっていたのだろう。うかつにも自分も興味本位で入り込んでいたのだ。
そうして、3本目の巨大杉を通り越した瞬間、いきなり、気配察知に反応があった。
「やばい、ギィ、アリス自分の後ろに入れ」
「どうしたっすか。師匠」
「敵ですの?師匠」
「わからない。しかし、何かが側にいるのは間違いないみたいだ」
ギィとアリスに声をかけて、密集陣形を取りながら、同時にサーチをかけて周囲の敵を探した。
「1・・2・・・4・・・・5匹、やばいすでに囲まれている。気をつけろ。どこから攻撃してくるか分からないからな」
ギィもアリスも自分が囲まれていると言った後、お互いの背中を合わせるようにして3方向を向いた。どの方角から攻撃をされても、それがすぐに分かるようにしたのだ。
周囲を警戒して、30秒くらいたったところから、雪が降り始めた。
「雪が降り始めた。なんだ、いきなりか!」
「これくらいの雪なら大丈夫っすよ」
「いったん、この巨大杉から出たほうがいいのかしら」
「そうだな、もしも、この雪がひどくなったらこの視界の少ない巨大杉の間だと自分たちにとって不利になるかもしれないし、出ると・・・・」
アリスの助言にうなずいて、この巨大杉の間から外に出ようと思い、それを口にだそうとした。その瞬間いきなり、雪が暴風雪に変わったのだ。
「やば・・い・・な。風が・・つよ・・すぎて・・うまく・話せ・・・ない」
「・・・しょ・・・なん・・・て」
風が強すぎてギィとアリスにうまく会話が出来ない。なぜこんな急に暴風雪に変わったんだ。もしかして、これがここのモンスターの魔法なのか!?
とにかく、このままここにいても危ないと思って移動しようと試みた。
『”通信”雪と風が強すぎるから一旦外に出よう』
『わかったっす。でも、風が強すぎて押されるっす』
『ごめんなさい、私は体を支えるだけで、一歩でも動こうとしたらとばされそうですの。それに、なんだか、だんだん体が冷たくなっている気がしますの』
『”通信”アリスの体が冷たくなっていると報告が来たが、ギィは大丈夫か?』
『だめっす。足先やら尻尾の先がしびれてくるっす。なんだか、体の動きも重いっす』
ギィも、アリスも雪や風によって、どんどん体が冷やされて、末端が冷やされてせいで動きが低下しているようだった。寒さ耐性(小)の拡張があっても、この暴風雪の中では効果が薄い様に思えた。
『”通信”外に向かう方からの風や雪が強すぎるから、危険だが奥の方に進むとしよう。このまま、ここにいてもこの雪と風で体力を奪われて行くかもしれない』
『わかったっす。師匠に合わせるっす。でも、体の動きがかなり重くなってきたっす』
『申し訳ありませんが、私はこのまま動けませんわ。雪で体が冷えすぎていつもの半分も動くことが出来ませんの。さらに、風が強すぎて飛ばされそうですわ』
アリスは雪で体が冷えてしまい、動けなくなっていた。しかも体の小ささが災いしてこの強風で踏ん張りがきかなくなっていたのだった。
ギィはかろうじて動くことが出来ていたが、それでも、この冷たさによって体の動きが低下していた。
自分も動きが低下しているのは感じていたが、それでも、ギィやアリスよりは動けていた。
しかし、このままだと、雪も積もってしまい、視界がどんどん下がっていくとそれこそ危険な状況になっていくと思われた。
とにかく、この場所から移動しないといけない。
しかし、外に向かうためには、強風に逆らって行く必要があった。現状の体力では難しそうだったので、罠の危険はあったが、それでも、風下に向かって移動するしかなかった。それに、風下の先には、暴風雪が切れている所があったので、まずはそこを目指そうと考えた。
『”通信”わかった。アリスは自分の尻尾で捕まえるが、いいか?後、ギィはゆっくりとでいいので、ついて来てくれ』
『はいっす』
『申し訳ありませんですの』
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